中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

質管理のための人材育成第7回

2015年04月19日 | ブログ
人材育成の本質(1)

 「質を第一とする人材育成」(JSQC選書)では、人材育成の本質を「問題解決の実践」と明言し、その第9章の表題は、そのまま「問題の解決の実践こそ人材育成」としている。

 それなら「問題」とは何か。それは“あるべき姿と現状の差”と定義される。日常管理において発生したトラブルは、維持すべきあるべき姿から悪化した状態である。これを速やかにあるべき姿に復帰させる能力がすなわち問題解決能力となる。

 これが、方針管理における課題解決型の問題では、あるべき姿は現状の上位にある。すなわち現状からの改善か改革か、はたまたイノベーションによって、現状を打破して高みに至るところにあるべき姿を置く。この現状レベルとの差が問題である。

 この課題解決型の問題解決には高度な知識やその応用力が問われることも多く、一般の従業員には困難な分野とも思われがちであるけれど、勿論基本的な最低限の専門知識は必要であろうが、知恵を組み合わせての根気強い取り組みによっては革新的課題を解決できることもある。

 問題にはまた、顕在化されている問題と潜在する問題がある。日常管理業務におけるトラブルや不具合の類は顕在化して発見されるが、問題でありながら見過ごされているものは無数にある。

 分かり易い例を上げれば、福島第1原発の設備は15m程度の津波の被害を受けるほど低地にあるべきではなかった。そのこと自体が大変な問題であったのだ。もっともこれは一部には事前に指摘があったものの改善がされていなかったものらしい。技術的に不可能な課題では全くなかった。場所を移動できなければ、後付けの浜岡原発ではないが、巨大な堤防を築けば良かった(浜岡原発に設置中の防潮堤は、津波に耐えられないのではないかという懸念の声もあるが)だけのこと。この事故のためにすっかり原発そのものが悪者にされてしまった。関係者の責任は重大である。

 このような例は交通事故対策にも多い。信号機がないから危ないと思われている交差点。立体交差ができないことによる鉄道の踏切。一方、鉄道駅のプラットホームドアは東京山手線など徐々に設置が進んでいる。やれば出来るのだ。予算との関係もあろうが、関係者の無為な先送りで、一体これまで幾人の尊い人命が失われたことか。

 学校での勉強は、学問体系に沿って行われていると承知しているが、実務における模擬的な訓練的要素も強く、秀才は単に記憶力や試験要領が良いだけで、創造力は担保されず、実社会で通用しないケースが多いという、現在の教育システムの不備を批判する意見も聞くけれど、やはり学校の秀才と実社会での適応にはそれなりの相関関係が成立するものと思う。要は秀才とは、先生の話を聞いても、教科書を読んでも要点に対する勘どころがいいのだ。もっとも相関性とは100%でない限り、落ちこぼれは当然にあり、高学歴のインテリが社会で通用しない。すなわち実社会での問題解決能力の乏しい人も多いことも事実。だからこそ、学校での勉強に加えて品質管理教育が必要なのである。それがまた人材育成の本質なのである。




本稿は、岩崎日出男氏編著「質を第一とする人材育成」(JSQC選書) 2008年9月8日、日本規格協会刊第9章を参考にしています。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。