ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

心の安全地帯

2012年03月16日 | 通信-政治・経済

 先週土曜日の模合(相互扶助的飲み会)はお初の場所で行われたが、我々の模合では滅多にないことがあった。その滅多に無いことの一つに私はとても感動した。何に感動したかと言うと酒、酒の泡盛、泡盛のクース(古酒)。しかし、これについては話が長くなるので別の機会に譲るとして、その日のもう一つの滅多に無いことについて。
  オッサンばかりの席に若い美女がゲストとして参加した。これが滅多に無いこと。彼女とは、私以外のオッサン達は皆初対面。つまり、私の知人であり、私が連れて行った。私から誘ったのでは無い。彼女の希望であった。しかしながら、彼女だって、多少のセクハラがあるかもしれない、洗練ということを知らない沖縄のしょぼくれたオッサン達と酒を飲んで、恋したい頃の大切な時間を過ごすほどスットコドッコイでは無い。
 彼女の目的は酒でも無く、オッサン達のささやかなセクハラをサラリとかわすテクニックを披露するためでも無かった。のんびりとした南の島で「明日の風は明日吹くさあ」とのほほんとしたウチナーンチュの、「もう、いつ死んでもいいや」という年齢に至っているオッサン達にごく真面目な、確固とした信念を伝えるためであった。
 その確固たる信念とは「拡散防止」。

 核拡散防止条約なるものがある。何のことか私もだいたい知っていて私なりの理解もあるが、広辞苑の説明では「核兵器保有国の増加を防止し、保有国が非保有国に核爆発装置や核分裂物質を提供せず、非保有国が取得しないことを目的とする条約」となる。私の理解を少し付け加えると、「核保有国が軍事的にその優位を保持するため、非保有国が取得するのを阻止する条約」となる。多くの国が核を持ってしまうと、その中の政情不安などこぞの国が「えーいっ!後は野となれ山となれ」と突発的に核爆弾を発射してしまうかもしれない。そういう不安があると枕を高くして寝られないから、という理由。
 「1968年調印、70年発効。日本は70年調印、76年批准」ともある。イランやイラクは加盟しているのか、お隣の北の方の国は加盟しているんだろうかと少し気になって、現在どれくらいの国が加盟しているかネットで調べてみた。
 2007年7月時点で190カ国が締約国となっている。 主な未加盟の国はインド、パキスタン、イスラエル、そして、お隣の北の国は1993年に脱退。大丈夫かな?
 いやいや、話が長く脱線したが、彼女の言う「拡散防止」はそれでは無い。

  福島の汚染瓦礫を受け入れるよう政府が各自治体に要請している。沖縄県や那覇市も汚染瓦礫の受け入れを検討しているらしい。「いいんじゃないの」と私は思う。喜びも悲しみも分かち合えばいいさあ、困った時はお互い様さあと思う。そのついでに、沖縄の基地負担も全国で分かち合ったらいいさあとも思ったりしながら彼女の話を聞く。
 「汚染瓦礫が全国に運ばれて全国が汚染されたら、汚染地域の人々は日本に逃げ場が無くなるのです。いざとなったらあそこへ行けばいいと、少なくとも心の安全地帯はあって欲しいのです。沖縄だけでも安全であって欲しいのです」と彼女は言う。「そうか」と私は合点した。「ただちに健康に影響があるわけでは無い」と言われても、じゃあ、10年後には影響があるのか?これから生まれる子供たちには影響があるのか?何が起こるか不安を抱えたまま生きろと言うのか?ってことだ。安全地帯は必要だ。
          
          

 記:2012.3.16 島乃ガジ丸


タイワンキドクガ

2012年03月09日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 毒虫の代表

 これまで本種を含めて20種のガの仲間を紹介しているが、子供の頃から虫などには興味を持たなかった私はそのほとんどを、姿も名前も知らなかった。でもただ2つだけはガジ丸HPを始める前、昆虫図鑑を頻繁に見るようになる前から知っていた。
 もう25年前位になるか、親戚の家の門傍に植わっているチャーギ(イヌマキ)の枝葉に夥しい数の尺取り虫が付いているのを見た。チャーギの幹を蹴るとその振動で尺取り虫が落ちる。尺取り虫は自ら分泌する糸で木と繋がっているので地面には達しない。何十匹もの尺取り虫がシャワーのようにぶら下がっている。その光景が忘れられなくて、ぶら下がっている奴がキオビエダシャクというガであることを知り、その名も覚えた。
     
 知っていた残りのもう一種はタイワンキドクガ、キオビエダシャクの幼虫はイモムシだが、こっちの幼虫は毛虫。その毛に毒を持つという毛虫。子供の頃、毛虫には毒があると聞いて、どの毛虫にも触れなかった。今でも毛虫を直に触ることは無い。
 私自身、虫刺されによると思われる発疹の経験はあるが、その犯人は不明。毛虫かどうかも確証は無い。若い頃、バイト先の先輩が「毛虫に刺されたぁ」と言って腕の発疹を見せ、「タイワンキドクガって奴だ」と教えてくれたので、その名を知った。

 タイワンキドクガ(台湾黄毒蛾):鱗翅目の昆虫
 ドクガ科 琉球列島、台湾に分布 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
 名前の由来、分布は琉球列島、台湾とあるが、おそらく、台湾に多いのでタイワンと名がつくのであろう。成虫の翅の色が黄色いのでキが付くドクガ科のガということ。
 沖縄で毒毛虫というと本種が代表格、幼虫の毒毛に触れると発疹がでて、痒くなるとのこと。毒毛は幼虫だけで無く、卵、蛹、繭にも付着している。
 平地性のガで、特にその幼虫は近隣の公園や民家の庭、畑などでもよく見かける。幼虫の体長は25ミリ内外。食草はゴボウ、ダイコン、ツルソバ、バラなど。
 成虫は主に夜行性で、灯火によく飛来する。飛翔力に乏しく、1度静止するとなかなか飛び立たないとのこと。前翅長13~16ミリ。出現時期は3月から12月。
 本種と同属で、見た目がよく似たものにゴマフリドクガという種があり、文献にあるその特徴を持った個体を見つけ、写真を撮った。
 
 成虫
 
 幼虫

 ゴマフリドクガ(胡麻振毒蛾):鱗翅目の昆虫
 ドクガ科 分布は不詳 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
 前翅長30ミリ内外。前翅に赤色斑点がある。白色の横線は無い。ちなみに学名、
 ゴマフリドクガEupructis pulverea (LEECH)
 タイワンキドクガEupructis taiwana (SHIRAKI)
 
 成虫 
 
 記:ガジ丸 2012.2.22  →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


欲望の行きつく所

2012年03月09日 | 通信-社会・生活

  1月中旬、友人のE子が私の畑に来た。何か食えるものはないかと彼女の目がギラギラ輝く。パセリをちぎって口の中に入れた。それは別に構わない。食べられることでパセリは役に立っている。さらにE子はすくすくと育っているジャガイモを見つけ、「ジャガイモ掘ってみようよ、できているかもしれない」と言う。「掘るのはまだまだ先だよ」と答えるが、「1株でも試しにさぁ」とさらに要請する。もしかしたら食えるかもしれないと思っていやがる。ジャガイモの掘り時、私の感覚では早くとも一ヶ月以上先だ。今掘ってもジャガイモは人の役にほとんど立たない。ということで、これは強く断る。

  別の友人K子は「得することが死ぬほど好き」といって憚らない。そんなにガツガツしなくても生きて行けるだろうと私は思うが、得することへの強い欲求は人間のあたり前の性質だと思っているようだ。「あんたのその欲が原発が無いと成り立たない社会を作ってるんだぜ」と私はまた思う。欲の強さは生きるエネルギーであり、社会の発展の源であるかもしれないが、自然を壊してまで・・・つまり、未来の人間の命と今の自分の命が繋がっていると思えば、自分で自分の首を絞めるようなことをしてまで欲望を満足させなくてもいいじゃないかと思う。E子もK子も好きな人たちだけに少し悲しくなる。

 しかし、彼女らはまだ可愛い(見た目でも)方である。私の姉のように親の金を欲に任せて使い込むような女もいる。それも当たり前と思って反省しない、戦争を反省しない日本帝国の生き残りみたいなものである。彼女を見ていると「悲しくなる」を通り越して、気持ち悪くなる。「犯罪の影に女あり」というが、戦争が「欲望の行きつく所」であるとするならば、「戦争の影に女あり」とも言えるかもしれない。

 「ねぇーあなた、イノシシの肉が食べたいわ、盗ってきて。」
 「イノシシなんてそう簡単には獲れないよ。」
 「獲ってって言ってるんじゃないよ、盗ってって言ってるの!」
 「盗って?ってどういうことだ?」
 「隣町にイノシシを何頭か捕まえた人がいるのよ、それを盗んでってことよ。」
 「えーっ!泥棒するのか?見つかったらどーすんだ?」
 「相手を殺してでも盗って来るんだよ!愛する女のためにさっ!」
 男は女の言う通りにした。そしてイノシシの所有者を、見つかってしまったので仕方なく殴って怪我を負わせてしまった。後日、男はイノシシの所有者仲間から報復を受けた。それに怒った男の親族たちが隣町に殴り込みをかけた。そして、戦となった。
 なんてことが昔、昔、その昔、ある所であったかもしれない。

 E子の言動をみると、本音と建前を使い分け上手く世渡りができ、上手く得するような知恵を身に着けることが大人であると思っている節がある。しかし私は、「自らの欲望をコントロールできることが大人」という考えだ。脳科学の詳しいことは知らないが、脳幹に心を支配されるのでは無く、前頭葉が脳幹をコントロールするということ。平和であり続けることこそ人間の知恵の働かせ所で、知恵は前頭葉から生まれる、はず。
          
          

 記:2012.3.9 島乃ガジ丸


シロスジヒトリモドキ

2012年03月02日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 文献頼りのガジ丸

 ガジ丸HPは2、3週間前からガ(蛾)を紹介しているが、それらの写真、古いものだと7年くらい前に撮っている。そしてこの7年で、名前の判明したものだけで10種以上のガの写真がある。ちなみに、判明していなものは50種以上ある。
 この世にガの類は夥しい数がいるのだということがよーく解った。よーく解ったところで、ガを見ても、小さなものについてはもう写真を撮るのを止めた。判明していない50種以上を判明させるのにもこの先1年以上はかかるであろう。参考文献の『沖縄昆虫野外観察図鑑』に載っていないのも多いので、図書館の大きな図鑑で調べなければならない。大きな図鑑はおそらく、県立中央図書館にしかないだろう。なかなか行けない。

 シロスジヒトリモドキは割と大きなガで、近くにいれば目に付きやすい。私は2度出会って、2度とも写真が撮れた。私の通常の行動範囲である那覇市の公園、宜野湾市の畑の周辺などで見たことはない。1度目は本部町の備瀬フクギ並木、2度目は源河川。目に付きやすいし、個体数も多い方とのことなので、文献にもちゃんと記載があった。

 シロスジヒトリモドキ(白筋灯擬):鱗翅目の昆虫
 ヒトリモドキガ科 琉球列島、台湾、東南アジアなどに分布 方言名:ハベル
 名前の由来、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「前翅は灰黒色で基部から中央にかけて白色の条紋があり、和名はそれに由来する」とあった。見た目通りということ。ヒトリモドキは、ヒトリガ科という一群があるが、それに似ているからと思われる。そのヒトリは「一人」でも「独り」でも無く「灯」、灯火へも飛来するところから。
 山地、平地の林内に生息し、日中も見られるが夜間に灯火へも飛来する。吸蜜は夜間に行うとのこと。私が見たのは2度ともヤンバルの林内で、1度目は平地、2度目は山地、平地では真夏の真昼間、山地では真夏の夕方にお会いしている。
 前翅長30ミリ内外。成虫の出現時期は5月から11月で、個体数は多い方とのこと。幼虫は典型的な毛虫で、食草はイチジクなど。
 
 成虫  
 
 記:ガジ丸 2012.2.2  →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行


いつ読書する?

2012年03月02日 | 通信-音楽・映画

 小学校から中学にかけてはよく読書した。夏目漱石、太宰治、芥川龍之介などといった有名どころの文芸作品などを読んでいた。高校から浪人時代になると遠藤周作、北杜夫といった芥川受賞作家から星新一、筒井康隆などSFまで片っ端から読んだ。
 社会人になってからは仕事関連の資料を読むことが多くなったが、それでもたまには文学に浸ることもあった。であったのだが、40歳過ぎて老眼が入ってきた頃から集中して読書するということが面倒になって、文芸作品に限らず、仕事上必要な資料とか、ガジ丸HPに必要な図鑑、辞書以外はほとんど読まなくなった。

 今年はしかし、読んでいる。1月、2月の二ヶ月間で既に友人から借りた6冊、図書館から借りた9冊の計15冊を読んでいる。内容はほぼ「有機農業、自然農法」関連、「食の安全」関連、「心理療法」関連など。「有機農業、自然農法」はこれから私が目指す生き方ということで、「食の安全」は「有機農業、自然農法」を勉強しているうちに派生した関心事、「心理療法」は去年12月に飲み屋で遭遇した気功の達人の技を見て、「気とは何だ?人間の体や心と何か深い繋がりがあるのではないか?」と思って。
 埼玉に住む友人Rは、たびたび沖縄に遊びにやってくるが、彼は出版社に勤めており、自分の会社が出版したもので私が興味を持ちそうな本をお土産として持ってきたり、あるいは郵送で送ってきたりする。Rから贈られた本は今、約20冊が家の本棚にあり、約10冊が実家に置かれている。その30冊のどれ一つとして私はまともに読んでいない。何冊かをパラパラと捲っただけである。せっかくのRの親切だ、いつかは読もうと思っているが、Rの30冊は今の私の関心事ではないため「いつか」がなかなか来ない。

 今年はまた、DVDもよく観ている。テレビを観なくなって7ヶ月が過ぎたが、音楽とラジオで十分満足していた。退屈な時間はちっとも無かった。であったが、本を借りるために通っている宜野湾市立図書館はDVDも貸してくれる。そのコーナーを覗くと、ガジ丸HPに役立つ動植物関連、今関心を持っている食関連があり、それらを借りた。食関連がなかなか面白くてそのシリーズを観ている。第4巻まで観終わっている。
 DVDコーナーには数は少ない(DVDそのものが少ない、ビデオテープはその10倍位ある)が映画も置いてある。邦画もある。ハリウッド映画に興味は無いが、邦画には好みのものが見つかる可能性は高い。2月の初め『夕凪の街、桜の国』を借りた。広島の原爆を題材にした映画、静かに反戦を語っている良い作品だった。 

 先週も邦画を借りた。これは表紙の主演男優らしき男が岸辺一徳だったので、「ほう、あの名バイプレーヤーが主役か?」と興味を引かれたから。岸辺一徳はいろんな空気を出せる名優だと私は感じている。映画のタイトルは『いつか読書する日』。
 『いつか読書する日』は名作だと思った。いろんな事象がそれぞれ独立して起こり、独立して観客の関心を引く。主演の田中裕子は淡々と日常を生きているが、ある事象をきっかけとして昔の恋人岸辺一徳と声を交わし、別の事象をきっかけに二人は結ばれる。
 良い映画で内容も理解しやすかったが、ただ一つ、題名の「いつか読書する日」が何を意味しているのかが解らなかった。田中裕子は何を読書するのか不明のままだった。
          

 記:2012.3.2 島乃ガジ丸