かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書06冬

2007-02-28 21:41:22 | 本と雑誌

今回から古本屋で手に入れた本の紹介をするのに相応しい表題「周回遅れの読書」に変更しました。こんな本でも探せばコイン1枚で手に入るのかと思っていただければ私の狙いの半分は達成されます。ブックオフ様さまです。

今回のお勧めは経済学の学会でなく実践の世界の二人の巨人ガルブレイスの最近の小論文とドラッカー全著作の評論です。市場原理主義と対極にあるのがガルブレイス、その中間にドラッカーがいる。グローバリゼーションの真っ只中で漂流し自分を見失った時原点に戻してくれる。

その他のお勧めは「リベラルマインド」(西部邁)と「金融工学とは何か」(刈谷武昭)。「リベラルマインド」は世の中の動きの根底に何があるか、表面的な報道に左右されない考え。「金融工学・・・」は詳細な議論より、全体を通してグローバリゼーションの基本コンセプトを理解に役立つ。

実はもっと楽しめた本がある。「反社会学講座」は皮肉たっぷりのパロディ本といってもいい、まともな出版社が扱いそうもないC級本だが(失礼)、個人的に4.0をつけたい。私の波長と同期しているので「嵌まった」という感じだ。

2.0日本人の価値観・世界のランキング 高橋徹 2003 中公新書ラクレ 文字通り様々な事柄に対する日本人と世界の国々の人がどう考えているのかデータと簡単なコメントがある。日本人は愛国心と戦争に行くかについて最下位、親子関係は最下位グループ、仕事に対する考え方等が世界の平均とは大きく異なる。人々の意識が今日の争点の伏線となっている貴重なデータである。

(1.5)ソシオロジー事始め 中野秀一郎 1999 有斐閣 社会学を目指す大学生の入門書、学生の間でよく読まれているらしい。息子との会話のため読んだが・・・

2.0反社会学講座 パオロ・マッツァリーノ 2004 イースト・プレス 著者の皮肉に3分おきに声を立てて笑った。C級映画にはまる心境だ。最初に私も取り上げたことがある少年犯罪急増のデータの嘘を暴くところから始めている。クライマックスは「ふれあい王国」のくだりで私の皮肉琴線がぶち切れそうに鳴った。

2.0-子供の社会力 門脇厚司1999 岩波新書 子供は元々本能的に社会力があるが、それが周りの環境と接して機能する力は2歳頃までに基礎が作られるという。それが核家族化で多様な人間関係が失われ「すぐに切れる」とか「集中できない」とか社会性の欠如した子供が増えたと説く。その対策として父親と地域の役割を復活することが重要という。今日のいじめ問題に通じる。

1.5報道の自由が危ない 飯室勝彦 2004 花伝社 報道の自由の主張の論理は理解するが、良質の報道を求める姿勢を感じないのは寂しい。悪貨は良貨を駆逐し、悪貨の為に報道の自由が制限されるのは現実だ。日本メディアの報道の自由の理念と連帯感の欠如の指摘は鋭い。個人と報道の権利のぶつかりに対する判例の分析は異なった見方が参考になる。

0.5政治記者奮闘記 三反園訓 2003 ダイヤモンド社 テレビで見る著者の辛口コメントは影を潜め、政治記者特有の業界ネタで終始したやっつけ仕事。著者が何を考えているか分からない。

1.5+日中ビジネス摩擦 青樹明子 2003 新潮新書 著者の実生活で体験した異文化間の摩擦だけに説得力はある。中国人の悪習がその国の政治経済的潜在力の巨大さの為、無意識下で著者(日本も世界も)の見る目が甘くなるのは、人の性ではあるが読んで悲しくなる。

2.0人口ピラミッドがひっくり返るとき P.ウォーレス 2001 草思社 実は人類共通の悩みである人口構成の変化が経済から文化までどう影響するか予測している。著者にかかると全てはデモグラフィーで説明できるから不思議だ。各世代の意識が政治経済や文化を作るという。ベビーブーマー世代が老いてバイアグラが生まれたというのは意表をつかれた。

2.5悪意なき欺瞞 JKガルブレイス 2004 ダイヤモンド社 尊敬する経済学の巨人がここまで言うかという程の反・新保守派経済学(‘新古典派’とも言う不可思議な名前)とはこれを読むまで知らなかった。小論文だが簡潔かつ端的で日頃市場万能に傾く思索の反省の糧にしたい。

2.5+マネジメントを発明した男ドラッカー Jビーティ 1998 ダイヤモンド社 原題「ドラッカーの見た世界」(仮題)よりも本題のほうが断然良い。会社勤めの頃から尊敬する経済学者の一人で、著者のドラッカー批判はそのまま私にも当てはまる。「見えざる手」に代わり「見えざる良心」を唱えるドラッカー理論のベースは政治や歴史を無視する姿勢を補っていると思う。

2.0反グローバリズム 金子勝 1999 岩波書店 私は著者に賛成しない、結論に至る論理もマイナス面を強調する姿勢にも。しかし、グローバリゼーションに道徳はなく、それがもたらす市場の誤りに対するアプローチはポイントをついたものがある。

3.0-リベラルマインド 西部邁 1993 学習研究社 著者特有の難解な言い回しで本質に迫る。最初奇妙に聞こえた戦後自民党政治は実は社会民主主義だったという主張は今やコモンセンスとなった。マスコミの扇情的な報道がリンチにまでエスカレートする原理を明らかにし、政治家の利益誘導が結局は多数派民衆の精神的資質に依存すると説く。15年経った今も一読に値する。

2.0-)反米の理由 Zサーダー・MWデービス 2003 ネコ・パブリッシング 原典か翻訳のせいか文章が難解で疲労感が残る。米国が嫌われる理由は元を辿れば十字軍以来の西欧とイスラムの対立が米国に移植された為で、米国のハンバーグから映画、IMFWTOまで巨大な存在と影響力が嫌悪される対象という。背景に欧州の懐疑主義、文化的優越性、妬みを感じる。

2.5金融工学とは何か 刈屋武昭 2000 岩波新書 これを読むとグローバリゼーションを支える論理的支柱が金融にあると理解できる。その基本はマクロ的リスク管理であり、資本効率を悪化させるリスクがあると、水が低きに流れるように新しい金融商品がリスク配分を変える裁定が起こるという。資本効率は古典物理学における重力の如く大前提であることから始まる。

1.5+バランスシート再建の経済学 深尾光洋他 2001 東洋経済 景気回復は不良債権の早急な処理であることを小林慶二郎氏の複雑系ディスファンクション理論と、具体的な施策、米国の実例を用いて説いている。殆どは小泉改革で議論され実現されたのでやや新鮮味に欠ける。

(1.5)定年後をパソコンと暮らす 加藤仁 2004 文春新書 著者は3000人にインタビューしたそうだ。本書で取り上げられたのはパソコンを使って第二の人生に生き甲斐を見つけられた利他的な人達で、私のような利己心の塊にはちょっと到達できない領域だ。

1.5-)ローマはなぜ滅んだか 弓削達 1989 講談社 ローマ帝国文明の要素を説明しているが時間軸と連関が明確で無く、それがなぜ結論に至るのか私には不明。最後の章で突然、滅亡の理由は中央(ローマ)と周辺(ゲルマン)が逆転した為だという。塩野さんのような帝国に対する愛情が感じられないせいか。

2.5ダ・ビンチ・コード(上・下) Dブラウン 2004 角川書店 2003年米国でベストセラーになり翌年も凄い売れ行きで、秘書だった米国人も一読を勧めてくれた。アマゾンをチェックすると一時古本の値段が上がっており驚いた。邦訳が書店にうず高く積まれているのを見て天邪鬼心が出て買わなかった。市立図書館では貸出待ちが何十人もいた。終に中古本が105円になり周回遅れとなる。世界中でベストセラーになったのだから面白いに決まっている、コメントすることも無い。■

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自然治癒の力

2007-02-27 22:05:52 | 健康・病気

再び健康ネタです。今月ずっと歯医者に通っている。普段何ともないのだが固いものを噛むと奥歯が痛い。半年振りに診てもらうと診察室の様子が変わっていた。小型CCDカメラで患部を撮影し、目の前の平面テレビに拡大して写し、何所が悪くてどういう治療をするか、治療後どうなったか教えてくれる。

小さな虫歯が3箇所見つかったが、肝心の痛みがある奥歯は見かけ上は何とも無かった。それではとX線撮影すると歯並びの方向に20度程度傾いていることが分かった。その歯と歯茎の間に細い針金を突っ込むと通常の3倍くらい深く入ると言われた。

異物が入り込んだと思われるので、「ソウハ」しますといわれた。歯茎と歯の間に入ったゴミをかき出すということらしい。帰宅して調べると岩波の国語辞典では「ソウハ」は見つからなかったが、家内が昔から使っている金田一先生の辞書には載っていた。このワープロでは変換されない。

治療が始まると歯の周りに麻酔をかけて歯茎と歯の間を曲がった針のようなものでガリガリとかき回されている感じがした。麻酔で痛くはないが想像するだけで怖かった。後は化膿止めの処置をして痛み止めと消毒液を渡されて様子見ということになった。

月曜日に噛むとまだ痛みが残っているというと、先生は当然だといわれた。傾いたのは歯を支える歯茎の骨が傷んだのが原因だが、この骨は自然治癒する性格があるので根気良く待つしかないと。自然治癒の力は個人差があるとも。年齢もあるに違いない。直らない場合もあるような口ぶりで不安になったが、先生に確かめる勇気が無かった。

自然治癒といえば私はこの数年自然治癒に頼らなければいけない怪我ばかりしている。2年間半前に内転筋を傷め、先月は大臋筋を傷めた。内転筋は怪我する前の50%の筋力しか戻っていない。大臋筋は傷めたばかりでまだどうなるか分からない。

医者に自然治癒といわれると「元には戻るなんて贅沢です、半分でも戻れば大成功と思って下さい。」と印籠を渡されたような情けない気持ちになる。20年前にやった肉離れは大事だったが完璧に治った。いま私の自然治癒力がどれだけ残されているか試されている。■

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不透明性の力

2007-02-26 23:26:55 | 社会・経済

不祥事は続く

三洋電機の利益水増し疑惑に続き、東京三菱UFJ銀行の闇社会への不正融資が表面化した。ライブドアや村上ファンドで大騒ぎになった不祥事はその後も続き先日の日興コーディアルの粉飾決算では最早「行過ぎた構造改革」などという的外れの指摘は無くなった。要は昔からある不祥事が続いているということだ。今回はちょっと違った切り口から分析してみる。

民だけでなく、頻発する官製談合や自治体の破産など公も含め全体に共通するのは手続きが不透明で情報が共有されてないことだ。談合に代表されるように密室のやり取りで決定され、結果だけ知らされるか、もしくは結果すら闇に葬られることもあったし、今もあるはずだ。

不透明性は力の源泉

これだけ情報公開とか透明性が求められ、制度や法律が作られても不透明性を保とうとする力が強いのはなぜだろうか。それは不透明性が力の源泉だからだ。それは決して悪事だけではない。誰にも分かる理屈と手順で難問が粛々と解決されるより、あの人に頼めば何とかなる式の解決法は世の中に沢山あり、そのほうが有難がられことも多い。

カリスマ性とか権力はこの不透明性、別の言葉で言うと常人には理解不可能な力、が必須であり余りにも何でも透明だと都合が悪くなる場合も多い。「なあんだ、こんなことだったのかよ。」なんて思われたらまずいのだ。勿論外交など交渉事の世界では自ら手の内を見せることはありえない。しかし、そこに危険が隠されている。

不透明性は何処にもある

私はビジネスの世界でこの不透明性の力を思い知ったことがある。計画した通り売り上げが立たず大量の棚卸を抱えたときの事だ。棚卸といっても発注後まだ取引先での仕掛品、完成品、輸入中、受入中、最終組立、工場倉庫、販売店倉庫など形と場所によって区分けされ、契約に従ってどちらか引き取るか決まっていた。

海外に跨るグローバル・ロジスチックスでは色々なケースを考えて契約で細かく誰が引き取り責任を持つか規定してある。その契約に従えば巨額の棚卸を引き取らざるを得ず、その後の始末が大変だった記憶がある。理屈に合わないと簡単に諦める性向が私にはあると言われたことがある。

不透明性の恩恵を受ける

ところが別のケースで、契約もクソもない棚卸を何としても計画通りに抑えろと工場に無茶苦茶な指示をして(実は経験を積んだマネージャが)その通りになったことがある。その時工場は多分取引先に別の機会に好条件で取引するとかいう類の交換条件を示し、棚卸の引取りを延期するとか他で処分させるとかしたと思われる。あるいは次の発注を餌に脅かしたのかもしれない。

経過は分からないが結果は取引先が了解して巨額な棚卸がバランスシートから消えた。私のような契約を守り手続きを透明化しろという理屈一本ではこうは行かなかったろう。他の取引とパッケージで交渉するなんて綺麗事でもなかったはずだ。実は私も意識しない場合も含めてこのような形で恩恵を受けていた。

恩恵はその場しのぎ

不透明性で象徴的に説明される行為は極めて強い圧力が生じる場合がある。三洋電機の粉飾決算がおかしいと感じていた当事者は監査役も含め少なくとも何十人もいたはずだ。しかし彼らは普段から意思決定の場で不透明な手続きに接しその過程で圧力を感じ、目を瞑る方が彼らにとっても都合が良かったと思われる。

しかしその恩恵は双方にとってその場しのぎで、何時か何倍もの高い付けを支払うことになるリスクがあることは不二家の例を見ても明らかだ。不透明性の力は圧倒的で、一旦使うと麻薬のように止められなくなるのだろう。私の助言はカリスマになった時、身勝手といわれようと周りには透明性を求め徹底させることだ。■

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金利上げで円高にならなかった訳

2007-02-25 14:43:58 | 社会・経済

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7で円安が直接槍玉に挙げられなかったことで、当面ないとの観測が大勢を占めた日銀の追加利上げが突然発表された。しかし、その直後円高に振れた為替相場は間もなく何事も無かったように120円台に回復、日経平均はびくともせず翌日高値を更新した。私のような素人には予想外の展開だった。

予想外の展開にアナリストは①この後利上げがなく依然低金利が続くことが明確になった、②為替相場に影響を与える材料が出尽くしたというよく分からない理由を説明した。彼らも虚を突かれたのだろうか。G7前の円安を問題視する欧州の攻勢が腰砕けに終わり、当面利上げはないという観測報道に変わり、その直後に利上げされるという展開に他に説明しようがなかったようだ。

もっと直接的には欧州経済が好調、かつ米国経済が住宅バブルの影響を乗り越え軟着陸の見通しが認識されてきたことが指摘されている。つまり日米欧の経済ファンダメンタルズ及び金利と為替相場の間のギャップ(から生じるエネルギー)が縮小しつつあるということである。

私は相対的にユーロの影響力が拡大しドルとのバランスが変化したことが根底にあると考える。今まで円安に振れる要因として、金利の安い円を借りて金利の高い通貨で運用する所謂円キャリートレードが指摘されていた。しかし、昨年ドル相場が急変した頃からリスク対応の為運用通貨がドルからユーロ等に分散され、環境が変化したという解説を最近見て注目した。(筆者不明)

これは円にとっても為替相場が極端に振れない環境がでてきたということになると私は考える。金利は今後長い時間をかけて景気に中立なレベル(2%)程度まで上昇するだろうが、それ自体は想定内でその程度の利上げは為替相場をドライブする要因ではないと予想する。

替相場変動はユーロとドルがドライブするだろうが、両通貨とも同じ方向に振れる可能性は減少し「円安地合い」の中でより緩慢に変化するのではないだろうか。少なくとも現在はそういう環境下にある。しかし、こういう環境がずっと続くかどうかは微妙であると私は思う。それは米国への資金還流とアジア・中東諸国などのポートフォリオ見直しの方向が流動的だからだ。

米財務省によると昨年12月米国の長期有価証券に対する海外資金流入超が過去5年で最も低調になり156億ドルに減少した。(モルガンスタンレー)米国は資金需要が高いにもかかわらず慢性的な貯蓄不足の改善に熱心でないことが海外諸国との緊張を生んでいると見られている。

もっと具体的に言うと、アジア・中東諸国が外貨準備を多様化させている。つまりドル建て投資の効率が悪いから他の通貨の投資を増やしポートフォリオを見直しているらしい。特に世界最大の外貨準備を抱える中国の動きが注目される。最近1兆ドルの外貨準備高のうち2,000億ドルをシンガポール政府公社のファンドに投資する決定を下した。(モルガンスタンレー)

しかし財務省証券が減少する一方で社債の買い越しが続きトータルで資本収支の黒字拡大が続いている。つまり国債が減った分を上回る民間部門への投資が続いている。とは言っても2007年の米国市況から資金流入拡大ペースの鈍化が予測され、ドル円相場の環境変化が起こる可能性は考えておく必要がある。

私はその場合でも欧州経済が元気なら一直線で円高に向わないだろうと見る。参考の為、日欧中の2006年米国にどれだけのお金が流れたかを目安として記す。株式・債券に投資された資金(ネット)は、欧州3,737億ドル、中国1,126億ドル、日本613億ドルにのぼる。(新光総合研究所)■

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再び、天邪鬼「格差社会」考

2007-02-23 21:48:51 | インポート

倍内閣はここに来て当初の成長戦略から格差問題に基本政策の軸足を移したようだ。参院選を控え支持率が危険水域に低下し自信が揺らぎ、野党の攻勢に浮き足立ってメディア受けのいい格差問題をテーマに生煮えとも思われる対策を矢継ぎ早に出し始めた。

野党もメディアも格差を最大の悪として政府攻撃の材料とするのは、私はちょっと違うんじゃないのか、同じ格差問題でももっと他の角度からの切り口があるだろうと思う。結果論的な問題のみ指摘する動きは、小泉以前に戻そうとする動きに他ならないと私は憂慮する。

格差問題は既得権益支援に向う

ニュースショウが取り上げる貧困層の支援だけに焦点を当てた政策に格差問題が矮小化されると、そもそもこういう状況を作り出した根本原因・仕組みと責任を曖昧にし、温存させる。格差問題の裏でこれを機会に既得権益を守り、新たな権益すら生まれる可能性がある。

例えば地方格差を取り上げると、何故夕張市が再建団体に陥ったか、その他の自治体を含め転落の経緯を当時係わった政治システムとその責任者たる官僚・首長・議員の名前を明確にし、再発防止の仕組みを作らなければいけない。今回彼らに係わらせていいのか、そしてそういう代表を送った住民の選択も反省してもらう必要がある。

それは小泉首相が進めた構造改革であり、国民の圧倒的な支持を受けた所以である。安倍内閣が改革続行内閣といったのは、この改革精神を引き継ぐことを宣言したと受け取られ高い支持を得た。そして、今その精神がぐらついていることが支持率低下の根底にあると理解すべきだ。

自助の精神とタカリの構造

二つ目の指摘として格差問題を公的支援にフォーカスすると、又もや公共事業や補助金を期待する「タカリの構造」が息を吹き返す恐れがある。今求められているのは苦難に耐えて互いに助け合う「自助の精神」なのである、それは昔からあった日本人の優れた精神の復活だ。

それは「助け合い精神」だったり、「お天道様が見ている」式の高い道徳心、勤労精神だった。そこに政治が介入し「公」が係わった時から精神の堕落が起こり、票目当ての政治が更に事態を悪化させ悪貨が蔓延るが如く意地汚い「たかり精神」が残った。

格差問題を下手に公が手を出すと結局「予算ばら撒き」で終る。やるなら先ずは制度的な格差、例えば年金の官民格差を是正すべきであり、本当に生活に困った人達に生きていくための最低限の生活を出来るようにしてあげることに留めるべきだ。

部分最適と全体最適

三つ目に格差問題は端的に言うと国家が栄え強くならなくても国民は幸せになれば良いのか、果たしてそういう解が存在するのかという問いかけである。歴史的には一時期そうあっても継続した例はない。経済成長を牽引した者が報酬を得ることで格差は拡大し、それが徐々に全体に広がり国が栄えるのは自然な流れである。

小泉首相が指摘したように格差が拡大したと非難するのは筋違いである。失われた十年間に浪費された国富とその後の建て直しで我国が停滞した間に、中国には世界の資本が投下され急成長、日中のGDPの差は5倍から2倍に縮小、国民の収入も急増し日本以上の格差拡大が起こった。どつぼに入って始めて民意は永田町の優先順位と異なることを明確に示した。

誤解を恐れずに言うと最低限の生活を維持していく為のコストを低下させることも強力な支援の一つである。当初まがい物を売っているように感じた100円ショップの最近の充実振りは目を見張るばかりである。品揃えも増えてコンビニから顧客が流れている。米国で暮らしたとき食料等の基礎的な生活費の安いのに驚いたが、現在はそのレベルに達したのではないだろうか。

公的な支援はその意味で医療費や介護など自助努力では解決できない領域に限るべきである。制度的な格差の修正こそ優先して取り組むべきことである。企業の労働法違反は論外だ。しかし、選挙対策としか見えないような支援パッケージを次々と立法化するのは、過去を反省しない愚行であり厳に慎むべきこと。その上で政府は改革の旗を高く掲げ推進すべきである。■

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