(承前)
(4)政治資金は「バブル状態」
政治資金規制法は、「ザル法」と言われる。ほかの点を挙げれば、金の入口の規定は「外国人はダメ」「補助金などの公的資金を受けている企業はダメ」「個人献金の上限はいくら」などと事細かに法律で定められているのに対し、お金の出口、「支出」の対象範囲については厳格な規定がない。理屈をこねれば、あらゆることが政治活動になり得るわけだ。一つひとつについて違法ではないかを検討するのは極めて難しい。【片山】
本来、知事や国会議員という公職にある人間が問われるべきは、「違法性」ではないはずだ。法律違反をしてはいけないのは当然であって、むしろ知事としての「適格性」や、本当に国民、都民のためのお金の使い方になっているかの「妥当性」が問われるべきだ。【増田】
「政治資金オンブズマン」は、これまで多くの政治家の収支報告書を調査、追求してきたが、疑わしいものが実に沢山あった。なぜそのようなことが起きるかと考えてみると、次のような問題がある。【上脇】
(a)使途が制限されないという法制度上の問題。
(b)政党交付金があるため、政治資金が潤沢すぎるという問題。
政党交付金は、年間320億円が議席数などに応じて各政党に分配される。2015年度分でいうと、自民党が一番多く、170億円だった。
しかし、この320億円という金額は、1980年代後半のバブル時に大企業などを中心に集めていた政治資金の額が前提となっている。当時「政治改革」の美名のもとで、癒着や賄賂を防ぐため、企業・団体献金を国民の税金に振り替えようと導入された経緯がある。バブル崩壊後の1995年から正式に政党助成制度が施行された。あれから20年以上が経過し、景気は悪化し、国の財政もどんどん逼迫している。それなのに結局、企業献金は禁止されず、政党交付金との「二重取り」が続いている。つまり、政治資金は実は「バブル状態」で、豊富な資金が黙っていても転がり込んでくる“国営政党”になっている。政治資金に余裕があるため、違法または不適切な支出がなされてしまう。政治資金の入口を改革しないと、出口は杜撰なままだろう。【上脇】
企業・団体献金は厳しく制限していくはずだったが、結局上限などは設けたものの、今も残っている。【片山】
時代や国家財政の状況によって見直していくべきだ。【増田】
ただ、政治資金報告書は、総務省のホームページや、各都道府県のホームページでも過去3年分は公表される環境が整い、メディアはもちろん、一般の方もいつでも誰でも見られるし、情報公開請求で、更に詳細な使途を示す領収書も見られるようになっている。つまり多くの人の目にさらされるようになっているわけだ。舛添知事の問題も、すべてこうした公開情報が端緒になっていることを考えると、政治資金規制法が法改正によって改良された効果があったとも言える。それによって刑事告発も可能だし、もし罪に問われなくても、こんなおかしなお金の使い方をする政治家は見識がない、と広まれば、次の選挙の当落や政治家の進退に影響を及ぼし得る。【片山】
ただ、政界では、使途を全く明かさず、政治資金規制法の網をくぐり抜ける方法が未だに温存されている。「組織対策費」名目で、巨額の政治資金を政治家個人に流し、その先をブラックボックスにする方法だ。舛添知事も新党改革時代の2012、2013年に「組織対策費」として計1,050万円を受け取っている。【上脇】
公金を受け取る政治家の政党支部や政治団体が、悪質な虚偽記載などをした場合、「間違ったので訂正しました」、「すぐ返金します」で済ませるのではなく、例えば該当額の10倍を翌年の政党交付金から削減する等、なならかのペナルティを科さないと、虚偽記載や不記載はなくならないのではないか。【上脇】
(5)保育所や介護施設の視察はゼロ
舛添知事は、2001年に政治家に転身する前は国際政治学者として長らくテレビで活躍していた。その経験がそうさせるのか、記者会見もどこかテレビタレント的だ。テレビでは、限られた時間内でタイミングを見計らい、CMに入る間際で相手をやり込めるとか、話が切り替わるときに意表を突くようなことを言うなど、独特のテクニックを使う人がいるが、舛添知事もそれに頼っているように見えるところがある。【片山】
一連の会見でも、自分の公私混同や公金意識の欠如が問題になっているのに、論点をずらし、本質の議論を棚にあげて記者をやり込めようとしているかのような姿は、情けない。【片山】
舛添知事が第一次安倍政権や福田政権で厚生労働大臣だったが、官僚の話ではすごく頭がいいので、一度聞くとパッとポイントを理解する。政策の説明などがすごく楽だと言われていた。ただ、厚生労働大臣の担当する分野は数ある省庁のなかで最も多岐にわたるが、舛添大臣(当時)は医療問題に特に関心が深い一方、他の分野はそうでもないようで、興味を持って取り組むテーマが偏っているとも官僚は言っていた。【増田】
いま、都庁の役人も同じような評価を下している。【片山】
本来、保育園不足や福祉など、都政には課題が沢山あるはずなのに、2015年春からこの4月までの1年間で、視察の7割超が美術館や博物館だった。保育所や介護施設の視察はゼロだった。【上脇】
知事は、その自治体のあらゆることに責任を持つわけで、ある意味、国会議員や大臣の時以上に「自己規律」が求められる。特に日本の首都である東京都の知事なのだから、自己規律をさらに厳正に働かせて、従来の自分の趣味や流儀もすべて変えて都民のために尽くさなくてはならない。そういう思想が舛添知事には欠けているのではないか。【増田】
(6)都議会は学芸会
6月1日から都議会が始まった。石原都政のときも高額な海外視察が問題になったが、当時、議会のチェック機能は働かなかった。【上脇】
一連の舛添疑惑は、都議会がきちんと追求するのがあるべき姿だ。増田氏も知事時代に海外視察に行ったときなど、帰国後の議会でその成果を詳しく聞かれた。都議会ともなれば、都議たちも海外視察に相当行っている。だから知事への追求を厳しくし過ぎると、自らにブーメランのように跳ね返ってくるのを恐れて何も言えないのではないか。【増田】
今夏、都議たちは五輪開催地のブラジルに、視察目的で大挙して行くだろうし。【片山】
本来、地方自治体の統治機構は「二元代表制」で、国政の議員内閣制とは根本的に異なる。この二元代表制のもとでは与党、野党などという概念はなく、「議会」対「知事」という構図で論戦すべきなのであって、自公の与党がまとまって知事を支えるという現在の都議会の在り方は本来おかしい。ただ、これは日本のほとんどの自治体にいえる問題で、どこも与党で多数会派が形成されて、多数会派と首長との一種のなれ合いで自治体が運営されている。【片山】
東京都の議会運営など、ほとんど「学芸会」だ。学芸会と言ったら、歌舞伎と言ってくれ、という人もいた。セリフも決まっていて、終了時刻まで寸分たがわずと言ってよいほどシナリオどおりなのだ。【片山】
都の職員によると、議員の質問ですら役所が作ってあげている場合が少なくない。こんな状態では、議会による緊張感のあるチェックなど望むべくもない。だから、今回の舛添問題は、都議会の怠慢ゆえの産物とも言える。【片山】
また、議会以外にも、知事の暴走を制御する術はある。例えば、東京都人事委員会が、あまりに高額のスイートルームなどの出費をすんなりと了としてきたわけだ。本来はチェックしなければならなかったのに、人事委員会も実質的に機能していなかった。この点も再点検されねばならない。【片山】
一連の疑惑について、舛添知事は「第三者の厳しい目で見てもらう」として、元検事の弁護士2人を雇った。ただ、その第三者の弁護士名も明かさず、いつまでに調査結果を公表するかを明言しなかった。【上脇】
この対応は論外だ。これは沈静化をねらった時間稼ぎだし、その間はだんまりを決め込む作戦だとしか見えない。【片山】
何もわざわざポケットマネーで高い弁護士費用を払わなくても、かなり厳しい第三者である多くの記者が熱心に聞いてくれるのだから、それに真摯に回答すれば、無料で済む。【片山】
「元検事」というと厳しいチェックをするような印象を与えるが、弁護士は依頼人の利益が最優先だ。もし記者に質問されて解らないことがあっても、次の会見までに調査して答えればよい。本人の言葉で説明した結果を都民がどう思うかだ。【増田】
舛添知事には政治家としての説明責任があるのに、なぜ弁護士に丸投げするのか。参議院選挙などにマスコミと都民の関心が移り、注目されなくなることを期待して先延ばしにしているのではないか。【増田】
(7)TOKYOのプレゼンス
舛添知事は、4年後の五輪で世界中の注目を集める東京の顔だ。ところが、その説明に89%の人が「納得できない」と答えている【JNN調査】。77%の人が辞任すべきと考えている【毎日新聞世論調査】。弁護士の調査結果が出たところで、都民の多くが納得するとは思われない数値だ。【上脇】
事ここに至っては潔くお辞めになったほうが余程スッキリする【片山氏、増田氏】。
行政のトップである知事は、都民、県民の信頼があてこそ仕事ができる。都民の9割に「あなたは信用できない」と言われていて、知事をやっている意味がない。【片山】
しかし、本人が、直ちに違法とは言えないとして、強弁してでもしがみついたほうがいいという価値観なのであれば、仕方ない。都議会が百条委員会で追い込むとか、不信任を突きつけるとか、果ては都民およそ146万人の署名によってリコールを請求するなど、次の局面に移っていき、ますます泥沼化するだろう。それは都民にとっても本人にとっても不幸なことだ。【片山】
東京五輪は、エンブレムや国立競技場の問題に始まって、招致の際に2億3,000万円のコンサル料を払っていた疑惑など、さまざまな問題が噴出しているが、都知事が疑惑を抱えたまま居座ることで、さらにイメージが悪化していく。【増田】
今年はブラジルで五輪が開催されるが、彼の地のルセフ大統領は、国会会計を不正操作して粉飾した疑惑による弾劾裁判中だ。8月5日に開幕するリオ五輪では代行のテメル暫定大統領が各国を迎えるという異例の事態になりそうで、世界中が心配している。【増田】
東京都は、これまでただでさえ問題が続いたのだから、東京五輪に支障がないようにしなければならない。そのためにも、舛添知事は、早急に疑惑にケリをつけるべきだ。【増田】
本来五輪は都市の祭典だ。東京都が主体的になって、五輪の準備を進めなければならないときに、トップがらみの騒動が長引くほど、都政は停滞し、TOKYOのプレゼンスは低くなってしまう。東京都が中心的役割を堂々と発揮できるようにしてもらいたい。【片山】
□鼎談:片山善博(慶應義塾大学教授)、増田寛也(東京大学公共政策大学院客員教授)、上脇博之(神戸学院大学教授/市民団体「政治資金オンブズマン」共同代表)「舛添知事は日本の恥だ ~汚れた「TOKYOの顔」への退場勧告~」(「文藝春秋」2016年7月号)
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【参考】
「【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~」
「【片山善博】【舛添】都知事問題は自治システム改善の教材」
(4)政治資金は「バブル状態」
政治資金規制法は、「ザル法」と言われる。ほかの点を挙げれば、金の入口の規定は「外国人はダメ」「補助金などの公的資金を受けている企業はダメ」「個人献金の上限はいくら」などと事細かに法律で定められているのに対し、お金の出口、「支出」の対象範囲については厳格な規定がない。理屈をこねれば、あらゆることが政治活動になり得るわけだ。一つひとつについて違法ではないかを検討するのは極めて難しい。【片山】
本来、知事や国会議員という公職にある人間が問われるべきは、「違法性」ではないはずだ。法律違反をしてはいけないのは当然であって、むしろ知事としての「適格性」や、本当に国民、都民のためのお金の使い方になっているかの「妥当性」が問われるべきだ。【増田】
「政治資金オンブズマン」は、これまで多くの政治家の収支報告書を調査、追求してきたが、疑わしいものが実に沢山あった。なぜそのようなことが起きるかと考えてみると、次のような問題がある。【上脇】
(a)使途が制限されないという法制度上の問題。
(b)政党交付金があるため、政治資金が潤沢すぎるという問題。
政党交付金は、年間320億円が議席数などに応じて各政党に分配される。2015年度分でいうと、自民党が一番多く、170億円だった。
しかし、この320億円という金額は、1980年代後半のバブル時に大企業などを中心に集めていた政治資金の額が前提となっている。当時「政治改革」の美名のもとで、癒着や賄賂を防ぐため、企業・団体献金を国民の税金に振り替えようと導入された経緯がある。バブル崩壊後の1995年から正式に政党助成制度が施行された。あれから20年以上が経過し、景気は悪化し、国の財政もどんどん逼迫している。それなのに結局、企業献金は禁止されず、政党交付金との「二重取り」が続いている。つまり、政治資金は実は「バブル状態」で、豊富な資金が黙っていても転がり込んでくる“国営政党”になっている。政治資金に余裕があるため、違法または不適切な支出がなされてしまう。政治資金の入口を改革しないと、出口は杜撰なままだろう。【上脇】
企業・団体献金は厳しく制限していくはずだったが、結局上限などは設けたものの、今も残っている。【片山】
時代や国家財政の状況によって見直していくべきだ。【増田】
ただ、政治資金報告書は、総務省のホームページや、各都道府県のホームページでも過去3年分は公表される環境が整い、メディアはもちろん、一般の方もいつでも誰でも見られるし、情報公開請求で、更に詳細な使途を示す領収書も見られるようになっている。つまり多くの人の目にさらされるようになっているわけだ。舛添知事の問題も、すべてこうした公開情報が端緒になっていることを考えると、政治資金規制法が法改正によって改良された効果があったとも言える。それによって刑事告発も可能だし、もし罪に問われなくても、こんなおかしなお金の使い方をする政治家は見識がない、と広まれば、次の選挙の当落や政治家の進退に影響を及ぼし得る。【片山】
ただ、政界では、使途を全く明かさず、政治資金規制法の網をくぐり抜ける方法が未だに温存されている。「組織対策費」名目で、巨額の政治資金を政治家個人に流し、その先をブラックボックスにする方法だ。舛添知事も新党改革時代の2012、2013年に「組織対策費」として計1,050万円を受け取っている。【上脇】
公金を受け取る政治家の政党支部や政治団体が、悪質な虚偽記載などをした場合、「間違ったので訂正しました」、「すぐ返金します」で済ませるのではなく、例えば該当額の10倍を翌年の政党交付金から削減する等、なならかのペナルティを科さないと、虚偽記載や不記載はなくならないのではないか。【上脇】
(5)保育所や介護施設の視察はゼロ
舛添知事は、2001年に政治家に転身する前は国際政治学者として長らくテレビで活躍していた。その経験がそうさせるのか、記者会見もどこかテレビタレント的だ。テレビでは、限られた時間内でタイミングを見計らい、CMに入る間際で相手をやり込めるとか、話が切り替わるときに意表を突くようなことを言うなど、独特のテクニックを使う人がいるが、舛添知事もそれに頼っているように見えるところがある。【片山】
一連の会見でも、自分の公私混同や公金意識の欠如が問題になっているのに、論点をずらし、本質の議論を棚にあげて記者をやり込めようとしているかのような姿は、情けない。【片山】
舛添知事が第一次安倍政権や福田政権で厚生労働大臣だったが、官僚の話ではすごく頭がいいので、一度聞くとパッとポイントを理解する。政策の説明などがすごく楽だと言われていた。ただ、厚生労働大臣の担当する分野は数ある省庁のなかで最も多岐にわたるが、舛添大臣(当時)は医療問題に特に関心が深い一方、他の分野はそうでもないようで、興味を持って取り組むテーマが偏っているとも官僚は言っていた。【増田】
いま、都庁の役人も同じような評価を下している。【片山】
本来、保育園不足や福祉など、都政には課題が沢山あるはずなのに、2015年春からこの4月までの1年間で、視察の7割超が美術館や博物館だった。保育所や介護施設の視察はゼロだった。【上脇】
知事は、その自治体のあらゆることに責任を持つわけで、ある意味、国会議員や大臣の時以上に「自己規律」が求められる。特に日本の首都である東京都の知事なのだから、自己規律をさらに厳正に働かせて、従来の自分の趣味や流儀もすべて変えて都民のために尽くさなくてはならない。そういう思想が舛添知事には欠けているのではないか。【増田】
(6)都議会は学芸会
6月1日から都議会が始まった。石原都政のときも高額な海外視察が問題になったが、当時、議会のチェック機能は働かなかった。【上脇】
一連の舛添疑惑は、都議会がきちんと追求するのがあるべき姿だ。増田氏も知事時代に海外視察に行ったときなど、帰国後の議会でその成果を詳しく聞かれた。都議会ともなれば、都議たちも海外視察に相当行っている。だから知事への追求を厳しくし過ぎると、自らにブーメランのように跳ね返ってくるのを恐れて何も言えないのではないか。【増田】
今夏、都議たちは五輪開催地のブラジルに、視察目的で大挙して行くだろうし。【片山】
本来、地方自治体の統治機構は「二元代表制」で、国政の議員内閣制とは根本的に異なる。この二元代表制のもとでは与党、野党などという概念はなく、「議会」対「知事」という構図で論戦すべきなのであって、自公の与党がまとまって知事を支えるという現在の都議会の在り方は本来おかしい。ただ、これは日本のほとんどの自治体にいえる問題で、どこも与党で多数会派が形成されて、多数会派と首長との一種のなれ合いで自治体が運営されている。【片山】
東京都の議会運営など、ほとんど「学芸会」だ。学芸会と言ったら、歌舞伎と言ってくれ、という人もいた。セリフも決まっていて、終了時刻まで寸分たがわずと言ってよいほどシナリオどおりなのだ。【片山】
都の職員によると、議員の質問ですら役所が作ってあげている場合が少なくない。こんな状態では、議会による緊張感のあるチェックなど望むべくもない。だから、今回の舛添問題は、都議会の怠慢ゆえの産物とも言える。【片山】
また、議会以外にも、知事の暴走を制御する術はある。例えば、東京都人事委員会が、あまりに高額のスイートルームなどの出費をすんなりと了としてきたわけだ。本来はチェックしなければならなかったのに、人事委員会も実質的に機能していなかった。この点も再点検されねばならない。【片山】
一連の疑惑について、舛添知事は「第三者の厳しい目で見てもらう」として、元検事の弁護士2人を雇った。ただ、その第三者の弁護士名も明かさず、いつまでに調査結果を公表するかを明言しなかった。【上脇】
この対応は論外だ。これは沈静化をねらった時間稼ぎだし、その間はだんまりを決め込む作戦だとしか見えない。【片山】
何もわざわざポケットマネーで高い弁護士費用を払わなくても、かなり厳しい第三者である多くの記者が熱心に聞いてくれるのだから、それに真摯に回答すれば、無料で済む。【片山】
「元検事」というと厳しいチェックをするような印象を与えるが、弁護士は依頼人の利益が最優先だ。もし記者に質問されて解らないことがあっても、次の会見までに調査して答えればよい。本人の言葉で説明した結果を都民がどう思うかだ。【増田】
舛添知事には政治家としての説明責任があるのに、なぜ弁護士に丸投げするのか。参議院選挙などにマスコミと都民の関心が移り、注目されなくなることを期待して先延ばしにしているのではないか。【増田】
(7)TOKYOのプレゼンス
舛添知事は、4年後の五輪で世界中の注目を集める東京の顔だ。ところが、その説明に89%の人が「納得できない」と答えている【JNN調査】。77%の人が辞任すべきと考えている【毎日新聞世論調査】。弁護士の調査結果が出たところで、都民の多くが納得するとは思われない数値だ。【上脇】
事ここに至っては潔くお辞めになったほうが余程スッキリする【片山氏、増田氏】。
行政のトップである知事は、都民、県民の信頼があてこそ仕事ができる。都民の9割に「あなたは信用できない」と言われていて、知事をやっている意味がない。【片山】
しかし、本人が、直ちに違法とは言えないとして、強弁してでもしがみついたほうがいいという価値観なのであれば、仕方ない。都議会が百条委員会で追い込むとか、不信任を突きつけるとか、果ては都民およそ146万人の署名によってリコールを請求するなど、次の局面に移っていき、ますます泥沼化するだろう。それは都民にとっても本人にとっても不幸なことだ。【片山】
東京五輪は、エンブレムや国立競技場の問題に始まって、招致の際に2億3,000万円のコンサル料を払っていた疑惑など、さまざまな問題が噴出しているが、都知事が疑惑を抱えたまま居座ることで、さらにイメージが悪化していく。【増田】
今年はブラジルで五輪が開催されるが、彼の地のルセフ大統領は、国会会計を不正操作して粉飾した疑惑による弾劾裁判中だ。8月5日に開幕するリオ五輪では代行のテメル暫定大統領が各国を迎えるという異例の事態になりそうで、世界中が心配している。【増田】
東京都は、これまでただでさえ問題が続いたのだから、東京五輪に支障がないようにしなければならない。そのためにも、舛添知事は、早急に疑惑にケリをつけるべきだ。【増田】
本来五輪は都市の祭典だ。東京都が主体的になって、五輪の準備を進めなければならないときに、トップがらみの騒動が長引くほど、都政は停滞し、TOKYOのプレゼンスは低くなってしまう。東京都が中心的役割を堂々と発揮できるようにしてもらいたい。【片山】
□鼎談:片山善博(慶應義塾大学教授)、増田寛也(東京大学公共政策大学院客員教授)、上脇博之(神戸学院大学教授/市民団体「政治資金オンブズマン」共同代表)「舛添知事は日本の恥だ ~汚れた「TOKYOの顔」への退場勧告~」(「文藝春秋」2016年7月号)
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【参考】
「【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~」
「【片山善博】【舛添】都知事問題は自治システム改善の教材」