2013年 ことしの一冊たち

例年通り、今年の記事をまとめたい。
今年は更新がいよいよ少なくなってしまった。

1月

「戯曲アルセーヌ・ルパン」(モーリス・ルブラン フランシス・ド・クロワッセ/著 小高美保/訳 論創社 2006)
とても楽しい読み物だった。

「気晴らしの発見」(山村修 大和書房 2000)
痛ましい話だ。

「バッファロー・ボックス」(フランク・グルーバー 早川書房 1961)
ときどきフランク・グルーバーを読みたくなる。

「法螺吹き友の会」(G・K・チェスタトン/著 井伊順彦/訳 論創社 2012)
チェスタトンの小説は不思議なサスペンス性がある。「木曜日だった男」(南条竹則/訳 光文社 2008)なんて、読みはじめたらやめられない。ところが、読み終わると、なんともはぐらかされた感じが残る。でも、読むと面白いのだから困ったものだ。


2月

「アルカード城の殺人」(ドナルド・ウェストレイク/著 アビー・ウェストレイク/著 矢口誠/訳 扶桑社 2012)
とても他愛ない本。そこがいい。

「小人たちの黄金」(ジェイムズ・スティーヴンズ/著 横山貞子/訳 晶文社 1983)
現実と非現実がごちゃ混ぜになる作品がとても好きだ。この本を読めたのはほんとうに運がよかった。

「逃げるが勝ち」(ロレンス・ダレル/著 山崎勉/訳 中村邦生/訳 晶文社 1980)
これまた他愛ない本。

私が選ぶ国書刊行会の3冊
なぜ出版社はこういう企画が好きなのだろう?


3月

岩波書店創業100年記念「読者が選ぶこの一冊」

「迷宮の暗殺者」(デイヴィッド・アンブローズ/著 鎌田三平/訳 ソニー・マガジンズ 2004)
あんまりへんてこな小説なのでメモをとった。でも、ひとには薦められない。

「ムチャチョ」(エマニュエル・ルパージュ/著 大西愛子/訳 Euromanga 2012)
傑作。


4月

「族長の秋」「エレンディラ」「トレース・シリーズ」
「族長の秋」(ガルシア=マルケス/著 鼓直/訳 集英社 1994)
「エレンディラ」(G.ガルシア=マルケス/著 鼓直/訳 木村栄一/訳 筑摩書房 1988)
「二日酔いのバラード」(ウォーレン・マーフィー/著 田村義進/訳 早川書房 1985)
ガルシア=マルケスは素晴らしい。トレース・シリーズみたいな軽い小説は、世の中にたくさんあると思っていたら、じつは案外少ないのだと最近よく思うようになった。


5月

ナボコフの文学講義、ナンジャモンジャの木、小説家のマルタン
「ナボコフの文学講義 上下」(V・ナボコフ/著 野島秀勝/訳 河出書房新社 2013)
このあと、「ナボコフのロシア文学講義 上下」(小笠原豊樹/訳 河出書房新社)がでて、これも読んだ。ナボコフ先生はトルストイが好きで、ドストエフスキーが嫌いだとわかり、なんだか愉快だった。

昔々の昔から
昔々の昔から(承前)
「昔々の昔から」(イヴァーナ・ブルリッチ=マジュラニッチ/著 栗原成郎/訳 ヴラディミル・キーリン/挿画 松籟社 2010)
ことし最も印象に残った本はこれ。この小説が読めて大変幸せだ。


6月

「虚しき楽園」「豹の呼ぶ声」「アメリカを買って」「シュロック・ホームズの迷推理」
「虚しき楽園 上下」(カール・ハイアセン/著 酒井昭伸/訳 扶桑社 1998)
「豹の呼ぶ声」(マイクル・Z・リューイン/著 石田善彦/訳 早川書房 1998)
「アメリカを買って」(クロード・クロッツ/著 三輪秀彦/訳 早川書房 1983)
「シュロック・ホームズの迷推理」(ロバート・L.フィッシュ/著 深町真理子/ほか訳 光文社 2000)
「A型の女」はまだ読んでいない。ハイアセンも読んでいないものがまだ手元にある。


7月

DVD「黄金の仔牛」とDVD「天才執事ジーヴス」
「黄金の仔牛」を貸した知人は面白かったといってくれた。で、ネットで検索したらこのブログがでてきたといわれ、これには恐縮した。


8月

絵コンテ「風立ちぬ」と「「腰ぬけ愛国談義」
映画「風立ちぬ」は面白かった。なぜ面白いのか、正体がよくつかめないけれど面白かった。


9月

徒然草の現代語訳いろいろ
「徒然草」(兼好/著 島内裕子/校訂・訳 筑摩書房 2010)
「絵本徒然草 上 」(吉田兼好/原著 橋本治/文 田中靖夫/絵 河出書房新社 2005)
「徒然草」(角川書店/編 武田友宏/訳・註 角川書店 2002)
「徒然草」の現代語訳をくらべてみた。外国語の翻訳よりも訳文に幅がある。この記事を書いたあと、「方丈記 徒然草」(完訳日本の古典第37巻 小学館 1986)を読んだ。永積安明さんによる序段の訳文はこうだ。

《なすこともない所在なさ、ものさびしさにまかせて、終日、硯にむかって、心に浮かんでは消えてゆく、つまらないことを、とりとめとなく書きつけていると、我ながら何ともあやしく、もの狂おしい気持ちがすることではある。》

これくらいの訳文が、個人的には最も落ち着く。

「シンデレラの銃弾」と「金時計の秘密」
「シンデレラの銃弾」(ジョン・D・マクドナルド/著 篠原勝/訳 河出書房新社 1992)
「金時計の秘密」(ジョン・D・マクドナルド/著 本間有/訳  扶桑社 2003)
ジョン・D・マクドナルドの小説を2冊。「金時計の秘密」は変な小説だったなあ。


10月

「謀殺海域」「ジキル博士とハイド氏」
「謀殺海域」(ジャック・ヒギンズ/著 小関哲哉/訳 二見書房 1987)
「ジキル博士とハイド氏」(R.L.スティーヴンソン/著 大仏次郎/訳 恒文社 1997)
作家が化けるということはどういうことなのか。その以前以後ではなにがちがうのか。それについて書かれたエセーでもあれば読んでみたい。


12月

武雄市図書館についての新聞記事のメモ
なぜこんなに記事になるのだろう。そして、記事になったことでどんな影響があらわれるのだろう。出版不況に対するリアクションとして、小型書店はどんどんつぶれ、大型書店はいよいよ大きくなるという傾向があるように思う。その大型化する書店のことを、個人的に「書店のテーマパーク化」と呼んでいるのだけれど、書店からみた場合、武雄市図書館は、書店のテーマパーク化の一環のように思える。

「どこからでも十マイル・マンクスフッド邸」(P・H・ニュービー、L・P・ハートレイ 南雲堂 1955)
面白かった。


以上。
11月は更新そのものがなかったというていたらく。
短いメモと長いメモをうまく書き分けられれば、もうちょっと更新ができるだろうか。

ずっとやってる絵本紹介ブログ「一冊たち絵本」は、紹介冊数が1000冊を超え、ついに終了。
いま、コールデコット賞のリストだけつくっている。
それが終わったら、PDFにして手元に置いておき、ブログは消してしまうつもりだ。
でも、ブログを一度にPDF化する方法はあるんだろうか?
1000冊はちょっとやりすぎたなあ。

さて、ことしの更新はこれが最後。
では、皆様、よいお年を――。


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