憧れの網目模様
今でこそ旬になると、倭国産の他に、沖縄産のものも店に並べられるが、私が子供の頃は沖縄産メロンというものは無かったと思う。あるいは、あったかもしれないが、我が家ではメロンというものを買ったことがなかったのかもしれない。そういえば、子供の頃にメロンを食ったという記憶が無い。テレビや雑誌でよく目にしていた網目模様のマスクメロンなんてのは、近所のスーパーにも置いていなかったのではないだろうか。
果物が特に好物というわけでも無い私は、メロンが食えないからと言って、親を恨んだり、世をはかなんで自殺したりするなんてことも無かったのだが、マスクメロンだけはいつか食べてみたいと思っていた。「とても美味しい」という噂なのであった。
メロンを食べた記憶は、それがマスクメロンだったかどうかは覚えていないが、確か、従姉(このHPにたびたび登場する)の結婚披露宴だったと思う。
結婚披露宴はホテルで、カクテルパーティー形式で行われた。当時、まだ高校生の私であったが、きれいなお姉さんたちがお盆に乗せて持ってくるカクテルを何杯も飲んだ。もう既にアルコールの洗礼はたっぷり受けていたし、体がアルコールに強い体質でもあったので、カクテルごときに大酔いすることは無かった。ほんのりとは酔っていた。
ほろ酔いで、とても気分良く料理の並べられてあるテーブルを回り、あれこれと美味しいものを口に入れていた。その時、ある珍しい食い物に出会った。それが、テレビや写真では何度も見ているメロンであることはよーく判った。であるが、スライスされたメロンの上に肉らしきものが乗っかっている。これは、酢豚のパイナップル以来の衝撃。
「何ちゅーことをするんだ、ここの料理人は!肉は肉だけで食えば美味いじゃないか。メロンはメロンだけで食いたいじゃないか。」と私は思った。だからといって、それを食べないということは、食い意地の張っている私はけしてやらない。肉(生ハムというものであることは後で知った)とメロンを一緒に口へ入れる。美味いとは思わなかった。やはり、別々で食べた方がいいのではないかと思った。それは、今でもそう思う。
大学の頃、及び大学を卒業してからの数年間、私は貧乏だったのでメロンの食える身分に無かった。仕事に就いて、給料を貰うようになってからも、果物が好物でない私は、メロンを買って食う、というようなことをしなかった。今のアパートに移ったのは12年ほど前になるが、それから果物をよく食べるようになった。メロンも何度か食べている。しかし、それは憧れのマスクメロンでは無い。1個1000円ほどのメロンである。
メロン(melon)
ウリ科の一年草 アフリカ原産(一説にインド)
多くの品種があり、マスクメロンが有名。高価な果物としても有名。
広辞苑を見ると、メロンとは「シロウリ・マクワウリ・マスクメロン(中略)などの変種を含み、それぞれ品種が多い。」とあった。沖縄の飲食で紹介している野菜のモーウイは和名をシロウリと言う。というわけで、モーウイはメロンと同じウリ科メロン属であることが今回判明した。なるほどモーウイ、香りが良かったわけである。
記:ガジ丸 2006.11.12 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行