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続き■分水嶺 ー中村哲泰とそのこどもたち― (2024年7月2~7日、恵庭)

2024年07月07日 15時51分32秒 | 展覧会の紹介-現代美術
承前

 恵庭市民会館主催の4人展「分水嶺」の続きです。

 中村哲泰さんの長女八子直子さんは札幌在住。
 以前は変形キャンバスによる絵画を手掛けていましたが、近年はそこから発展して、空間全体を作品とするインスタレーションの発表が多くなっています。
 今回は1部屋全体を使い、「流点」と題したインスタレーションとしています。

 ブラインドを閉ざして電灯をつけていないため、会場は薄暗くなっています。
 ミラーボールによる光の点を見せたかったのだそうです。
  
 会場の中央にそびえているのはパネルです。
 市民会館が、恵庭美術協会などの発表場所で、まさに恵庭の美術の発信拠点であるということを「お世話になったパネル」で、表現したかったそうです。

 札幌のような大都市には、美術作品を展示する目的に特化したギャラリーがありますが、地方都市では文化会館など公共施設の会議室にパネルを立てて絵画を陳列することが一般的です。
 そういう地方の状況について、上から目線で軽侮するのではなく、愛着をもっていることが伝わってきます。

 八子直子さんの作品は、単に形や色を追求しているのではなくて、ひとつひとつに、作家の個人的な事情や記憶がまつわりついています。
 それはギャラリートークなどで本人に話を聞かなければわからないものではあります。しかし、大事なことは、話を聞いて種明かしがされることで、学校の国語の試験みたいに納得することではないと思います。
 彼女の作品には、主婦や母親として生活している人の息遣いのようなものが確かに隠されています。具体的な事情ではなく、日常の感情のさざ波に、見ている人がどうやってシンクロさせるかが、鑑賞のカギになるのではないでしょうか。
  
 
 木の枝を配した部分などは、これまでの発表で用いたパーツを使っているようです。

 女の子の顔を大きくあしらった絵などは、薄暗いので、細部まではよく見えません。

 顔を大きく描いたことについて作者は、目線と目線のあいだの空気のようなものを描きたかったと話していました。


 今回の展覧会は規模が大きく、もう一つの細長い部屋も展示に用いています。

 直子さんの夫の八子晋嗣さんのインスタレーション「ruːt」(ː は長音を示す発音記号)と、中村哲泰さんの長男の中村修一さんによる陶のインスタレーション「emarge」が並んでいます。

 手前に並んだ木の塊は、八子晋嗣さんの知り合いから譲ってもらった桐。
 内側は八子さんがくりぬきました。
 展示するにあたり、巨大な塊を四つに分けました。
 やはり今回は「4」という数にこだわりがあるようです。
 
 
 窓際に並んでいる円形も四つで、これは蒸気機関車の動輪のようです。
 作者によると、子どものころに拾って、ずっと「宝箱」と名付けた缶のなかに取っておいた小さな化石が、板に貼ってあるのです。
 X字に組んだ板は、札幌・山鼻地区にあった実家のもの。もともと屯田兵が住んでいた家だったらしいですが、最近解体したとのこと。

 八子晋嗣さんは小学校教諭のかたわら、「芸術団Jam」や「New Point」といったグループ展でユーモラスな作品を出品しています。
 また「カミシバイズム」でもよく、楽しそうに声音を使って実演を担当しています。
 
 中村修一さんは陶芸家ですが、筆者はうつわは見たことがありません。
 野焼きによるオブジェのインスタレーションを制作・発表しています。
 土の味や焦げ目がいい味を出しています。
 
 壁にパーツをちりばめた作品は「spread」。
 
 
 二人の作品が融合したかのような会場になっており、見ごたえがありました。


2024年7月2日(火)~7日(日)午前10時~午後6時(最終日~3時)
恵庭市民会館(恵庭市新町)

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=八子晋嗣さん


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