十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

☆師(12)

2016-02-27 | Weblog
『鯨のノートから』の中の「比喩」の項目の中で、“一応、比喩も重要な技法として挙げておきたいと思います。比喩はその措辞自体が素晴らしい表現である場合、普通の言葉よりも比喩の方が自分の心象を表現できるという場合に使われます”と、書き、好きな比喩の句として3句を挙げています。

  火を投げし如くに雲や朴の花       野見山朱鳥
  ぼうたんの百の揺るるは湯のやうに   森 澄雄
  うすらひは深山へかへる花の如      藤田湘子

 鬨也先生は、会員の比喩の句を決して採らないという時期がありました。今思えば、上記にあるように、比喩が、「一応」「場合に使われます」という容認、限定の技法であるとしているところに、その理由があるようですが、掲句3句を上回る比喩の句に出合わなかっただけかもしれません。
  鬨也先生の句に比喩の句が少ないのも同様の理由がありそうですが、実際は、掲句のような直喩ではなく、暗喩であったため、それと気づかないでいたという方が正しいかもしれません。第4句集『琥珀』にいくつかの直喩の句が見られます。

  いちまいの絹のごとしや春の暮     鬨也
  太陽の紙のごとしや黄砂降る      〃

 「春の暮」と「黄砂降る」という一種の気象現象の質感が、比喩によって上手く表現されていると思うのは身贔屓でしょうか。(つづく)