ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

チュラカーギ

2016年03月25日 | 沖縄04行事祭り・生活風習・言葉

 「方言を使ってはいけません」と教育されてきた私の世代、少なくとも泊小学校や那覇中学校に通う私の周りの友人達で方言を話せる人は、不良と呼ばれる者を除いてはほとんどいなかった。高校に入って、クラスメートの中に、主に首里出身の人たちが方言ペラペラなのに「さすが首里、さすが王府のあった場所」と、驚いた覚えがある。
 私もウチナーグチは話せない、ウチナーグチは話せないが、単語ならたくさん知っている。那覇(首里を除く)出身の友人達も私と同じで、お互いのユンタク(おしゃべり)の中で、「ィヤー(お前)」、「ワン(我)」、「フラー(振れ者=バカ)」、「ディキランヌー(できない者)、「ハゴー(汚い)」など、日常的にいくつも出てきた。

 少年たちが使うウチナーグチは、上記のような美しくない言葉が断然多かった。「きれいな言葉も使っていたかなぁ」と今思い返しても、日常的会話にはあまり出てこなかったように思う。ただ1つ、チュラカーギだけはよく使った。
 チュラカーギをよく使ったのには訳がある。それは少年たちが最も関心を寄せる対象の1つだったからだ。チュラカーギは美貌(美しい見た目)という意味。
 チュラカーギを漢字で書くと、美ら影となる。影は和語でも「おもかげ、姿」という意を表す影。チュラという発音は、もう10年くらい前になるか、NHKの朝ドラ「ちゅらさん」で「美しい」という意味であることと共に全国的にも知られていると思う。全国的に有名な沖縄の水族館も「ちゅら海水族館」という名前だ。
 チュラカーギーと語尾を伸ばすと美人となる。英語のERと同じ使い方である。チュラカーギーは概ね女性のことを差し、「チュラカーギーのうんどー(美人がいるよ)」などと使う。美女という意味ではチュライナグとも言う。イナグは「おなご」に同じ。ただ、少年たちは、チュライナグはほとんど使わず、また、チュラカーギをチラカーギと発音することが多かった。その方が発音しやすいということと、チュラとチラを混同したからだと思われる。チラは、和語の「面(つら)」と同じく「顔」のこと。したがって、チラカーギだと「顔のおもかげ」という意味になり、美貌という意味が消えてしまう。

 私はこれまでたくさんのチュラカーギーに出会ってきた。顔だけでなく心にもチュラサを感じた女性には「付きあってください」と申し込んだ。6回申し込んで、2回は成功したが、4回は撃沈した。チュラカーギーはなかなか手強いのである。
     

 ちなみに、美人でない人のことはヤナカーギーと言う。ヤナは嫌なから来ていると思われるが、意味としては「悪い」となる。子供の頃、ヤナワラバーと私はよく言われた。悪ガキという意。正確にはヤナカーギーだが、少年たちはエナカーギーと発音していた。女子と喧嘩した時などに「エナカーギーヒャー(ブスめ)」とよく使っていた。
 もう1つちなみに、少年たちが最も関心を寄せる対象としては、見た目の美しさももちろんだが、女性の下半身にはさらに大きな関心があった。よって、女性の下半身を指す言葉も会話の中によく出てきた。何て言うのか?と問われても、ここには書かない。少年たちはまだ見ぬものに対し憧れがあった。オジサンとなってからは口にしたことがない。

 チュラカーギというと「見た目が美しい」となるが、美人というと見た目だけの美ではない。私の周りに美人は、友人のK子を代表に何人もいる。チュラカーギも周りにいる。静岡のKK、甥の嫁のTMなど。彼女らは、見ているだけで幸せな気分になる。
     

 記:2016.3.19 ガジ丸 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄語辞典』国立国語研究所編集、大蔵省印刷局発行