十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

夢始

2013-01-16 | Weblog
警戒の線引き解除夢始      小原啄葉

予想される災害に対して、最優先されるのは人の生命。
警戒区域に指定されれば、嫌でも退去せざる得ないが、
かといって、解除となっても、その真偽は半信半疑。
「警戒の線引き解除」とは、根拠のない解除だが、
それでも、解除は解除。受け入れるしかない。
故郷に戻れる日を、「夢」にしてはいけないと改めて思う。
「俳句」1月号より抄出。(Midori)

御慶

2013-01-15 | Weblog
またたいて星も御慶を述べあふか    鷹羽狩行

「新年句は、やって来る正月を想像するのではなく、
過去をよみがえらせ作る」という作者。
瞬く星と、新年の最も新年らしい季語、「御慶」との取り合わせに、
久しぶりに彼のロマンに触れた気がした。
「俳句」1月号より抄出。(Midori)

2013-01-11 | Weblog
弱者いたぶる奴等狼に喰わす    金子兜太

破調字余りに、怒りが伝わる。
弱者はその弱者をいたぶってはいないだろうか?
狼に喰われるのは、一体どれほどいるだろう。
「狼に喰わす」とは、少々乱暴だが、時代を感じてしまう。
「俳句」1月号より抄出。(Midori)

秋風

2013-01-10 | Weblog
秋風に触れしものより色づきぬ    頓田スミ子

まだ暑さが残る頃、ふと気づく初紅葉に、
自然の造化の神秘に感動を覚えるものだが、
それをどう詠むかは、感動の視点をどこに置くかによる。
そして、こう詠まれた。
「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

秋晴

2013-01-09 | Weblog
   秋晴や老いの遠出の駅一つ     福田  緑

マイナス経験は、少しずつ自信を失わせることにもつながるが、「老い」にも、これによく似た一面を持っているようにも思える。当たり前にできていたことが、できなかったりすると、ふと老いというものを実感してしまう。さて、「老いの遠出」と、いくらかの自嘲もありそうだが、省略の効いた作品に、まだまだ老いを感じさせない心の張りが感じられて良かった。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori
)

曼珠沙華

2013-01-08 | Weblog
忌日には海に手向けん曼珠沙華     嶋田光子

「忌日には」の限定は、故人への思いの深さを物語るが、どこか心の余裕も感じられるのは、それだけ多くの歳月が流れたということだ。故人への思いは決して変わることはなくても、作者自身の暮らしの中で、共にあるという安心感が、そう思わせるのかもしれない。作者の心の内を伺い知ることはできないが、「海に手向けん」の、今を生きる作者の前向きな姿勢に心打たれる。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

温め酒

2013-01-07 | Weblog
温め酒日暮は山の匂ひして   加藤いろは

ふっと寒さが感じられる頃、
日暮はますます山の匂いを濃くする。
「温め酒」が、絶妙に配されて、
懐かしい原風景に出合った気がした。
「日暮は山の匂ひ」という独自の発見が秀逸。
「阿蘇」1月号より抄出。(Midori
)

邯鄲

2013-01-05 | Weblog
邯鄲や人の見てきし夢いくつ     井芹眞一郎

「人の見てきし夢」とは、歴史をつくってきた男たちの夢・・・。夢の実現のために男たちは戦い、たとえ覇者となっても、時代はまた新しい覇者をつくり、歴史は繰り返された。「邯鄲や」に込められた万感の思いは、無常観。「人の見てきし夢」が、科学技術の進歩をもたらしたことも事実だとしたら、「夢」は大いなるロマンとも思えた。「阿蘇」1月号抄出。(Midori
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賀正

2013-01-04 | Weblog
コスモスに風の遍路のありにけり
白露のなかの大日如来かな
かまきりの夜会服にて現るる
勾玉は祈りのかたち鳥渡る      平川みどり


*「阿蘇」1月号に掲載されました

立冬

2013-01-03 | Weblog
定刻にバスが来て冬立ちにけり      岩岡中正

時刻表があれば、時刻表通りにバスが来るのは、当然と言えば当然だが、案外、定刻にバスが来ることは、あまりないと言ってもいいかもしれない。ところが、定刻に目的のバスが来たというのだ。折しもこの日は立冬。立冬は、二十四節気の一つで、2012年は11月7日だった。まるで、定刻に来るバスのように、冬は自然の摂理に従ってやって来たのだ。日常の中で捉えた「立冬」に、新たな詠みの試みが感じられるユニークな一句となっている。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

福寿草

2013-01-02 | Weblog
ゆるみつつ金をふふめり福寿草     深見けん二

その縁起のよい名前を聞くだけで、華やぎと新年の寿ぎを感じさせる福寿草。
次第にふくらみはじめた莟に、「金をふふめり」という断定の潔さ。
金色の花を咲かせるであろうという大きな期待が余韻となって膨らむ。
2013年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori
)

賀正

2013-01-01 | Weblog
明けましておめでとうございます☆
十七音の定型詩の魔力にかかり七年が過ぎました。
様々な句との出会いに、感動を頂きながら、
今年も、俳句の可能性にチャレンジしたいと思います。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

年越ゆる赤いドレスの裾つまみ     みどり