一つ自慢できることを覚えた。
誰かと一緒に散歩している時、せっかくなので、誰かは若くて可愛い女性としておく。ついでに恋人同士としておく。デートの散歩としておく。自然の多く残っている公園を散歩していて、岩肌に生えている植物を見て、彼女が訊く。
「あれさあ、オオタニワタリって言うんだよね?」
「ん?あれか、ちょっと待ってね。」と私はその植物の葉裏を見る。
「これはオオタニワタリじゃなくて、シマオオタニワタリだな。」と答える。
「えっ、そうなんだ、シマがつくのもあるんだ。」
「うん、ちょっとした違いだがな、はっきりした違いがある。」
「さすがだね、物知りだね。」と彼女は尊敬の眼差しで私を見つめる。私も彼女を見つめる。思わず抱き合う。そして、さらに愛が深まる。
シマオオタニワタリとオオタニワタリの違いを今回調べて、知ることができた。職場の庭には、5箇所にシマオオタニワタリがあった。オオタニワタリは近くの団地の庭にあった。先日、自然の多く残っている公園では無く、南風原町の野原を歩いていたら、藪の中にオオタニワタリを見つけ、そのすぐ傍、2mほど離れたところにシマオオタニワタリも見つけた。両者の違いをしっかり確認して写真を撮る。
先日、自然の多く残っている野原を歩いた私は、いつもたいていそうであるように、一人で歩いていた。当然、抱き合うことも無く、愛が深まるなんてことも無かった。
シマオオタニワタリ(島大谷渡り):添景・鉢物
チャセンシダ科の多年生シダ植物 屋久島以南、琉球列島に分布 方言名:ヒラムシル
島酒(泡盛のこと)、島米(沖縄産米のこと)、島唄(琉球民謡のこと)、島人(シマンチュと読む、沖縄人のこと)などなど、島というのは奄美、沖縄、宮古、八重山、与那国などを含む琉球列島の全てか、またはいずれかの島の文化、産物であることを表している。シマオオタニワタリのシマもおそらくそれ。南西諸島に産するという意。オオタニワタリの由来はオオタニワタリの頁で、「谷間の岸壁に並んで生えているところから谷渡りかも」と書いているが、確かではない。だが、当たらずとも遠からずと思っている。
根系は塊状で、葉には短い葉柄があり長さ100から150センチになる。胞子嚢は葉裏に線状となってつく。半日陰で湿地を好む着生植物。耐潮風性は弱い。
観葉植物の鉢物に多く見られる。アビスという名で園芸店で売られているものの多くはシマオオタニワタリの園芸品種であるらしい。葉は艶がありきれいなことから生花にも使われるとのこと。若芽は食用になる。私はまだ食べた経験は無い。
オオタニワタリとの違いは、下面の羽軸が半円状に盛り上がることと、胞子嚢のつきかたが葉先部分のみで、オオタニワタリに比べてその面積が小さいとのこと。
学名、オオタニワタリはAsplenium antiquum
シマオタニワタリはAsplenium nidus L.
葉裏
記:島乃ガジ丸 2007.5.28 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行