アルカード城の殺人

「アルカード城の殺人」(ドナルド・ウェストレイク/著 アビー・ウェストレイク/著 矢口誠/訳 扶桑社 2012)

本書は、「ミステリー・ウィーク・エンド」というイベントをもとにした作品。
このイベントは、参加者が、週末のホテルにあつまり、宿泊して、主催者(ここではウェストレイク)が、提示する殺人事件の謎に挑む──といったものだそう。

全体の流れは、イベントを踏襲したもの。
まず、殺人事件のあらましがある(イベントでは、スライド上映をおこなうそう)。
189×年、トランシルヴァニアの森に建つアルガード伯爵の古城に、とある司書がやってきた。
司書は、蔵書整理のために雇われてきたのだったが、到着した翌朝、何者かによって殺されてしまった。

次に、11人の容疑者たちの証言が続く。
容疑者たちは妙ちきりんな連中ばかり。
イベントだと、ここは参加者たちが容疑者を尋問するところ。
訳者の矢口さんも指摘しているけれど、本書が読んで面白いものになっているのは、11人の証言の並べきかたがうまいからだ。
このあたり、ウェストレイクの技が冴えている。

そして、最後にクイズがあり、真相が明かされる。

ゲストとして、スティーブン・キングやピーター・ストラウブが、容疑者に扮しているのが面白い。
まさに、ファン向けのイベントだ。

こういう本は、再版されず、すぐ店頭から消えるにちがいない。
そう思って、みつけたときすぐ買った。
犯人は当てそこねたけれど、真相を読むと、なるほどとうなずかされる。
イベントにふさわしいプロットを考えだすのも、一種の職人技だろう。
全体に他愛ない雰囲気があるのも好ましい。
訳者あとがきも愛情にあふれた、楽しい一冊だった。


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