かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録11秋

2011-11-29 18:33:36 | 本と雑誌

明日ガンセンターから検査入院の詳細連絡が来た。紹介できる本が少ないので、今読みかけの本を急いで読んで書評に追加した。この後どういう日程になるか良く分からない。もっと沢山紹介したかったのだが。書評だけではなく少しでもやり残しを減らしておきたい気分だ。

10月後半にガンの疑いを宣告され一時期読書意欲が萎んだが、ガンセンターで11月末に検査入院する予定が決まって、腹が据わって本を読もうという気力が戻ってきた。例年に比べ読書の秋に相応しい読書量ではなかったが、今回は興味ある本を読めたと満足している。

今回先ず次の3冊の読書をお勧めしたい。オバマ大統領が再選を控え支持率が低下して苦戦が伝えられている今、ブッシュ政権がどういう性格の政権運営をしたか思い返すのも悪くない。以下に紹介する3冊の著者は世界的なジャーナリスト(日本にこのレベルのジャーナリストがいない)であり、いずれも読む価値があるが出来れば纏めて読まれることをお勧めする。

最初に「忠誠の代償」(Rサスキンド)を読み、オニール財務長官の目を通してブッシュとその側近が最初からイラク戦争ありきの理念が先行する性格を知ると、次に「ブッシュの戦争計画」(Bウッドワード)で開戦までの政権内部の詳細な意思決定プロセスの理解が進む。次に、「帝国アメリカ」(Jニューハウス)が戦争以外にどんな選択肢があったか代案を示してくれる。

次に「官邸敗北」は鳩山政権の迷走の様子が、無能な鳩山首相と記者クラブ報道が作り出す政局を生々しく描かれている。突っ込み不足でもう少し大局的な見方が欲しいが、大新聞やテレビ報道を見るだけでは得られない異なった視点で日本の政治問題を切り込んでいる。一読を勧めたい。

2.5-)官邸敗北 長谷川幸洋 2010 講談社 政治主導を掲げて発足した鳩山首相の無能振りと、財務官僚と亀井・小沢氏にマスメディアが加わって政局に振り回され迷走する様子を生々しく描いたもの。我国政治の本音と残念な実態が垣間見えてくる。著者は東京新聞の論説委員であり、記者クラブ報道のあり方にも一石を投じている。

2.0+)今だから言える日本政治の「タブー」 田原総一朗 2010 扶桑社 皮肉っぽく言えば日曜朝の人気番組「サンデープロジェクト」の自賛的回顧録。著者の挑発に乗って政治家の本音が引き出され墓穴を掘った例が出てくる。大物政治家がアタフタする姿が描かれているが、それで政治がどう良くなったのかの視点がない。番組打切りの顛末が不透明で、著者の徹底追求する記者魂が突然損なわれた感じを受けるのは惜しい。

2.0)NHKと政治 川崎泰資 1997 朝日新聞 戦後から会長選出と政治の関りと報道が如何に影響されたかの内部告発本。今日のNHKは民放よりマシ、特に衛星放送の番組内容は評価している。本書で会長が政治に影響されて歪めた報道や運営と今日のNHKにはギャップを感じる。共通問題として政治部記者のあり方が垣間見えるが、それはまだ温存されているのだろうか。

3.0-)忠誠の代償 Rサスキンド 2004 日本経済新聞社 ブッシュ政権の最初の財務長官ポール・オニールの在職時代の苦闘振りを描いた佳作。オニール長官が事実に基づき論理的に政策を導き出す実利主義者、ブッシュ側近を最初から結論ありきの理念至上主義者として対比して描いている。実はBウッドワードよりブッシュ政権の性格をよく描いていると感じる。

2.0)帝国アメリカ Jニューハウス 2004 河出書房 ブッシュ外交が世界秩序を破壊すると問題指摘する書。無知で無能な大統領とネオコン一派が、根拠の疑わしいイラク戦争を始め、価値観の近いイランと関係悪化させ、クリントン時代の努力を無にした対北朝鮮関係を分析。文章がやや散文的で論理的に繋がらないので、私には長く読みづらく感じた。

2.5)ブッシュの戦争計画 Rウッドワード 2005 日本経済新聞 9.11から72日後にブッシュ大統領がラムズフェルド国防長官にイラク戦争計画作成を命じてから、2003年3月17日に実質上の開戦に至るまで、イラク北部のCIAスパイから大統領まで全関係者の意思決定プロセスを詳細に追跡したもの。戦争の是非よりもHOWばかり議論された様子が生き生きと描かれている。

1.5-)独裁者の言い分 Rオリツィオ 2003 柏書房 最初にアミン大統領とボカッサ皇帝の件を読み始めて直ぐ、既知の情報に枝葉をつけたスポーツ誌的暴露本と思ったがその通りだった。元ポーランド大統領ヤルゼルスキは他の独裁者と違い知性を感じる。ロシア人観は興味がある。

1.5)1932日間の軍隊 上斗米正雄 2005 東京図書 徴兵検査から入営、新兵教育、関東軍からシナ派遣軍、敗戦から復員までを淡々と描いた自分史といったところ。派手な戦闘場面はなく行軍と赤痢やデング熱といった病気を生き抜いた一兵士の物語。

2.5)人口流動の地方再生 松谷明彦編 2009 日本経済新聞 地方衰退の原因が50-70年の欧米の生産方式を直輸入した重化学工業に傾斜した都市集中であり、集落の持続可能性を穀物生産や兼業農家を包括して農業扶養人口を高めようと従来の中央集権的発想とは異なる提案をしている。新鮮で鋭い指摘が多いが、農業の知識は不十分でもう一段の詰めが必要と感じる。

2.0+)統計でリスクと向き合う 宮川公男 2003 東洋経済新報 統計学を偏差値、株価(日経平均)、品質管理、在庫管理など具体的な事例に当てはめて分かり易く解説したもの。特に著者がガン治療に直面し、統計学の知識を用いて医者の勧める手術を断わった決断が、結果的に正解だった件はドラマティックで、堅い題名の本から期待できない面白い内容だ。

最後に私事だが「統計学でリスクと向き合う」では、丁度私がガンの疑い濃厚と宣告を受けた時に読んだ本だった。著者は医者が多くの臨床例から治癒した確率の高い治療をしていると理解、友人から生化学指標が示すデータ(確率)を手に入れ統計学的に分析して、ぎりぎりのところで医者の勧めた手術を断わって生き延びたという。我が身に照らし合わせて、生死の判断を医者任せにしない著者の勇気と知識への信頼は感嘆したが、私には出来そうも無い。■

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大阪ダブル選結果のメッセージ

2011-11-28 20:49:46 | 国際・政治

大阪市長、大阪府知事のダブル選は大阪都構想を掲げた橋下・松井氏率いる大阪維新の会の圧勝に終った。この選挙結果は何を意味するか、マスコミとは違う私流の見方を紹介したい。ファイナンシャルタイムズ(FT)はポピュリズムの勝利と言う。私は直感的に大阪都構想より現状を「変えたい」という若者がキーワードであると考える。

端的に言うと大阪ダブル選は若者の反乱であり、若者の勝利だった。出口調査の結果は圧倒的に多い無党派層の6割以上、民主・自民支持者も約半数が維新の会に投票した。市長選と知事選の投票率が夫々約61%と53%という記録的な高投票率であったと報じられている。

選挙期間中は民主・自民党から共産党まで既成政党に包囲され、週刊誌ほど醜悪でなくともマスコミも橋下氏の「独裁」的な政治スタイルを殊更指摘したように感じた。テレビには喧嘩しないで仲良くやって欲しいとか、急な変化を嫌う声が良く聞かれたが少数派の意見だった。報道を見る限り若者がインタビューに答える姿が少なかった印象がある。そこに私は無意識の偏向を感じた。

手元に詳細データは無いので憶測になるが、投票率の増加分の殆どは無党派層の若者で、彼らの票が維新の会を圧勝に導いたと推測する。週刊誌を始めとする組織的なネガティブ・キャンペーン等で直前の情勢は拮抗していると言う声が聞かれた。従来の投票率ならその通りだったろう。しかし、今回はその上に若者の票が加わって決定的な役割を果たした。

このような傾向は、米国大統領選・小泉郵政民営化解散・長野県知事選の結果を決めたと「青年よ、政治を目指せ」(2009/04/15)で指摘した。拮抗する情勢を普段政治に期待しない若者が大挙して投票所に行き、彼らの票が選挙結果に決定的な影響を与える構図である。http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20090415 

先日、家族の間で昨今の若者論をメールで論じる機会があった。その中で私は少子高齢化と若者の低投票率で政治的影響力がないため、政治やマスコミは高齢者に向かい(例えば福祉ポピュリズム)構造的に若者の為の政策が軽んじられている。しかし、上記の例のように若者が立ち上がって投票所に向かえば状況は変化すると言った。大阪維新の会はより若者を向いた政治になるのは間違いないと私は思う。

大阪の若者世代が自分たちの持っている力に気が付いたかどうか分からない。今回の選挙結果はその気になりさえすれば、若者にも政治的な力があることを示した。オバマのように国中の若者を立ち上がらせれば(現在彼は若者の支持を失い苦戦)、日本の政治も変えられるというのがメッセージである。その為には継続して選挙で意思表示をする必要があるのだが。

一夜明けてテレビが紹介する大阪市民の声の中で、若者に限らず「目的語抜き」の「変えてくれ」という声が多かった。もしかしたら何かわかってないのかもしれない。別のテレビニュースは「大阪再生」といい、今の大阪の何かを「守ってもどうにもならない」、夫々に違うものだとしても何かを「変えたい」願望の表れを感じた。■

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献身の代償

2011-11-27 20:42:18 | 日記・エッセイ・コラム

数年前に実家の向かいに家を新築し引っ越してきた若夫婦に異変が起こった。奥さんはすらりと背が高く目鼻立ちのしっかりした美人、亭主は大人しくて口数が少ない感じの良いカップルで、子供が二人いていつも庭で遊ぶ声が聞こえて来た。とても感じの良いお隣さんが引っ越してきてくれて嬉しく思ったものだ。

新築の家はとても広く平均的な若夫婦にはとても手が出ないような立派な家だが、親がお金持ちだと聞いて納得した。多分借金を返す積りだろうが夫婦ともに驚くほどの働き者だった。亭主は夜遅くまで働き殆ど顔を見たことが無い。奥さんも昼は菓子屋の売り子、夜は別のところで働き、その間に車で子供を送り迎えしていた。

ところが、今回実家に戻って以来殆ど奥さんを見かけなくなった。見たことも無い中年女性や男性などが子供の送り迎えをしている。学校帰りの子供達二人にお母さんは、と聞くと返事が無い。いつも家にこもっていて、庭で大声を上げて遊ぶ子供達の姿が無くなった。

以前この夫婦の様子を見て、こんなに働いたら長続きしないと思った。特に小さな子供を抱えて昼夜働く奥さんは、今は頑張れてもいつか持たなくなるのではと心配した。1-2年だったか前に、私と同年輩の彼女の叔父に会った時、私の懸念を伝えたことがある。彼の実家は私の実家の隣だ。

今日の午後彼の姿を見かけたので、早速疑問をぶつけた。聞くともう手遅れだった。今年の春頃に不仲が表面化し、あっという間に離婚したというのだ。彼は私の懸念を聞いた時、そんな気配には感じなかった。間に入ろうと両親に申し入れた時はもう修復可能な状況ではなかったという。

それを聞いて二人ともとても感じのいいカップルだっただけに、何でそうなったかとても残念に思った。しかし、ぼんやりとこうなることを予想していた。お互い一生懸命頑張ってそうなった。献身の代償は余りにも大きかった。

翻って私の働き盛りの時代は文字通り仕事に熱中した。しかし、家族の為に身を粉にしてやっているという言訳を自分にしていた。いま頃になってもっと子供達の為に時間を使えたのではないかとほろ苦く思い出す。子供達の事が急に気になって、昨日息子の嫁と小一時間電話した。■

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私の落合博満

2011-11-24 23:17:55 | スポーツ

8年間プロ野球中日の監督を務めた落合博満氏が、日本シリーズ終了をもって退任した。私は彼のファンではなかったが、選手と監督総合してプロ野球史突出した実績をあげたと高く評価する。個人とリーダーの両方で野球というゲームを最も理解し実現した稀有な野球人だった。時代が違うので公平な比較は難しいが、肩を並べる実績を残したのは川上哲治氏ではないだろうか。

川上氏は選手として全盛期に兵役で中断されたので数字で見る生涯成績は見劣りがする一方で、監督として比類なき実績を残した。落合氏は20代半ばで遅れてプロの世界に飛び込んだものの3度の3冠王達成など史上最高の打者だった。だが、監督としての数字は川上巨人には遠く及ばない。しかし、ドラフト制度下で戦力が均衡した現在では傑出した実績を残したと思う。

落合氏は選手時代も監督時代も目的を明確にして、目標に向かって妥協することなく全てを注入する人だった。その目標はただ一つ、日本プロ野球という与えられた場で「勝つ」ことであった。短期長期の区別はあっても、全ては勝つ為に役に立つかどうかで判断した。彼は「負けない」と言い換えたが、シーズンを最も高い勝率で終わる為に最も適切な表現をしただけだと私は思う。

落合氏にとって勝つ以外に優先するものはなかった。エンターテインメントが最も重要なら国民的人気の長嶋茂雄氏に勝る人材はいなかった。私にはプロ野球が何を優先するか線引きは曖昧だった。落合氏の勝利原理主義は、他に価値観を見出す人達との間で軋轢を生んだ。勝っても観客動員数が減ると球団経営責任者にとって見れば、必ずしも良い監督とはいえなかっただろう。

メディアとの関係が悪かったというのが面白い。と言うのは、イチローや中田といった日本人選手として超一流の選手とメディアの関係が概して良くなかったからだ。彼らの姿勢には職人的一途さを感じた。その一途さは取材する記者にも一流の理解度を求め、それが感じ取れないと取材に応じないといった頑なさを感じた。落合氏の選手時代に同じ臭いを感じた。長嶋や王のような溢れるばかりのサービス精神は感じられなかった。

監督になってからその傾向が強まったように感じる。中日の監督を引き受けた時、補強なしで現有のベテランと新人をゼロから競わせレベルアップして優勝した。凄いことだ。勝利の為に非情と言われた采配をしても言訳をしなかった。だが、個人批判をすることも無く選手からは慕われ尊敬されているという。

しかし、メディアに対して徹底して寡黙を貫いた。その理由として選手の怪我や起用法などチーム事情を他球団に流した記者がいたことが発端だったと伝えられている。結果としてスポーツ記事で売っているメディアにとっては評判が悪くなるのは当然だった。それでも信念を貫き通す落合氏の姿勢に、私はビジネス世界で結果を数字でのみ評価されるプロのマネージャの有様を思い浮かべた。落合氏は、選手時代は最高の職人、監督時代は最高のマネージャだった。■

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田舎暮し雑感11秋(4)

2011-11-21 00:00:52 | 日記・エッセイ・コラム

今年のこのテーマのシリーズは前回で打ち止めと投稿したが、書く事が出来たので少し追加しておきたい。というのも、このところ季節外れの異変で少々面食らっているからだ。異変の理由は11月半ばを過ぎたのにまだ暖かい日が続いているせいではないかと思う。

数日振りに雨が上がったので庭の様子を見ると、普段目立たないところにあるカイドウの花が咲いていた。たしか春に咲く花だったはずだ。今年の秋は一旦気温が下がり暖かくなったので、春が来たと勘違いしたのかもしれない。それは良いのだが、我慢できないことがある。

晴れた日に外に出て東屋でお茶を飲み読書していると、蚊が出てきて私の血を吸い取ろうとする。もうとっくに夏は終わったよと言うのだが聞き入れてくれない。気温が下がると運動能力が低下するはずなのに、叩き落そうと手を打っても意外に軽快に逃げていく。こんな時期に蚊が出てくるはずが無い。夜ベッドに入っても時々羽音が聞える。暗闇の中で音の聞える辺りの顔や頭を叩くが暫くすると又羽音、全く悩ましい。

カメムシをご存知だろうか。刺激を与えると強烈な悪臭を放ち、衣服や部屋にずっと臭いが残る昆虫だ。東京ではついぞ見たことが無いのだが、今秋の実家では例年に無く多い。暖かい日に洗濯物と一緒に取り込み、気が付かないでうっかり刺激すると酷いことになる。網戸やカーテンに何匹かぶら下がり、先日はフトンや床にまでいた。パジャマに着替えたら首筋がゴソゴソして、摘み出すとカメムシだったこともある。アブラムシやクモは許すが、カメムシだけは勘弁して欲しい。

居間で新聞や本を読みながらテレビを見ていると、時々監視カメラのランプが点滅しレンズが左右にパンしている時がある。母の監視用に取り付けたのだが、どうも今は東京にいる家族が私を監視しているようだ。微妙な気持ちだ。監視される母の気持ちが少し分かったような気がする。

母の気持ちといえば、通風になった時母の為に階段やお風呂につけた手すりが凄く役に立った。今回は特に痛みが酷く長引いたので、その外にもバリアフリーにしておけば良かったと感じた所があった。痛みが酷い時はちょっとした段差や、畳と畳の間の敷居でさえ苦痛だった。母は何も言わなかったけど、本当は辛いと思ったところがあったのではないかと思うと胸が痛くなった。■

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