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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【TPP】の闇:遺伝子組み換え食品 ~不安だらけな“食の安全”(2)~

2016年06月17日 | 医療・保健・福祉・介護
 (7)なぜ遺伝子組み換え(GM)食品を推進するのか。
 米国で商品化されて20年、生物特許という新たな分野が確立され、種子が特許となった。
 GMの種子は大きく分けると2種類ある。
  (a)食べた虫が死ぬ農薬のような物質を細胞内に作る種子。
  (b)除草剤でも枯れない耐性を持つ種子。
 トウモロコシ、大豆、ナタネなどに応用されている、良い種子を皆で分かち合う、というのではなく、特許を持つ種子を囲い込み、農産物の市場を支配する戦略だ。

 (8)GMで農薬がいらなくなる・・・・わけではない。
 その逆だ。世界最大の種子会社となったモンサントが創った種子は、強力な除草剤「ラウンドアップ」と併用される。ラウンドアップを散布すると、GM植物だけが残る、という使い方だ。農薬と種子の両方を売るビジネスが世界で展開されている。今や種子市場において、次の上位3社で、GM種子は世界の53%を支配している。
   モンサント(27%)
   デュポン
   シンジェンタ

 (9)農薬メーカーが遺伝子組み換えの種子を作っているのだ。
 生物特許は米国の食料戦略に組み込まれている。巨大化した種子産業は、豊富な資金で他国の種子会社を買収する。種子が寡占化されると、GM種子しか手に入らなくなる。
 すでにインドの綿花で起きている。
 種子で食料を支配し、食料で世界を支配する戦略だ。

 (10)日本は大丈夫か。
 心配だ。作付けが始まるかもしれない。日本で認可されたGM作物は、環境影響評価や食の安全評価も済ませている。住民や自治体が作付けに反対して止めているのが現状だ。
 日本は米国に次ぐ世界第二の消費国だ。TPPで新たなルール作りが始まれば、始めたい業者に追い風になる。政府は、農業特区で株式会社による農業を認める構えだ。種子メーカーは日本に子会社を設け、作付けを始めることもできる。種子会社が米国に買収されることも起こる。

 (11)世界の動きはどうだろうか。
 GMの種子は、北米・南米が中心で、インドなどアジアの途上国に広がっている。欧州は、慎重な国が大勢だが、スペインや東欧で始まっている。
 世界規模でせめぎ合いが起きていて、政府の姿勢が弱い日本は狙われている。

 (12)日本は世界第二の消費国なのだ。
 消費者は、意識しないままGM作物の小麦・大豆・ナタネなどを食べている。これらを加工した異性化糖や食用油・醤油など多くの食品に表示がない。
 EUでは、原料に使われるGM食品は、すべて表示義務がある。日本は検出できる製品に限り、表示が認められている。豆腐に表示されても、醤油やサラダ油は表示できない。製品から検出できないからだ。
 EUのような強い姿勢を示せないのは、米国に屈しているからだ。

 (13)安全性はどうか。
 種子会社は「危険性はない」と主張するが、カーン大学(フランス)が行った実験は衝撃を与えた。
 従来は、3ヵ月までラットの変化を見るものだったが、同大学は長期にわたる実験を行った。4ヵ月を過ぎたラットに腫瘍ができることを確認した。GMの餌を摂るラットは、オスもメスも短命という結果も出ている。
 カナダの調査では、妊婦の90%以上の血液に殺虫性タンパクが検出された。

 (14)消費者にとってGM食品を「使っていません」という表示は大事な情報だ。
 しかし、米国では「GM食品が悪いとの印象を消費者に与える」として、表示を非関税障壁と主張してきた。
 TPPでは、現行制度を変えるとは書かれていない、と政府は言っている。
 しかし、問題は日米二国間協議という抜け道だ。円滑な貿易を妨げる要因をなくしていくことが日米で合意され、「成果ある結論を出す」と約束した。貿易の技術的障害とか衛生植物検疫ルールとか、一般にはわかりにくい言葉が協定書に並んでいる。難解な言葉の裏に多国籍企業の意図が隠れている。
 典型は、企業が政府を訴えることができるISDS条項だ。訴訟に持ち込むことだってできる。圧力をかけらえれると、自発的に米国の要求をのむ、というのがこれまでの日本の対応だった。
 TPPで農産物が安くなる、とも言われているが、関税が少し下がっても末端価格はそれほど安くなるまい。
 TPPで安くなるのは、私たちの命だ。

□安田節子(食政策センター・ビジョン21代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「“食の安全”は不安だらけ! ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第5回~」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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 【参考】
【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~
【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~
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【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~

2016年06月17日 | 社会
 (1)TPPは、食の安全にどう関係するのか。
 これまでの自由貿易と自由貿易と根本的に違い、関税がゼロになるまで交渉を続けることになる。食の安全などを守る規則を、輸出する側の都合で撤廃することを目指しているのだ。これからも協議は続き、究極的には関税と規制が“ゼロ”になる。

 (2)食品の規制緩和は、どの分野で行われるのか。
 TPPと並行して行われた日米二国間協議で、「衛生植物検疫措置(SPS)」と呼ばれる食品安全緩和が話し合われた。収穫後の農薬、食品添加物、牛海綿状脳症(BSE/「狂牛病」)関連の牛肉などで日本は「誠意ある結論を出す」ことで「合意を見た」と覚書に書かれた。
 具体的には、防カビ剤などだ。
 米国は、船で運ぶ間に傷まないようにと防カビ剤など農薬をたっぷりふりかける。収穫後の農薬は日本では禁止されている。米国は「認めろ」とかねてから迫っていて、政府は「保存用の添加物」として認めてきた。「合意を見た」とは、農薬として使えるようにする、という意味だ。米国の農薬残留基準は日本に比べて、
   小麦は50倍
   チェリーは100倍
だから、認めれば米国の基準を日本がのまされ、国内の農薬もこの基準に引き上げられることになる。

 (3)食品添加物も広がるのか。
 米国では、大量の食品添加物が認められている。厚労省の調査で、
   日本は約600品目
   米国は約1,600品目
ある。日本は、この差1,000品目を埋めなければならない。いま、国際的に使われながら、日本で認められていない100品目が審査中だ。どんどん広がるだろう。「誠意ある結論を出す」という約束は「要求をのんで従います」ということだ。

 (4)BSEの牛も緩くなった。
 BSEが発生した米国産牛肉は、
   ①輸入禁止→②生後20ヵ月以下は輸入可→③30ヵ月以下は輸入可
と輸入拡大を認めた。③はTPP協議参加直前に米国の要求に従ったのだ。
 世界的にBSEはまだ収まっていない。米国にはヘタリ牛という歩けなくなった牛がいるが、BSEではないとされている。検査率1%の現状では不安だ。1億頭もの牛を抱える米国は、海外への売り込みに必死だ。

 (5)ホルモン剤使用も問題だ。
 成長が早まり、肉が柔らかくなるので米国と豪州で使われている。ヒトのホルモンバランスを崩す恐れがあり、日本で絵は禁止されているが、輸入肉でチェックされていない。日本癌治療学会の調査では、米国産牛は国産に比べてエストロゲン(女性ホルモン)の含有が赤身で600倍、脂肪で140倍もあった。輸入が本格化してから、乳癌、子宮癌などホルモン系の癌が増えていることが明らかにされた。

 (6)遺伝子組み換え(GM)食品はどうか。
 「モダンバイオテクノロジーによる生産品の貿易」という新たな条項がTPPに盛られた。
 GM食品の貿易ルートを定めよう、ということだ。安全面から規制するのではなく、促進・規制緩和の視点からするルール作りだ。
 <例>微量混入を認めることで、GM食材が混じっても微量なら問題にしない。
 しかし、どこまで微量なのか、決まっていない。米国が決めるのではないか。迅速で透明な審査と称して、審査期間を短くし、米国企業を審査に参加させるということだ。

□安田節子(食政策センター・ビジョン21代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「“食の安全”は不安だらけ! ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第5回~」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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 【参考】
【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~

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