十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

わたしの師(2)

2016-02-16 | Weblog
 
  めんどりに眞水が見ゆる祭前     鬨也

 菅原鬨也先生の代表句として是非挙げたい句の一つです。先生は、昭和49年、 「鷹」入会により、当時主宰であった藤田湘子に師事します。昭和51年には、 「鷹」同人となっていますが、掲句は、同人となった年に詠まれ、「鷹」8月号の巻頭になった作品です。昭和55年に上梓された第一句集のタイトルに『祭前』を起用しているのは、「鷹」の巻頭句としての自負や湘子への敬意の表れではないかと推察されます。
 平成19年の「俳句―未完成の魅力」と題した宮城県涌谷町での講演記録の中で、「私自身が長い間、気づかないでいたのですが、初期の私の代表句、 “めんどりに眞水が見ゆる祭前”は、マ行の音が6つ入っていました。無意識にやっていたのです」とあります。まさしく、偶然がはたらいた「形式の恩寵」と言えるものでしょうか。無意識の偶然性の効果は計り知れないものがあります。
 あらためて作品を観賞してみると、「眞水が」と、「が」が「眞水」を強調する形となっています。あえて強調の「が」を使った所に、この作品のポイントがあるようです。下五の「祭前」への展開は、一句一章の形式を採ってはいますが、手法としては二物衝撃であったと思われます。
 先生は、日頃から「空間の境界」についてしばしば言及していましたが、その境界こそに詩が生れるというものです。「祭前」の一種の緊張感は、時間と空間の境界意識が存在しているからだと思われます。(つづく)