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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

感服の演技『洗骨』

2019年04月26日 | 通信-音楽・映画

 イオンライカムは4年ほど前(2014年)オープンしているが、オッサンの私には特に興味なく、去年3月、今の住まいに越してからは畑を辞めたので時間はたっぷりあり、前の住まいからは車で片道40~50分かかるほどの距離だったのが、新居からは15分ほどとなったので、いつでも行けるようになったのだが、周りのオバサンたちに訊くと、「オッサンが1人で行っても楽しくないよ」と助言もあって、長く遠慮していた。が、
 「オッサンが行っても楽しくないよ」というイオンライカムに先日1人で出かけた。感性において信頼できる友人から「映画『洗骨』は面白かった、観た方がいいよ」と勧められ観に行くことにした。私がいつも行っている映画館ではやっていない。調べると、大手のシネマコンプレックスのいくつかでやっている。その中で最も近い場所にあるのがイオンライカムの中にあるシネコン。映画に限ればオッサンが行っても楽しかった。

 「洗骨」は『沖縄大百科事典』に記載がある。要約すると、
 墓地である期間経過した遺骨を取り出し、洗い清める改葬儀礼のこと。
 行われる時期は一定していないが、全島的に見た場合、次の2点が最も支配的。
 1、死者が出た場合、墓の中に既に安置されている遺骸を移動させる時に洗骨。
 2、白骨化を待って洗骨する。死後3~7年の間に行うことが多い。
 久高島では12年に1度の寅年と定められ、一斉に行った。
 旧暦7月7日の七夕の日に行うのが一般的慣習であった。
 洗骨儀礼に参加するのは親戚に限られる。
 実際に遺骨を清めるのは肉親の婦女子で、男子は傍で見守っている。
 洗い終わった遺骨は、墓堂奥深く安置する。その際、厨子甕に納めることもある。
 その呼称(洗骨の沖縄語での呼び名)はいろいろあり、シンクチ、アライン・・・ハルジューコーなど15種が紹介されている。ちなみに、厨子甕は大きな骨壺。

 洗骨と共に風葬のことも説明が必要であろう。何しろ、火葬して灰にしてしまうと洗骨のしようがない。同じく『沖縄大百科事典』の記事を要約すると、
 風葬とは、遺体を原野、海辺、樹上、洞穴などに置いて自然に白骨化させる葬法。
 墓堂の中で自然に白骨化させることも風葬に含まれる。(映画ではそうやっていた)
 風葬のことは沖縄語でシルヒラシという。シル(汁)ヒラシ(干らす)という意。
 沖縄島では戦後に火葬に代わったが、周辺離島や宮古八重山ではなお続いているところがあるとのこと。『沖縄大百科事典』は1983年の発行、今でも風葬があるのか、洗骨があるのかどうか疑問であったが、映画を観ると粟国島ではまだあるようだ。
     

 さて、映画『洗骨』、泣いて、笑って、泣いて、感動して私は大満足の2時間だった。実力ある大ベテラン俳優を評価するなど僭越だとは思うが、主人公の奥田瑛二には感服。根性無しでだらしなくて弱虫のオッサン、でも情は一杯持っているいかにもウチナーンチュのオッサン、あんなにガブガブ泡盛飲むオッサンは少ないと思うが、目の奥に知性が光るオッサンも沖縄には稀だとは思うが、とてもリアルに私の身近に感じた。
 あれこれの挿話も面白い・・・などと素人の私が批評する必要もない良い映画でした。
     

 記:2019.4.26 島乃ガジ丸

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行