ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

かりゆしウェア

2016年06月17日 | 沖縄04行事祭り・生活風習・言葉

 6月4日、友人O夫妻の次男Kの結婚披露宴があり、私も招待された。披露宴への出席は友人K夫妻の三女のそれ以来、日記を調べると2013年10月5日以来。K夫妻の子供たち(4人いる)は彼らが子供の頃キャンプなどで一緒に遊んでいるからよく知っている。三女は御転婆タイプであったが、雛壇の彼女は見事な大和撫子であった。
 Kも彼が子供の頃からよく知っており、その披露宴に出席することに私は何の違和感もない。「心から喜んで出席します」という気分だ。披露宴には両親の友人も招待される。O夫妻もK夫妻も同級生結婚で私の高校の同級生、したがって、K夫妻の三女の結婚式では同級生が20名ほどいた。プチ同窓会にもなって楽しかった。今回の結婚式にも、新郎の父Oの話では同級生が10人余りは参加するとのこと。楽しみである。

 次男Kの結婚式、場所は那覇市、モノレール古島駅の近くにある結婚式場、私の家から車だと15分程度で行ける。直通のバスもあり、場所的には何の問題もない。場所に問題は無いが開始時刻に多少の問題がある。何と、開宴は昼の12時半。
 昼間から酒が飲めるのか?というと、たらふくは飲めないかもしれないが、ほろ酔い程度までなら飲める。歳とって肝臓が弱くなった今はそれで良い。問題は酒ではなく暑さ、6月の日中の暑さの中、スーツにネクタイでバス停まで歩く、のかと考えると、「いやいや、この暑さ(6月1日まで沖縄は真夏並みに暑かった)だと5分も歩けば汗びっしょりだぜ。宴会場で汗臭さ(加齢臭もあるし)を振りまくことになるぜ。」と思う。
 そんな時、渡りに船があった。宴に参加する友人の1人KSが私の家から車で5分くらいの所に住んでおり、「一緒に行くか?俺は車を出すから送って行くよ」との提言。宴の前にあれこれと計画もしていたが、その計画は中止し、彼の申し出を有難く受ける。
          

 その翌日、近所の先輩農夫Nさんから「今時の結婚式は、夏場ならかりゆしウェアでも良い」と、またも嬉しい情報を聞く。かりゆしウェアとは、見た目はハワイのアロハシャツのようで、沖縄の夏の正装として何年か前から認知されている服装。
 ちょうど、「かりゆしウェアの日」か何かで、かりゆしウェアの定義がラジオから流れた。それによると、「沖縄産で、沖縄らしい模様が描かれていること」とのこと。何はともあれ、スーツにネクタイに比べたら遥かに涼しい格好だ、それにしようと決める。
 その翌日、結婚披露宴2日前の木曜日の午前中、衣料品の量販店S屋へ行き、大人しい色目の1着をさっそく購入、4千円近くした。私の衣料品としてはだいぶ高め、ここ十数年でそんな高い衣料品を買った記憶はない。ジーンズだって2980だった。
 そこから畑へ向かう。下手糞だけど真面目な農夫は、雨が降っていなければ畑作業に精を出すのだ。運転中、信号待ちの際に買ったばかりのかりゆしウェアを見る。買う前に気付けば良かったのだが、遊びの場に来ていくにはまあまあカッコイイ柄だと思うが、結婚披露宴に着るには品が無いように感じた。「もうちょっと大人し目が良いな」と思い、進路変更し、衣料品も多く揃っている大型スーパーへ向かった。貧乏なくせに、もう1着購入しようと思ったのだ。結婚披露宴で着ても申し分ない上品なかりゆしを。

 Sスーパーの男性用衣料品のコーナーへ行くと、若い可愛いお姉ちゃんがいた。「若い可愛いお姉ちゃん」は私の好物なので、手招きして呼んで、
 「かりゆしウェアはどこですか?」と訊いた。すると彼女は、
 「こちらです。」と丁寧に案内してくれた。
 「結婚披露宴に着ていくものですが、あまり派手じゃない方がいいですよね?」
 「そうですね、全体に模様があるより一部にあるものが上品に見えます。」との助言を頂き、1着のかりゆしウェアを選ぶ。が、ハンガーにはLと表示があったが、見た目に小さい。若い可愛いお姉ちゃんがまだ近くにいたので確認すると、
 「あっ、商品はMサイズです。ハンガーの表示は間違いです。すみません。」と謝る。別に謝ることはないよと思いつつ、別の柄のものに手を伸ばそうとしたら、
 「この色柄で良いと思います。Lサイズの在庫があるか確認してきますので少々お待ち下さい。」と彼女は言い、少々待たせた後、同色同柄のLサイズを持ってきて、
 「試着してみますか?」と訊く。
 「いや、私は痩せているけど肩幅は普通にあるので肩幅が合えばいいよ」と応えると、
 「あててみますので、後ろを向いて下さい」と彼女は言い、シャツを後ろ向きになった私の肩にあて、肩越しに「いいです」と言う。それに、私はとても幸せを感じた。
 新婚ほやほやの女房と服を買いに行く。愛妻は私に似合う服を一緒に選んでくれ、「サイズはいいかしら?」と言いながら服を私の肩にあてる。そんな無い物ねだりの幸せな時間を私は妄想してしまった。その妄想を振り払って選んだかりゆしを購入。これも4千円近くした。1日で衣料品を8千円近く買う、そんなことたぶん、20年以上ぶり。
          

 12時、披露宴受付開始時刻に披露宴会場に着く。同じテーブルにいる同級生男子10人の内、スーツ姿は4人、普通のシャツが1人、かりゆしウェアは5人であった。宴が始まってしばらくしてから会場内を見渡すと、オジサンにかりゆし姿が多く見られたが、それでも半々くらい。若い人はオジサン世代よりかりゆし姿は少なかった。
 「今時の結婚式はかりゆしウェアで参加する方も多いです。」とSスーパーの若く可愛い親切なお姉ちゃんも仰っていたが、「多い」は多数派という意味ではなかったようだ。オジサンにかりゆし姿が多かったのは、若者より暑さに弱いからではないかと思う。その日は晴れて暑かった。会場内はクーラーが効いて涼しかったが、外に出ると真夏並みの暑さだった。そんな中、かりゆしウェアはとても楽であった。
 かりゆしウェアは結婚披露宴の席よりもむしろ、告別式など法事の際に多く見られる。それはもう、「それでよい」と告別式の慣わしとして定着している感がある。黒い薄手のシャツで、長袖も半袖もある。これも夏場はとても助かる。
 ちなみに、かりゆしは広辞苑にも記載があり、「(嘉例吉の意)沖縄で、めでたいことや幸せをいう語。」とある。沖縄ではカリー(嘉例)が乾杯の音頭にもなる。
          

 記:2016.6.8 ガジ丸 →沖縄の生活目次