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■渡辺行夫 イタドリ彫刻展 (2017年2月17日~3月12日、札幌)

2017年03月11日 15時28分08秒 | 展覧会の紹介-彫刻、立体
(3月12日夜、画像を追加しました。ギャラリーの許可を得て撮影しています)

 渡辺行夫さんは1950年生まれの彫刻家。
 地元・小樽市銭函に近い春香山で、2011年から隔年で開かれている大規模な野外美術展「ハルカヤマ藝術要塞」の実行委員長を務めてきました。
 実作面でも、故郷の紋別市にたくさんの野外彫刻(このページ下方のリンクを参照)にあるのをはじめ、洞爺湖ぐるっと彫刻公園に設置された「風待ち」で本郷新賞を受賞するなど、石彫の分野では道内を代表する存在といっていいでしょう。

 その渡辺さんがあらたに選んだ素材が、イタドリです。
 これ、大正解だと思いました。

 渡辺さんはハルカヤマの現場にはえているイタドリを見て、その生命力に目を見はったといいます。
 イタドリは道内の山野や空き地にふつうに生えている草です。
 5月初めぐらいまでは影も形もないのですが、5月末から6月ぐらいになると、すでに人の背丈ほどにも伸びています。
 あきれるほどの成長ぶりですが、9月の声を聞く頃には元気がなくなり、10月にはすっかり枯れて、山火事の跡のような茶色の姿をさらしています。

 毎年これを繰り返しているのですから、無駄なエネルギーとしかいいようがありません。
 同じ「バカ成長エネルギー仲間」としては、フキという植物がありますが、あれは食用になります。イタドリも、じつは食用になるらしいですが、実際にはあまり利用されているとは言えず、今のところは、なんの役にもたたない成長力を発揮しているだけの存在です(少なくても人間にとって)。

 この、無料で手に入り、無尽蔵にあるイタドリを、渡辺さんは当初、数ミリのチップ状にして、素材としていました。
 今回、本物とマケット(小形の模型)が展示されている「Power on Plant B」(手前右)などがそうです。
 この作品は、鹿島建設が主催する「第14回 KAJIMA 彫刻コンクール」の最終選考8点に残りました。

 続いて渡辺さんは、チップをといて粉にして、素材としました。
 昨年の帯広コンテンポラリーアートで発表した「擬態植物」をはじめ、多くの作品がこの素材で仕上げられています。
 ちょっと見た感じでは、コルクボードや厚紙の風合いに似ています。
 書き忘れましたが、チップも粉も、まずはじめに発表スチロールで形を作り、その外側に貼り付けていくという手法です。粉のほうは、パイ生地の上にぺたぺたと塗って整形していくようなあんばいなのだそうです。
 最後にサンドペーパーをかけて、表面を整えます。

 それにしても、こんなユーモラスなかたちをどんどん作っていく渡辺さんは、根っからの彫刻家なんだな~と思います。
 画像の手前は「立ち尽くす記憶」、奥に、床置きされているのは「横たわる記憶」。根のようなものが複雑にからみあっています。
 こういうニョロニョロした形状は自然にできていってしまうらしく、洞爺湖畔や紋別沿岸の作品はむしろ例外的にお行儀の良いものといえるかもしれません。

 加工しやすく、軽くて運搬も容易な、ユニークなイタドリ彫刻ですが、今のところ屋外に出しっぱなしというわけにはいかないとのこと。
 このほか、小品や、イタドリ製帽子、発表スチロールに絵を描いた平面作品もありました。
 ともあれ、渡辺さんの衰えぬ創作意欲には脱帽です。


2017年2月17日(金)~3月12日(日)正午~午後6時、火休み
ギャラリーレタラ(札幌市中央区北1西28)


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・地下鉄東西線「円山公園」駅・円山公園駅バスターミナルから約360メートル、徒歩5分
・同「西28丁目駅」から約540メートル、徒歩7分

・ジェイアール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分
※小樽行き都市間高速バス全便(北大経由除く)と、手稲、銭函方面行きの全便が止まります


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