第40回「猿橋賞」は、「加速器をもちいた長基線ニュートリノ実験によるニュートリノの性質の解明」した市川温子氏が受賞した。
市川温子氏は、このニュートリノの性質解明を目指し、加速器を用い たニュートリノ振動実験であるT2K(Tokai to Kamioka)実験に設計段階から携わって、ニュートリノ・ビ ームラインの建設と実験データ解析の両面で大きな貢献を成した。
T2K実験では大強度陽子加速器J-PARCを用いて生成したミュー型ニュートリノを295km離れた検出 器スーパーカミオカンデに向けて出射する。市川氏はこの長基線の高強度ニュートリノビームの生成と、 ニュートリノビームの性質を高精度で測定するモニター群の建設について様々な独創的なアイデアを出している。
特に、生成装置の中でも最も厳しい環境で安定に動作させる必要がある標的と電磁ホーンを、研究グループを牽引して予定通りに完成させた。これによりT2K実験は2011年から2013年にかけてミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化する「電子型ニュートリノ出現」を世界で初めて観測す るという大きな成果を挙げた。
電子型、ミュー型、タウ型の3種類のニュートリノが振動によって混合する ことが確かめられ、ニュートリノにおいてCP対称性の破れを発見できる可能性が開けた。