“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術ニュース●スパコン「富岳」を利用した国際共同研究チームの研究成果が「ゴードン・ベル賞」を受賞

2022-11-24 09:39:52 |    ◆受賞◆
 理化学研究所(理研)計算科学研究センター(R-CCS)に設置されているスーパーコンピュータ「富岳」を利用した共同研究成果が、高性能並列計算を科学技術分野へ適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著と認められた成果に与えられる米国計算機学会の「ゴードン・ベル賞」を受賞した。

 受賞したのは、CEA(フランス)、Lawrence Berkeley National Laboratory(アメリカ)、ARM(フランス)、ATOS(フランス)、CNRS(フランス)、GENCI(フランス)、理化学研究所(理研)の国際共同研究チームが進める研究成果で、理研からはR-CCSプログラミング環境研究チームの佐藤三久チームリーダーが参加している。

 海外の研究機関が参加するチームによる研究成果が、日本のスーパーコンピュータを利用して「ゴードン・ベル賞」を受賞するのは初めてのことで、「富岳」の国際的な利用の広がりを示すもの。

 今回の受賞は、プラズマシミュレーションのアプリケーションであるWarpXについて、「富岳」を始め、最新の米国のスーパーコンピュータ「Frontier」など最先端のスーパーコンピュータの性能を比較する中で、「富岳」の総合的な性能の高さについて国際的な評価がなされており、今後、世界の研究者が「富岳」を使って様々な社会課題やSDGsの達成に貢献していくことが期待される。

 「ゴードン・ベル賞」の発表は、米国テキサス州ダラスのケイ・ベイリー・ハッチソン・コンベンション・センター・ダラスおよびオンラインで開催されたHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング:高性能計算技術)に関する国際会議「SC22」において、現地時間2022年11月17日付(日本時間11月18日)に発表された。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「ボーアとアインシュタインに量子を読む」(山本義隆著/みすず書房)

2022-11-24 09:34:30 |    物理



<新刊情報>



書名:ボーアとアインシュタインに量子を読む~量子物理学の原理をめぐって~

著者:山本義隆

発行:みすず書房

 よく知られるとおり、量子力学の誕生は客観性や状態といった基本概念の意味を変えてしまった。現象の背後の「真のメカニズム」を問うことの意義自体も切り崩され、物理法則とは何であるかをめぐる変革がもたらされた。同書は、そのような変革の時代の主要な科学論文を読み込み、量子物理学の建設に携わった人々がその時・その場で何を考えていたのかをつぶさに辿る。今日の教科書では顧みられなくなった根底的な模索や問いの数々が、そこにはあった。量子論の枠組みを通して初めて発見された現象の不可思議さ、規格外の理論の可能性に、この時代の俊才異才たちが出遭い、戸惑い、行き詰まり、打開した道のりを、読者は圧倒的な臨場感とともに追体験するだろう。そしてその途上で、量子の理論の骨組みにかつてない確かな手ごたえを感じるだろう。実際、量子物理学はそのようにして受容されていったのだ。同書はボーアとアインシュタインという二人の巨人の思索を軸にして書かれている。二人はときに直接衝突しながら、それぞれの苦闘を通して異なる物理観へと辿り着く。ある意味でその片方の物理観の上に、以降の物理学が増築されていくことになったが、同書の立場は勝利者史観ではない。ここに見るアインシュタインとボーアの思想の変遷は、相異なる二つの筋道でありながら終始絡み合い、さながらこの時期の物理学を貫いて伸び続ける二重螺旋のようだ。
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●科学技術ニュース●富士通、川崎重工、SAPジャパンとSkillnote、製造業のDXを支援するプラットフォームの提供に向けた協業検討を開始

2022-11-24 09:34:07 |    情報工学
 富士通、川崎重工、SAPジャパン、Skillnoteは、航空機、鉄道、船舶、大型機械の製造といった人手による作業への依存度が高い製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するプラットフォームサービスの提供に向けた協業検討を開始した。

 今回4社は、各社が有するDX、システム構築、エンジニアリングに関する経験やノウハウを結集し、サプライチェーンを強靭化する「みんなで育てる製造業プラットフォームサービス」の創出に取り組むこととなった。

 今後4社は、すでに稼働している高品質な製造管理プロセスと、ユーザ間のコミュニティ基盤を合わせた、ユーザ主体導入・統一業務・統一データのプラットフォームを、サブスクリプションで利用可能なサービスとして提供することを検討していく。

 製造業がグローバル市場で発展するためには、エンジニアリングチェーンで生み出された「価値」をサプライチェーンの最前線である製造現場へつなげ、その状況をリアルタイムでモニタリングし、設計にフィードバックする素早いサイクルが求められる。そのためには設計部門と製造現場間の緊密なデータ連携や、正確な変更管理の実施、アクティビティの可視化が必須となる。

 川崎重工の航空宇宙システムカンパニーでは、「Smart-Kプロジェクト」と銘打ち、高い品質と透明性が求められる航空機の製造プロセスを標準化し、富士通およびSAPジャパンとともに、SAPが提供する「SAP S/4HANA  Manufacturing for Production Engineering and Operations (PEO)」を導入することで、デジタル化を実現した。

 「Smart-Kプロジェクト」では、PEOによって製造現場をERPやPLMと連携させ、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンがワンストップでつながり、技術要求の厳格なフローダウンと製造現場の状況をリアルタイムで把握することが可能となった。

 同プラットフォームサービスでは、「Smart-Kプロジェクト」で培われた高品質かつ効率的な業務プロセスを汎用化し、サブスクリプションサービスとして幅広い分野の製造業のサプライチェーンに価値を提供する。<富士通>
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●科学技術ニュース●NIMS、大規模かつ高解像度三次元解析手法により疲労亀裂の成長メカニズムを解明し航空機エンジン用部品の信頼性に光明

2022-11-24 09:33:01 |    物理
 物質・材料研究機構 (NIMS) の研究チームは、大体積を扱う新たな3D解析手法を活用することにより、ミクロな疲労亀裂の成長メカニズムが、金属結晶の特定の面に沿ったすべりにより成長することを解明し、金属疲労の分野で50年にわたる課題を解決した。

 従来、亀裂は ”引張り力” によって成長すると考えられてきたが、亀裂をすべらせる力である ”せん断力” が、亀裂成長の大部分を支配することを明らかにした。

 繰返し力を受けることで起こる金属の疲労破断は、機械の破損事故の多くに関与しており、そのメカニズムの解明は重要な研究課題。

 疲労寿命、すなわち、使用中に繰返し力を受ける材料が破断するまでの期間は、ミクロな亀裂が発生し成長する過程。疲労過程初期の亀裂の発生メカニズムと、後期の大きくなった亀裂の成長メカニズムは50年以上前に明らかにされたが、その中間過程におけるミクロな亀裂の成長メカニズムは、材料寿命の大部分を占めるにも関わらず、長い間不明確なままであった。

 その一因は、最も重要な、大きさ200 μm前後の亀裂の観察の難しさにあった。

 今回、電子顕微鏡をベースとした3D組織解析手法を高度化して、大体積 (従来比100倍) の金属組織の高解像度解析を可能とした。

 この方法を、航空機エンジン用耐熱合金の疲労亀裂に適用することで、世界で初めて、大きさ200 μm前後の疲労亀裂の高解像度な三次元解析を実現した。

 これにより、亀裂の成長経路と金属の結晶方位の関係を広範囲で定量的に解析することが可能となり、従来の認識と異なる亀裂成長メカニズムの存在が明らかとなった。<物質・材料研究機構 (NIMS) >
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「高圧力の科学・技術事典」(入舩徹男他編/朝倉書店)

2022-11-24 09:32:25 |    物理



<新刊情報>



書名:高圧力の科学・技術事典

編者:入舩 徹男、舟越 賢一、近藤 忠、関根 利守、清水 克哉、長谷川 正、保科 貴亮、木村 佳文、加藤 稔、松木 均

発行:朝倉書店

 高圧力はいまや、化学や物理学、地球科学にとどまらず、材料科学、生命科学、食品科学などさまざまな分野で研究・利用されるようになり、学際的な研究分野として地位を築いている。同書は高圧力をテーマに約190の項目を取り上げ、分野の垣根を越えてさまざまな分野の研究者たちが各項目2~6頁の読み切り形式でわかりやすく解説。【内容】装置・技術(圧力技術など)/地球惑星深部科学/衝撃圧縮科学/固体物理/材料科学・化学/流体科学/生物関連科学
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