かぶれの世界(新)

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シーンが浮かぶ曲

2020-10-10 21:13:28 | 日記・エッセイ・コラム
酷暑下のコロナ自粛で終日テレビを見るのが半ば習慣になってしまったまま秋に突入した。散歩や山歩きの記事を何度も投稿したが、実はテレビ漬け独居老人がテレビに飽きた時にやったという方が正しい。梅雨明け以降に朝から見た番組の多くは、以前は見もしなかったテレビドラマ再放送だ。

再放送ドラマの殆どは犯罪物だ。主人公は刑事や検事から旅館の女将まで多彩だが、テーマは背景は異なっても全て殺人事件だ。殺人の手段は、神社等の階段から転げ落ちるか、争って後頭部を打ち死亡するか気を失い絞殺する、これら2つのパターンが圧倒的に多い。

季節が変わっても相変わらず階段から落ちて死ぬパターンを見て、いささか飽きてきてチャネルをアマゾンかYouTubeに切り替え音楽を聴くようになった。このところテレビで音楽番組を見かけることが増えたのは、私みたいにドラマに飽きた視聴者が多いからだろうか。

そこで本題に入る。カッコつけて言うと「独居老人の微妙な心の揺れ」を描いたものだ。

90年代に米国に単身赴任した時にやることがなく、地元のクラブでバドミントンをやるか単独行の山歩き、シーズンオフになると音楽を聞いた。私はカントリーにはまったが、ポップス全般もよく聞いた。退職後の17年間に田舎で独居生活が長くなった現在の状況と似ている。

先日YouTubeで偶然リチャード・マルクス(Richard Marx)を聞いた時、私の頭にホテルの駐車場の出口で料金を払うシーンが鮮明に浮かんだ。シアトル郊外のベルビュー市にあるホテルのスポーツクラブで汗を流した後、地下の駐車場から車で出る時にカーラジオからこの曲が流れた。

窓口でお金を受け取った黒人の若い女性が、かすれ気味の低音の歌を聞いてにっこり笑い「いい歌ね」と言った。確かNow and Foreverだったと思う。25年くらい前のただ一度の事で特別なファンでもなかったのに、今もこのシーンが鮮明に浮かぶのだ。必ずホテルの駐車場のシーンなのだ。

これはどういうことなのだろうか。同じシーンが浮かぶ理由はある。私が好んで聞いた歌手や曲は何度もテレビやCDを繰り返し聞いたので、特別に忘れられない決まったシーンはない。

もう一つそんな曲がある。ペギー葉山の「思い出の岬」だ。大好きという程ではない。ある日突然NHKラジオの深夜番組で流れてきた。この曲を「真っ暗な部屋のベッドの上」で聞き、心が静まって眠りについた記憶がある。その半年後かそこらで彼女は亡くなった。最後の曲だった。

真っ暗な部屋でベッドに横たわる老人の姿というと気持ちが悪いと思われるだろう。あまり真剣に考えたことはないが、私にはこの曲の詞が自分の人生に重ねて聞くと落ち着くのかもしれない。或いは、晩年の彼女の最後の置き土産みたいに感じたのかもしれない。■
コメント
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