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■石彫刻の8人展 (2018年4月5~23日、札幌)

2018年04月23日 17時09分20秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
 伊藤隆弘、伊藤三千代、菅原尚俊、野村裕之、藤田尚宏、山本良鷹、渡辺行夫、渡部陽平の8氏による、ギャラリーレタラの企画展。


 画像は、手前が菅原さん、その奥が渡部さん、さらに奥の台座に載っているのが伊藤三千代さんの作品。

 昨秋、展覧会企画を思いついたときにリストアップしたところ、札幌圏でいまもコンスタントに石の彫刻を作っている人は、この8人しかいないことがわかったという。
 札幌の野外彫刻は、ブロンズはもちろんあるが、石彫の存在感も大きい(大通西1の山内壮夫「希望」、大通西8~9のイサム・ノグチ「ブラック・スライド・マントラ」、札幌駅構内の安田侃など)こともあって、作家数のこの少なさは意外だった。
 そもそも彫刻を手がける人の数が絵画にくらべると圧倒的に少ない。そのうえ、FRPで代替がきくブロンズや、比較的材料の入手しやすい木に比べると、石彫は準備も制作もいろいろと大変なのだろう。

 そういった意味では、なかなかおいそれと個展を開くのもむずかしい石彫の作り手が集まる機会ができたことは、ありがたい。

 このうち藤田、山本の両氏は、作業場が屋外で、冬場の制作が難しいこともあって2年前の作品を出しているが、のこる6人は新作を出した。
 伊藤三千代さんのみが2点、あとは1点ずつである。


 伊藤三千代さん(空知管内長沼町)は、今回唯一の女性。
 曲線を生かしたやさしい作品が持ち味だ。
「途上の花 あるいは波紋」「植物と根」を出品している。

 もっとも、これは彼女に限ったことではないとはいえ、8人のうち石彫一本やりの人は少数派であり、伊藤三千代さんも、近年の野外展などでは、素材を多様化させている。


帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト
伊藤三千代 彫刻空感展(2007年)
伊藤三千代 彫刻小品展“海からの贈り物” (2002年)


 伊藤隆弘さん(長沼町)の手がける石彫は、抽象彫刻の精髄と呼びたくなるほど、シンプルな美しさが際立っている。
 表面を研磨しつづけることで生まれる曲線は、じつにスムーズだ。

 今回の作品は「Spring Wind」。
 大理石と御影石による。
 伊藤隆弘さんは全道展会員。


伊藤隆弘「―未生―」 ハルカヤマ藝術要塞 (2012)
伊藤隆弘「雲の指標 2010」 ハルカヤマ芸術要塞常設展示
ひろがるかたち(2007年) ●告知記事
北海道立体表現展’06
北海道立体表現展2003
北の彫刻展 2002
伊藤隆弘 石の彫刻小品展(2001年)


 野村裕之さん「時間による風化 恨み節」。
 野村さんは1961年生まれ、札幌在住。

 風変わりな題がついているが、ギャラリーの泉さんによると、野村さんはある学校で非常勤で教えていて、虐待にあったりいじめられたりした生徒の話などを聞く機会があるという。
 この作品の素材は、やわらかいことで知られる札幌軟石。風化もしやすいのだろうが、人が心に負った傷は、なかなか風化しない。そのことを、傷を負わせた側はつい忘れてしまう。
 筆者が直接作者にたしかめたわけではないが、この作品には、しいたげられた側の人の叫びが込められているのではないかと思った。


さっぽろ雪像彫刻展2017
つながろう2016 Hard/Soft
さっぽろ雪像彫刻展2016
さっぽろ雪像彫刻祭2015
New Point vol.12 (2015)=画像なし

野村裕之 個展 ―浄化― (2014)
木 脇坂淳/陶 前田育子/画 別府肇/石 野村裕之/布 田村陽子(2013)
-の わ- 野村裕之・脇坂淳ユニット「エアーズ ウッド」 ハルカヤマ藝術要塞 (2011)

野村裕之 チビアートの世界展(2008)
ひろがるかたち(06年の4人展)
野村裕之彫刻展 なぞなぞ(03年)
野村裕之小彫刻展 ひそやか(02年、画像なし)


 山本良鷹さん「風琴」。
 素材は白御影石。

 筆者は恥ずかしながら知らなかったのだが、石の作品の表面によく見られる、筋状のへこみは、文様としてほどこしているのではなく、大きな石を割るときにのみを打ち込んだ跡なのだそうだ。
 石工や彫刻家は、ここにくさびを打てば巨石がパカッと割れそうだ―という見当をつけていく。2、3カ所にのみを入れただけで巨石がすらすらと割れていくときは、いいようのない快感を覚えるらしいーと、泉さんが教えてくださった。

 この作品も、ふたつの部材をつなげたように見えるが、じつは自然なかたちなのだろう。

 山本さんは道展のベテラン会員。
 グループ展にはときどき出品しているが、筆者の記憶の範囲では個展を見たことがない。


ひろがるかたち(06年の4人展)


 渡辺行夫さん(小樽)「OutRigger 花」。

 渡辺さんは、道内最大規模の野外美術展「ハルカヤマ藝術要塞」の実行委員長であり、パワフルなベテラン。
 近年はイタドリを素材とした彫刻に軸足を移している。
 こういう、曲線を主体とした作品を、どんどん制作している。


札幌のアーティスト50人展 (2017~18)
ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
渡辺行夫 イタドリ彫刻展 (2017)
渡辺行夫「木漏れ紅」 ハルカヤマ藝術要塞 (2011)
旭川彫刻フェスタの公開制作を見てきた (2012)
下町のコレクション展 2(2007)
北海道立体表現展’06 (画像なし)
北海道立体表現展'03(画像なし)

中山峠 森の美術館(2) 渡辺行夫「風紋のしるべ」
渡辺行夫「四角い波」 紋別・ガリヤ地区(2)
石の意
大山山頂園の作品
時空車
ボノボノ
陵線
大山山頂園の作品
大山山頂園の作品
石・穴・弧・ずれ 
大山山頂園の作品

空中分度器 ? 釧路の野外彫刻(14)


 菅原尚俊さん「Godilla の卵 IV ~拝啓アトム様 本当の正義ってなんですか?」。

 菅原さんは1964年生まれ、道展会員。 

 「ハルカヤマ藝術要塞」では、ピザ窯担当というイメージがあるけれど、2011年の大震災以降、「拝啓アトム様」という名を冠した作品を作り続けている硬派な作家でもある。

 黒い球体と、灰色の球体が、ところどころに怪獣の目のように埋め込まれている。いずれも、黒曜石というから驚きだ。
 川原に落ちているときは灰色だが、みがくと、わたしたちが知っているような黒曜石になるとのことだ。


ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
菅原尚俊「拝啓 アトム様 ここは安全ですか。」 ハルカヤマ芸術要塞
北海道立体表現展’06 (画像なし)
北の彫刻展 2002 (画像なし)


 手前は、出品者最若手である1979年生まれの渡部陽平さん「捩れる形」。

 花崗岩のブロックを重ねて置いたようにも見えるが、このような形に切り出して整形した作品。

 士別でのアーティスト・イン・レジデンスに参加するなど、精力的に活動している。


ハルカヤマ藝術要塞2017 FINAL CUT
渡部陽平「石の彫刻」(2015)
さっぽろ雪像彫刻祭2015
さっぽろ雪像彫刻展 (2014)
渡部陽平「カケラ」 ハルカヤマ藝術要塞


 藤田尚宏さんも1979年生まれ。
 道教大の大学院で学んでいる25歳で、道展の協会賞(最高賞)に輝いている。
 今回の「光を探す」は、大理石、御影石、金属を用いた作品で、上部の金属が、重厚な石と対照的な軽快さを見せている。


首展(2015)
【告知】藤田尚宏彫刻展「意識下のモンタージュ 2」(2011)=略年譜あり
風の中の彫刻展 (2008)
風の中の展覧会 IV (2007)
ひろがるかたち(2007年)
造形展 風の中の彫刻展 (2006)
藤田尚宏「意識下のモンタージュ」 (2005)


2018年4月5日(木)~23日(月)正午~午後6時、火休み
Gallery Retara (札幌市中央区北1西28 MOMA Place 3階)


・地下鉄東西線「円山公園」駅・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分
※円山公園駅は改札と地上の間が長いので、両駅からレタラまでの距離はそれほど違いありません

・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽行き都市間高速バス全便(北大経由除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります




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