♪ 星の流れに 身を占って
何処をねぐらの 今日の宿
荒む心で いるんじゃないが
泣けて涙も 涸れ果てた
こんな女に誰がした ♪
今日の朝日新聞土曜版beの『song うたの旅人』は、菊地章子の「星の流れに」でありました。
じつはこの歌、私が大好きな歌なんでありまして・・・・・
いやいや、もちろん戦後の新宿に彼女達の姿を見た世代ではありませんよ。
私がこの歌に本当の意味で出会ったのは、大学二回生の夏だったと思います。それ以前に何度も耳にしていた歌ではあったのでしょうが、意識して聴き、口ずさんだのがこの時でした。
その年の夏、大学の自治体活動に日々の時間を取られていた私は、長期のアルバイトを行う事が難しくて、短期のビアガーデンのアルバイトに就いておりました。それも、新宿や渋谷といった大きな繁華街の大きなビアガーデンではなく、神奈川県の小さな街のビルの屋上にあった、しかも、そのビルに入っていた怪しげなスナックが夏だけ営業する小さな屋上ビアガーデンです。
当時の屋上ビアガーデンには何処でも、ショーを行ったり、バンド演奏を行うステージが設けられておりましたが、そこは小さな街の小さな屋上ビアガーデンですから、そんなおくがましい物はなく、それでもギターアンプとマイクが一・二本置かれたスペースは用意されていて、これまた、アマチュアに毛が生えたような二人組のフォークグループの演奏を行っていました。
あはは、忙しかったからなのか、暇すぎたからなのか、定かではありませんけど、二人が何を歌っていたかほとんど覚えていません。ただ、必ずステージの最後に歌っていた「星の流れに」だけが、耳に残っているのです。(「こんな女に誰がした」の部分を、「こんなオカマに誰がした」と変えたりする「オチャラケ・星の流れ」でしたけどね)
仕事が終わった深夜、提灯(ビアガーデンにはつきものでした)も消えた屋上で、同じビルの1階にあったミスドの女の子達と飲むビールが美味くてねぇ・・・・
「星が右に流れたら、今晩付き合うか?」てなこと言いながら「星の流れに」を歌うんでありますなぁ
今思えば、この曲を作詞された清水みのる氏の想いなど、まったく無視した失礼なお話であります。
その後、しみじみとこの曲を味わうにつれ、歌詞の意味も理解できるようになりましたし、益々好きになった歌でした。
今日の記事の「戦後日本の現実を歌う」との表題を見るとき、戦争で散っていった命の尊さはもちろん、残された者の辛さ、苦しさ、「死んでも地獄、生きるのも地獄」ただ、「明けぬ夜がないのなら、生きてさえいれば」との想いだけで身を落とす・・・なんと戦争とは無意味なものでありましょうか。
それと同時に、現代においても、戦争など起きてもいない日本で、多くの人たちが同じような「死んでも地獄、生きるのも地獄」の想いをいだいているのではないのだろうか、しかも「明けぬ夜がないのなら、生きてさえいれば」との希望すら捨ててしまっている・・・・・・・
いや、「明けぬ夜がないのなら、生きてさえいれば」の想いは捨てちゃいけません。戦後『闇の女』とまでさげすまれながらも、生き抜いた彼女達に、今こそ学ぶべきなのかもしれない、なんて、ちょっと思ったりしちゃったりして。(笑)
♪ うられうられて 北の国へ
女がひとり 山を越えて
国を追われた その日から
わたしの夢は 散っていく
女に生まれた この身を嘆いても
涙も夜露に 消えていく
何処へ行くのか 誰に逢うのか
わたしの道は人任せ
今日からわたしは 人形のように
他人のしとねに 身を任す
いつかわたしが 戻れる日が来たら
故郷の花よ 咲いてておくれ
何処へ行くのか 誰に逢うのか
わたしの道は人任せ
うられうられて 北の国へ
女がひとり 山を越えて ♪
これも大好きな歌、泉谷しげるの「うられうられて」ですが、必ず、故郷の花が咲いて迎えてくれる明日があると、私は信じています。
さて、今日の一枚は、ケニー・ドーハムです。
トランペットというと、ジャズの王道、花形楽器でありますが、ドーハムに対する私のイメージは、「はなははなでも『華』じゃない『花』」・・・なんだか分かったような分からないような表現ですが、つまり華やかな魅力は無いと思っています。
いやいや、されとて「それが嫌い」という事じゃないんですよ、「それが逆に魅力だ」と言いたいわけです。
そして、それがどんなホーン奏者を向こうに回してもなお、彼の変わらぬスタイルであるから安心できるという事なのかな。
そんな前置きで、今日のアルバムを聴くと、向こうに回したホーン奏者は、チャールス・デイビス、いやぁ渋いですねぇ、ニューヨークに出てくる前は、ダイナ・ワシントンの伴奏、そうそうビリー・ホリデイとの共演もあったそうですが、このログでもロニー・マシューズやサム・ジョーンズらの共演者として名前は出ているものの、触れたことは無かったかもしれません。
そのデイビスが、このアルバムではとても魅力的に感じられます。
「華がない花を引き立てる花」ってどんな花じゃい
と、ひとりツッコミを入れながら聴くこのアルバムは、今日のような秋空を眺めながらの珈琲タイムにはうってつけかもしれませんね。
JAZZ CONTEMPORARY / KENNY DORHAM
1960年2月11,12日録音
KENNY DORHAM(tp) CHARLES DAVIS(bs) STEVE KUHN(p) JIMMY GARRISON [1-3], BUTCH WARREN[4-6](b) BUDDY ENLOW(ds)
1.A WALTZ
2.MONK'S MOOD
3.IN YOUR OWN SWEET WAY
4.HORN SALUTE
5.TONICA
6.THIS LOVE OF MINE