柴田武『ホンモノの敬語』

2012-12-28 10:19:21 | 本の話
本の話も大分書きましたね。
ただ、ブログをお読みいただく方には
あまり(受け)が宜しくないような気がします。

私としては「こんなに素晴らしい本がある」と思えば
何か、書きたくて書きたくて、
著者の方への感謝と尊敬もキリがありません。
「素晴らしい方がおられるなあ」

山中博士がノーベル賞をとると、何だかこちらまで
嬉しくなっちゃうのと似ていますね。

また個人的なメリットとして、読後の再確認ができる
ということがあります。
幾冊も並行して読むとさすがに全体像の把握が
弱くなりがちになりますから。

趣味に余りに偏っているかと最近は本の話を控えてきました。


TVなどでもよくお見かけした国語学者、柴田武先生の
角川新書版『ホンモノの敬語』

面白かったですね。
ナルホドと勉強になります。

あとがきには
『世の常識とも、学会の定説とも違う、新しい目・・』
とあり、面白い話がテンコモリになっています。

時折は再読すべき本ですね。


最後の方にオマケみたいに俳句の話が出ていました。

かの有名な芭蕉の『古池や蛙とびこむ水の音』
この蛙は一匹か複数か。
あまりに有名な話題ですが、柴田先生も勿論、一匹派。

俳人の金子兜太センセ(嫌いじゃ。ただ珍奇であればよい
という安物の現代美術家みたいなイメージ)は
複数派と書いておられます。
一匹なら平凡なんだそうです。
ふ~ん。安物政治家のレッテル貼りだね。

柴田先生は金子氏の悪口なんか書いておられません、為念。


次いで芭蕉の『かれ朶に烏のとまりけり秋の暮』
このカラスは一羽か複数か?

この句の(前身)『枯枝に烏のとまりたるや秋の暮』
こちらのカラスは単数か複数か?

この二つの句には幸い画がついていて
単数・複数の答えが分かるのです。

もちろん芭蕉がそうイメージしたというだけで
それに縛られる必要も特にないのではありますが
普通、俳句を親しむ者なら答えは決まっていますね。

ピンとこないようでは、俳句を楽しむに欠ける処が
あるように私には思えますね。
国語の先生方、如何ですか?

リクツではないところが日本文化なのですが。

さて答えですが
『・・とまりけり・・』は一羽です。
『・・とまりたるや・・』はもちろん複数
画には二十七羽いるそうです。

(総合的なイメージで答えは決まってきます。
 この二句でいうと動きのあるなしが一番違いますね)

さすがの金子センセも画があれば何も言えないでしょう。


日本語における単数と複数にはもっと奥深い面があり
「日本語に単複の区別はない」という常識がいかに
浅薄か、この本を読めば分かります。


敬語の話に触れないでエピソード程度のボリュームの
単複の話で紹介するのは失礼でした。
ただ敬語の話は短い文では難しくて。
スミマセン。