JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

ジャズのCommunityを考える?

2010年08月19日 | j-l

暑さも今日は小休止、「気温なんてこのまま上がらなきゃいいのに」とまぁそうも問屋は卸さぬようではありますけどね。
高校野球も聖光学院が沖縄興南に破れ、妄想した聖光学院vs東海大相模の一戦は夢と消えたわけですが、「放送もしないプロ野球よりよっぽどいい」と、母は高校野球に熱中しております。

「バブさん、二、三日前に紹介していたソニー・クリスのアルバム、手に入れましたよ。けっこうエエじゃないですか。」
とは、最近私の影響からかジャズを聴き始めたというT君であります。
「え?アナログ盤?・・・・・・なわけねぇか、T君はプレーヤー持ってないもんねぇ、CDかい?」
「いえいえ、iTuneですよ、iTune」
「なんだ、ネット配信か・・・・」
車中や散歩中に聴くソースとしてはそれで充分であることを知りつつも、どうにも未だにネット配信音楽というものに違和感を感じている時代錯誤の私としては、バカにしたような言い方になってしまいました。ごめんごめん。

それにしても便利にはなりましたよね。音楽配信ばかりでなく、書籍の配信、いやいや、我々アナログ世代にとっても、わざわざ中古LPを何件ものお店を回りながら、いちいち難しい顔してゴソゴソやらなくても、「ネットで一発検索!」みたいなことが出来るようになったのですから
しかも、LPからCDに大きく変動していたあの時代に、「CDじゃ試聴も出来ねぇじゃん」と文句を付けていたそれも、ネット配信なら短いとはいえ試聴も出来ますしねぇ・・・・・う~~ん。

マイク・モラスキー氏が著書『戦後日本のジャズ文化』の中で、「旧メディアが懐かしく描かれるとき、新メディアでは希薄となっており、または喪失されつつある(と見られる)、要素」として四つを指摘しています。
Tangibility<具体性>・Fixity<固定化>・Rarity<希少価値>・Community<共同体>
つまり、SP盤やLP盤は存在感に満ち、持ち運びには不便なために聴く場所が固定化し、容易に取り替えがきかないので希少価値が増すことでレコードという物自体を大切にする、そして、聴く場所の固定化、さらに音楽の特性である社交性から、多くの人が一緒に楽しむという共有体験を生み出すというのでありますなぁ。

とくに共有体験というのは、まさにジャズ喫茶で優れたオーディオで再生した音を幾人かの人たちが共有していたといった状況にマッチングしますし、最近はライブ以外では音楽はあくまで個人が個々に楽しむものへと変化してきているようにも思います。
レコードという物体で所有するよりも、いつでもどこでも独り楽しめる音楽データとして保有した方が合理的であるのでしょう。

でもねぇ、どうなんでしょうか?
じつに屁理屈ではありますけど、音楽の共有体験から得た知識、レコードジャケットから得た知識、それらが合間って新たな興味をいだく、てなことはなかったでしょうかねぇ?
例えば、T君が今回仕入れたソニー・クリスにしても、ジャケットをじっくり読み込めば、この時期のクリスがどんなんだったのか、このアルバムが気に入ったから「SATURDAY MORNING」も聴いてみよう、みたいな興味が浮かぶんじゃないかってね。
しかも、近くに小うるさいジャズ評論家気取りのヤツなんかいたりすると、選ぶつもりもなかったアルバムまで聴かされたりして・・・・・でも、そんな時に良いアルバムに出会ったりもしたんですよ、私は過去に。

あれ?私はいったい何を言いたいんだっけ?
ともかく、T君がジャズに興味を持ってくれたことは、じつに喜ばしい事でありまして、ただ、そんなT君にとって、ジャズを共有できる場が身近にないことは不幸なことではないかと・・・・・
けっきょくは、「復権ジャズ喫茶」というお話しですかね。(笑)

さて、今日の一枚は、アビー・リンカーンです。

cocoa_teaさんのコメントにもあるように、去る8月14日、彼女もまた帰らぬ人となりました。それもあって、本日はこのアルバムを選びました。

アビーには申し訳ないのですが、得意のボーカル物ですから、このアルバムもまたバックメンバーに触手を動かされたという一枚であります。
「ナンジャイこのメンバーは」てな面子ですけど、ダンナ、マックス・ローチの力でありましょうか。

面子的に「かなり実験的要素が含まれるであろうアルバム」との予測も立つのですが、私的にはじつにオーソドックスにも感じ取れる一枚です。(あくまで取り方しだいですけどね。)
正直な感想を言えば、ビリー・ホリディの書いた歌詞を始めて録音した「LEFT ALONE」も、私はやはりジャッキー・マクリーンの方が良いと思うし、「BLUE MONK」もじゃっかん「う~~ん」と唸るところがあります。ただブッカー・リトル、エリック・ドルフィ
ーと聞けば、私は悪く言いませんよ。(笑)

余談ですが、オリバー・ネルソンの「ブルースの真実」の前日の録音、いかにこの時期ドルフィーが忙しく活動していたのかがうかがえます。それでも雨漏りする部屋にしか住めなかったのは何故なのか?不思議ですよねぇ。

ともかく、アビーのご冥福をお祈りいたしましょう。

STRAIGHT AHEAD / ABBEY LINCOLN
1961年2月22日録音
ABBEY LINCOLN(vo) BOOKER LITTLE(tp) JULIAN PRIESTER(tb) COLEMAN HAWKINS, WALTER BENTON(ts) ERIC DOLPHY(as, bcl, fl, picc) MAL WALDRON(p) ART DAVIS(b) MAX ROACH(ds) ROGER SANDERS, ROBERT WHITLEY(per)

1.STRAIGHT AHEAD
2.WHEN MALINDY SINGS
3.IN THE RED
4.BLUE MONK
5.LEFT ALONE
6.AFRICAN LADY
7.RETRIBUTION