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質管理のための人材育成第8回

2015年04月22日 | ブログ
人材育成の本質(2)

 「問題の解決の実践こそ人材育成」であるなら、問題解決を実践する力とは何か。「質を第一とする人材育成」(JSQC選書)には、次のような記述がある。

 『問題解決を実践する力とは、新しい情報に基づいて、真の原因をつかまえ迅速に行動を展開し、発生している問題を解決していく能力のことをいう。この能力を身につけるためには、問題を解決するための基本的な手順を熟知しておかなければならない。・・・』

 問題を解決するための基本的な手順とはすなわち「QCストーリー」と呼ばれるものであり、ここで必要な能力は、①問題点把握力、②現状分析力、③目標設定能力、④解析力、⑤対策案設定力、⑥効果確認力、⑦標準化力、⑧計画立案力である。

 ②と④の違いは、②の現状解析は、問題の程度、すなわちあるべき姿と現状の差(ギャップ)を的確に把握するための分析であり、④の解析は、問題の要因の解析である。いずれも有効なデータを収集し、QC7つ道具や統計的手法を活用する能力が問われることは共通している。

 ここに上げた8つの能力はいずれも大切であるが、②や④は特に重要であり、②は最重要である。現状を正しく認識しなければ、その対策も的外れなものになる恐れが強い。現場主義とか三現主義(「おまえ、あそこ行ったか俺は行ってきたぞ」「者に聞くな物に聞け」-トヨタの口ぐせ-)*2)とか言われるものも結局この現状を正しく把握するためのものである。

 ④の要因解析では、なぜなぜを繰り返して真の原因を追及することが求められる。ただ、左翼系政党や文化人、マスコミを先頭とした論調のように、根本原因を取り除くとして、東日本大震災による原発事故を受け、原子力発電そのものを全て停止しろというのは論理の飛躍であり、建設的な意見ではない。あの事故は原因不明で起こった事故ではない。津波によってその送電システムが破壊されたことによって原子炉への冷却水供給が停止したことで起こったのである。想定される地震や津波によってもけっして冷却水が停止しないシステムとすることが対策として求められるのである。

 ドイツはわが国の原発事故を受けて、原子力発電をすべて止めると決めたではないか、わが国も現在の与党が決めれば実現可能なことだというのも、現状を正しく認識した論理ではない。なぜならドイツとわが国ではエネルギー状況が全く異なるし、経済状況も違う。ヨーロッパの国々は、電力供給を隣国からも受けることが出来る。またユーロ圏においては、ギリシャやイタリア、スペインなど国家財政の危機的状況にある国が多いため、ユーロは値下がりし、元々ものづくりに比較優位を持つドイツの工業生産品は、輸出に非常に有利な状況である。ヨーロッパはドイツの一人勝ち状態と聞く。他国の為政者の人気取り政策に同調する必要はない。

 原子力発電を持ち出すまでもなく、政治・経済・社会関連の現象においても品質管理の考え方は正しい導きを与えてくれるのである。




*2)「トヨタの口ぐせ」株式会社OJTソリューションズ編著、株式会社中経出版2006年10月第一刷

 本稿は、岩崎日出男氏編著「質を第一とする人材育成」(JSQC選書) 2008年9月8日、日本規格協会刊、第9章を参考に編集し、『 』内は直接の引用です。

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