武雄市図書館についての新聞記事のメモ

平成25年6月7日(金曜日)の読売新聞に、図書館サービスについての記事が掲載された。
一面丸まるつかっている。
新聞に掲載された図書館の記事としては、とてもめずらしい。
内容は、以下の三者に話を聞き、それをまとめたもの。
佐賀県武雄市長、樋渡啓祐さん。
「図書館に通う」(みすず書房 2013)の著者、宮田昇さん。
関東学院大教授の山本宏義さん。

聞き手は・編集委員は尾崎真理子さん。
文化部、多葉田聡さん。

大きな記事として扱うことになったのは、それだけ武雄市図書館が注目されているということだろう。
なぜ、武雄市図書館が注目されているかというと、CCCを指定管理者としたためだ。

「CCCとは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ」の略。CD・DVDレンタルのTSUTAYAや蔦屋書店の運営会社。武雄市図書館の場合、CCCへの委託費は年1億1000万円。市は直接運営より5%のコスト減につながるを見込む」

というのは、記事につけられた注釈。

記事の真ん中には、黒枠で囲まれた文章がある。
「今、図書館に求められているサービスは何か。武雄市長や図書館経営の専門家、利用者を代表する識者に聞いた」
そして、黒枠の文章を囲むように、三者の記事が載せられている。
一番上が、樋渡さん、左側が宮田さん、下が山下さんという配置。

これから、この記事についてのメモをとっていくのだけれど、その順番は山本さんからにしてみよう。
また、記事の全文を引用するわけではないので、全部読みたいというひとは、直接記事に当たってほしい。

では、まずは山本宏義さんから──。

「民間委託しようがしまいが、(市民に図書館サービスを提供する)責任は自治体にある」

「どんな本や資料を集めてほしいという方針を、きっちり管理者に伝えなければならない」

「公立図書館は幼児からお年寄りまで、あらゆる世代が利用する。「地域のインフラ(社会基盤)」として、誰もが自分に合った利用ができるのが基本だろう。特色を出せば良いというものではない」

「住民が集まる「場」として、機能は今後さらに拡大し、重要性が増すのは間違いない」
(この文章はうまく意味がとれない。「場としての機能」と読んだけれど)

「町村立の図書館には、非常勤以外の正規職員はゼロという所も多い」

「国の規制緩和によって、図書館法の規定から建物面積や職員、蔵書数などの基準もなくなってしまった」

「司書を最低何人置くべきだとか、改めて法律の整備も行うべきではないか」

次は、宮田昇さん──。

「せっかく公立図書館をここまで増やしたのだから、利用者と対話を重ね、「知のインフラ」存続の知恵を絞る時期だろう」

「人気作を各館に備えるのは、利用者数に対応する、必要なサービスだと思う」

「図書館に通うのは本好きで、利用しない人よりはるかに本を買う、熱心な読者だ」

「そもそも新作の貸し出しで不利益を被るのは、20人足らずの作家だと推察するのだが」

「今こそ出版社側は発想を転換し、「図書館は願ってもない広報活動の場」ととらえてはどうか。各種の書評や作家の解説文を閲覧できるようにしたり、文庫化済みか、その予定があるかなどの情報を、図書館と協力し合って利用者に提供してほしい」

「地域の公立館はもっと敷居の低い「知の広場」となるべき」

「どうすれば予算確保のため、利用者を広げ、増やせるか。自治体の担当者はまず利用者との対話から、それを探ってほしい」

最後に、樋渡啓祐さん──。

「CCCを指定管理者にした武雄市立図書館が4月にオープンし、2か月の来館者数は今週20万人を突破。前年同期の4.7倍で、貸出数も約2倍に増えた」

「人口5万人程度の市の施設に、県外からも大勢の人が訪れるほどの反響を呼んだのは、一般の図書館の工夫が乏しく、物足りないから。それに尽きる」

「全国的に見て図書館の利用者は国民の約20%。少数派が「図書館はこうあるべきだ」と言い過ぎて、一般の人が来ない」

「図書館は無料貸本屋ではない。居心地の良い空間で本の素晴らしさを体験してもらうために、蔦屋書店と図書館の良さをミックスしたいと考えた」

「だから、CCCへの業務委託は経費節減が目的ではない」

「自動貸出機を導入し、利用者にTSUTAYAのポイントを付与するのも、司書を減らすためではなく、彼らを貸し出し業務から解放し、利用者に本を薦めるなどの本来の業務に専念してもらうためだ」

「これからの図書館に必要なのは大衆化だ」

「図書館法の下にある施設なのでその理念は守りつつ、今の時代に沿った形で進化させたい」

「飽きられたら終わりなので、とにかく変え続ける」

「貸し出しや検索機能だけに終わらせず、市民が訪れる動機を増やし、居心地のいい空間を作る。「図書館革命」ではなく、「公共空間革命」だと考えて取り組んでいる」

さらに。
平成25年8月28日(水曜日)の毎日新聞にも、樋口さんのインタビューが載っていたので、メモ。
聞き手は渡部正隆さん、田中韻さん。

記事のタイトルは、「そこが聞きたい。公立図書館の民間委託」

「私は武雄のような地方都市にとっては「無関心が最大の悪」だと思っています。批判は世間の関心の表れだから、大歓迎ですよ」

「それにこのプロジェクトにはあえて地雷を埋め込みました。だってTカードで公立図書館の本が借りられるなんて絶対おかしいでしょう」

「全国に公共図書館は3000以上あり、うちは蔵書も規模も中程度です。それなのに、なぜこうクローズアップされるのか? 毒を込めて言えば、世の中にろくな図書館がないからですよ。一部の人が固定観念で「図書館はかくあるべし」と唱え、カビ臭いイメージになっています」

(──さらなるサービス向上のために障害になっていることは? という質問に)

「図書館法の規制です」

「「公立図書館は入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」としている。無料なのはいいのですが、無料の貸し出し本の横に市販の本を置けない」

「時間の余裕のある人は借りるし、急ぐ人は買う。これからはそうすることが絶対大事だし、「市民価値」(市民の視点に立つ行政サービス)は上がる。法律を作った時には想定していなかったニーズが発生しているのです」



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