潮を望む
潮という字を広辞苑で引くと5つの意味があり、良く知られているのは「潮の満ち干」の潮、「潮の流れ」の潮、それから「潮時」の潮があり、これらは私も知っている。
潮時とは好都合の時、良い機会ということで、「もう諦めろバカ、相手は妊娠しているんだぞ、ここいらが独身を卒業する潮時だぜ」なんていう風に使う。
「望む」という言葉を広辞苑で引くと3つの意味があり、「遠くからながめやる」、「願う。欲する。期待する」、「仰ぐ。慕う」とある。1は一望、2は希望、3は望郷などといった熟語がある。「丘に登ると眼下に町が一望できた。ここも漁師町、帰りたいと希望している故郷の景色に良く似ていた。望郷の念がさらに増した」などと使う。
表題の『潮を望む』そのものは広辞苑に無いが、「潮」と「望む」それぞれの意味を組み合わせていくつかの文が作れる。例えば「潮時を期待する」といったもの。「待てば海路の日和あり」みたいな意味になる。季節季節に天気と畑を眺めながら「種播きの潮時、収穫の潮時」を待っている。農夫の私にとってはそれが『潮を望む』の第一義。
シオマネキを広辞苑で引いたら「潮招き」という漢字表記もあったが、別に「望潮」ともあった。望潮と書いてもシオマネキと読むようだ。潮の引いた砂浜で、シオマネキは大勢でハサミを挙げ、沖に向かってオイデオイデしている。「潮が満ちてくるのを願って」いるのであろう。彼らとってはそれが『潮を望む』の第一義だと思われる。
オキナワハクセンシオマネキ(沖縄白線潮招き):甲殻類
スナガニ科の甲殻類 琉球諸島以南、南太平洋に分布 方言名:カタチミガニグヮー
名前の由来は『沖縄海中生物図鑑』に「甲は淡青色で白い横線が数本走る」とあり、白い線なのでハクセン(白線)なのであろう。オキナワは、日本では琉球列島以南に分布することからであろう。シオマネキは広辞苑にあり、「干潮時に大きな鋏を上下に動かすさまが潮を招くように見えるからいう」とのこと。ちなみに、シオマネキは望潮とも書く。
方言名のカタチミガニグヮーも解りやすい。カタは片、チミは爪、ガニは蟹、グヮーは小と書いて「小さいもの、可愛らしいもの」を表す。片爪の小さな蟹となる。
その爪、蟹を食用とする場合は爪でいいが、学問的には鋏(はさみ)と言う。雄の鋏が片方だけ大きく、その鋏を上下に大きく振る。ちなみに、雌は左右とも小さい。
甲幅18ミリていどの小さなカニ。河口や内湾の比較的硬い砂泥地に生息。
記:2013.7.21 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『沖縄釣魚図鑑』新垣柴太郎・吉野哲夫著、新星図書出版発行
『水族館動物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団監修・発行
『磯の生き物』屋比久壮実著・発行、アクアコーラル企画編集部編集
『沖縄海中生物図鑑』財団法人海中公園センター監修、新星図書出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『サンゴ礁の生き物』奥谷喬司編著、株式会社山と渓谷社発行