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質管理のための人材育成第9回

2015年04月25日 | ブログ
実践力

 前稿に『問題解決を実践する力とは、新しい情報に基づいて、真の原因をつかまえ迅速に行動を展開し、発生している問題を解決していく能力のことをいう。・・・』ことを紹介したが、この先三段論法ではないが、『・・・この能力を身につけるためには、問題を解決するための基本的な手順を熟知しておかなければならない。・・・』となり、「ここで必要な能力は」、①問題点把握力から⑧計画立案力まで8項目にのぼることが挙げられると、はじめの実践力そのものがぼやけてくる。

 実は、人それぞれの能力の総和にはそれほど大きな差はなく、常に「やる」のか「やらない」かの差の方が多いのではないかと思えたりする。その積み重ねが実は能力差となってゆく。能力差は都度実行するかどうかにかかっているように思うのである。いくら前述の①から⑧の能力を持っていたとしても、うまく使わなければ知らないことと変わりはしない。

 実践力とは、まさに実行力、前向きの行動力が伴ってこそ意味がある。「ガッツが大切」といえば精神論に走るように聞こえるけれど、実際の現場ではその精神力こそが実現のために重要な因子となる。勿論「段取り8分」と聞くように、物事の実現には、綿密な事前準備に占めるウェイトが高い。実はこの段取りの中に、知識や技能が含まれる。そのベースがあって後の2分は精神論でいいのではないか。

 似たような言葉も、表現が違う分意味も微妙に異なってくる。実践力と実行力も似ているが当然異なる。「実践」とは目的達成のためのプロセスを含み実行することであり、「実行」は行動そのものである。すなわち実践力には行動のための指針となる知識や技能を含むが、実行力は他人に命じられるままに行うということもあり、必ずしも知識や技能を含まないこともあり得る。

 昔、行政機関で「すぐやる課」などが流行ったことがあった。ということはそれまでは、すぐにやらないことがいかに多かったかということである。書類を整えることに汲々として、肝心の現場での実践、実行が疎かになっていたのである。それは業務の質が低いことを意味し、そのような組織は人材育成が十分ではないと言える。所謂組織の「官僚化」であり、コスト意識の喪失であり、大企業病である。

 そのような組織では、周囲の怠慢に反してガッツに働く人は敬遠されたりする。リーダーは全体の和を重んじ、自らの仕事も増やしたくない思惑もあって、一般多数の従来通りの無難な職場を指向したりする。このような職場風土が蔓延すれば、利益を追求することの必要のない税金からの予算で成立する組織ならいざしらず、民間企業であれば、いかに今は大企業であっても遠からず凋落する。

 実践力を鍛えるためには、組織の、現場リーダーの部下への正しい評価が必須である。汗を掻くことを厭わない社員を評価すること。それによってすぐに動くことに価値を見出し、前向きで実践力のある組織文化が形成されてゆくのだ。そのことが質管理の人材育成の真骨頂である。




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