(1)普天間だけでなく、沖縄県内にあるすべての米軍基地が無条件で返還され、辺野古にも他のどこにも代替施設をつくらずにすむ方法がある。すなわち、琉球国として独立することだ。日本でなくなれば、日米安保条約や日米地位協定の適用を受けないから、米軍基地が存在する根拠がなくなる。
1972年の復帰から44年、琉球は米国との交渉を日本政府に委ね、期待を裏切られ続けてきた。
しかし、琉球国として独立すれば、一対一で米国と交渉する立場を得る。
琉球新報が2015年5月に行った「独立に関する県民世論調査」では、
日本の中の1県のままでいい 66.6%
日本国内の特別自治州などにすべき 21.0%
独立すべき 8.4%
だったから、まだまだ少数とはいえ、少しずつ増えている。
(2)基地問題で不満や失望を抱えてはいるものの、独立するといわれると経済がうまくいくか心配・・・・これが多くの県民意識だろう。
しかし、その心配は要らないばかりか、むしろ独立したほうが発展する。
なぜか。
沖縄県は、今年度予算について、「歳入面では、県税等の自主財源の割合が低く、国の地方財政制度に大きく依存した脆弱な構造である」と指摘している。
しかし、独立すれば、まず財源不足が解消される。
<例>1972年の返還から現在までに使われた沖縄振興予算の9割は公共事業だが、うち半分は東京などに本社を持つ大手建設会社が受注している。米軍基地内の工事を請け負うには100億円の保証金を積む必要があるので、現実的に大手ゼネコンしか受注できず、県内企業は排除されているのだ。
ほかの産業でも、同じことが起こっている。
こうした植民地経済から、独立によって脱却できる。
(3)世間には、「沖縄は米軍基地への経済依存度が高い。他県より多くのカネを日本政府から貰っている」という勘違いがあるらしい。
しかし、基地関連の収入は、現在、県民総所得の5%まで下がっている。
2013年度の国からの財政移転(①国庫支出金+②地方交付税交付金)は、全国14位。
沖縄新興予算という名前が誤解を与えているようだが、これは上乗せではなく、他県も貰う①国庫支出金と③国直轄事業の合計のことだ。
2016年度において、
(a)沖縄振興予算(①+③) 3,350億円
(b)地方交付税交付金(②) 2,066億円
独立すれば、(a)+(b)=約5,400億円は貰えない。
その代わり、県内徴収分の国税(所得税、法人税、消費税など)と地方税等の県の自主財源が琉球国の税収となる。2013年度の実績では、合わせて4,654億円だ。金額は減るものの、振興予算の使い道が限定されているのに対して、こちらは自由に使えることが大きな意味を持つ。
基地の跡地利用の経済効果からは、前記の減額分を補う数字が出ている。米軍の牧港住宅地区は、返還後に那覇新都心として再開発され、県立博物館や美術館、ショッピングモールなどができてにぎわっている。
沖縄県が2015年に発表した調査結果によれば、地代収入や軍雇用者所得などによる米軍住宅当時の経済効果は52億円だったが、現在は32倍に及ぶ1,634億円だとのこと。普天間飛行場についても、返還されれば3,866億円の経済効果をもたらすと、沖縄県と関係市町村は試算している。現在の120億円に比べ、やはり32倍に達する大幅な増加だ。
(4)基地は観光産業にとってもマイナスだ。
そもそも、沖縄の観光産業は大きく伸びている。2015年度、沖縄県を訪れた観光客は、過去最高の794万人だった。うち国内客は79%だが、大型クルーズ船による中国本土などからの外国人は167万人に達し、前年比69.4%の大幅増となった。
ところが、過去のデータを見ると、米国が中東で戦争を始めたり、テロが起こると、米軍基地を抱える琉球の観光客数は落ち込む。
(5)このように、基地の存在が経済の発達を阻害している。こうした現実を県民が認識させ、世論の喚起を促すことが、独立への第一歩となる。実際に独立するには、次の5つの手順が必要だ。
①沖縄県会議員のうち、独立支持派を過半数まで増やす。
②県議会が、国連脱植民地特別委員会の「非自治地域」リストに琉球を加えるよう決議する。
③「非自治地域」と認められた琉球は、国連や各国国際機関からの協力を受けながら、脱植民地化の活動を行う。
④国連の監視下で住民投票を実施し、独立支持が過半数を占めれば、世界に独立を宣言。独自の政府を作り、国連に加盟申請する。
⑤国際法に基づき、平和的に独立する。日米をはじめとする他国と外交関係を結び、対等な交渉によって米軍基地、自衛隊基地を撤去させる。
(6)(5)の“国連型”の独立なら、日本政府の承認は不要だ。
もう一つは、“スコットランド型”だ。かねてから独立運動の盛んなスコットランドでは、1941年9月にイギリス連邦からの独立を問う住民投票が行われた。このときイギリス政府との間に、賛成が過半数を占めれば独立を認める合意があらかじめなされた。
しかし、日本政府はこうした合意に応じそうもない。“国連型”の独立が現実的だろう。
(7)スコットランドの投票結果は、賛成45%、反対55%で独立は叶わなかったが、賛成票の多くが若い世代だったことは特徴的だ。また独立を支持する大きな理由に、イギリスが国内唯一の核ミサイル潜水艦基地を押しつけていることへの反発や、かつて独立国だった点が挙げられているのは、琉球とよく似ている。
琉球が日本に統治された時期は、
①琉球処分(1879年)から敗戦(1954年)まで
②復帰(1972年)から現在まで
であって、①+②=110年余でしかない。
そして、日本の統治下に入ることも、20万人の戦没者を出した沖縄戦も、戦後の米国統治も、すべて琉球人の意思ではなかった。独立を決める住民投票で、琉球人は初めて自己決定権を行使し、自らの将来を決めるのだ。
(8)独立を回復した琉球連邦共和国は、人口140万人、有人島約50。日本国憲法の9条に倣い、非武装中立国家となる。
これまでは日本との格差是正を求めてきたが、今後は地の利を生かし、アジア近隣諸国との連携強化を広く図る。
参院選を経て憲法改正の動きが加速すれば、在日米軍基地の74%も押しつけられている琉球は、再び戦場になる危険が高まる。そうなれば、独立運動は活発化するだろう。
県民の意識次第では、2020年の東京五輪に琉球国代表団を送り込むことも、決して夢物語ではない。
□松島泰勝(龍谷大学経済学部教授)「「琉球独立」は夢物語ではない」(「文藝春秋」2016年7月号)
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1972年の復帰から44年、琉球は米国との交渉を日本政府に委ね、期待を裏切られ続けてきた。
しかし、琉球国として独立すれば、一対一で米国と交渉する立場を得る。
琉球新報が2015年5月に行った「独立に関する県民世論調査」では、
日本の中の1県のままでいい 66.6%
日本国内の特別自治州などにすべき 21.0%
独立すべき 8.4%
だったから、まだまだ少数とはいえ、少しずつ増えている。
(2)基地問題で不満や失望を抱えてはいるものの、独立するといわれると経済がうまくいくか心配・・・・これが多くの県民意識だろう。
しかし、その心配は要らないばかりか、むしろ独立したほうが発展する。
なぜか。
沖縄県は、今年度予算について、「歳入面では、県税等の自主財源の割合が低く、国の地方財政制度に大きく依存した脆弱な構造である」と指摘している。
しかし、独立すれば、まず財源不足が解消される。
<例>1972年の返還から現在までに使われた沖縄振興予算の9割は公共事業だが、うち半分は東京などに本社を持つ大手建設会社が受注している。米軍基地内の工事を請け負うには100億円の保証金を積む必要があるので、現実的に大手ゼネコンしか受注できず、県内企業は排除されているのだ。
ほかの産業でも、同じことが起こっている。
こうした植民地経済から、独立によって脱却できる。
(3)世間には、「沖縄は米軍基地への経済依存度が高い。他県より多くのカネを日本政府から貰っている」という勘違いがあるらしい。
しかし、基地関連の収入は、現在、県民総所得の5%まで下がっている。
2013年度の国からの財政移転(①国庫支出金+②地方交付税交付金)は、全国14位。
沖縄新興予算という名前が誤解を与えているようだが、これは上乗せではなく、他県も貰う①国庫支出金と③国直轄事業の合計のことだ。
2016年度において、
(a)沖縄振興予算(①+③) 3,350億円
(b)地方交付税交付金(②) 2,066億円
独立すれば、(a)+(b)=約5,400億円は貰えない。
その代わり、県内徴収分の国税(所得税、法人税、消費税など)と地方税等の県の自主財源が琉球国の税収となる。2013年度の実績では、合わせて4,654億円だ。金額は減るものの、振興予算の使い道が限定されているのに対して、こちらは自由に使えることが大きな意味を持つ。
基地の跡地利用の経済効果からは、前記の減額分を補う数字が出ている。米軍の牧港住宅地区は、返還後に那覇新都心として再開発され、県立博物館や美術館、ショッピングモールなどができてにぎわっている。
沖縄県が2015年に発表した調査結果によれば、地代収入や軍雇用者所得などによる米軍住宅当時の経済効果は52億円だったが、現在は32倍に及ぶ1,634億円だとのこと。普天間飛行場についても、返還されれば3,866億円の経済効果をもたらすと、沖縄県と関係市町村は試算している。現在の120億円に比べ、やはり32倍に達する大幅な増加だ。
(4)基地は観光産業にとってもマイナスだ。
そもそも、沖縄の観光産業は大きく伸びている。2015年度、沖縄県を訪れた観光客は、過去最高の794万人だった。うち国内客は79%だが、大型クルーズ船による中国本土などからの外国人は167万人に達し、前年比69.4%の大幅増となった。
ところが、過去のデータを見ると、米国が中東で戦争を始めたり、テロが起こると、米軍基地を抱える琉球の観光客数は落ち込む。
(5)このように、基地の存在が経済の発達を阻害している。こうした現実を県民が認識させ、世論の喚起を促すことが、独立への第一歩となる。実際に独立するには、次の5つの手順が必要だ。
①沖縄県会議員のうち、独立支持派を過半数まで増やす。
②県議会が、国連脱植民地特別委員会の「非自治地域」リストに琉球を加えるよう決議する。
③「非自治地域」と認められた琉球は、国連や各国国際機関からの協力を受けながら、脱植民地化の活動を行う。
④国連の監視下で住民投票を実施し、独立支持が過半数を占めれば、世界に独立を宣言。独自の政府を作り、国連に加盟申請する。
⑤国際法に基づき、平和的に独立する。日米をはじめとする他国と外交関係を結び、対等な交渉によって米軍基地、自衛隊基地を撤去させる。
(6)(5)の“国連型”の独立なら、日本政府の承認は不要だ。
もう一つは、“スコットランド型”だ。かねてから独立運動の盛んなスコットランドでは、1941年9月にイギリス連邦からの独立を問う住民投票が行われた。このときイギリス政府との間に、賛成が過半数を占めれば独立を認める合意があらかじめなされた。
しかし、日本政府はこうした合意に応じそうもない。“国連型”の独立が現実的だろう。
(7)スコットランドの投票結果は、賛成45%、反対55%で独立は叶わなかったが、賛成票の多くが若い世代だったことは特徴的だ。また独立を支持する大きな理由に、イギリスが国内唯一の核ミサイル潜水艦基地を押しつけていることへの反発や、かつて独立国だった点が挙げられているのは、琉球とよく似ている。
琉球が日本に統治された時期は、
①琉球処分(1879年)から敗戦(1954年)まで
②復帰(1972年)から現在まで
であって、①+②=110年余でしかない。
そして、日本の統治下に入ることも、20万人の戦没者を出した沖縄戦も、戦後の米国統治も、すべて琉球人の意思ではなかった。独立を決める住民投票で、琉球人は初めて自己決定権を行使し、自らの将来を決めるのだ。
(8)独立を回復した琉球連邦共和国は、人口140万人、有人島約50。日本国憲法の9条に倣い、非武装中立国家となる。
これまでは日本との格差是正を求めてきたが、今後は地の利を生かし、アジア近隣諸国との連携強化を広く図る。
参院選を経て憲法改正の動きが加速すれば、在日米軍基地の74%も押しつけられている琉球は、再び戦場になる危険が高まる。そうなれば、独立運動は活発化するだろう。
県民の意識次第では、2020年の東京五輪に琉球国代表団を送り込むことも、決して夢物語ではない。
□松島泰勝(龍谷大学経済学部教授)「「琉球独立」は夢物語ではない」(「文藝春秋」2016年7月号)
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