ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

風の谷の投資家

2012年10月12日 | 通信-その他・雑感

 仮に借りている300坪の畑はいつも風が吹いている。夏、近所で農夫をやっている爺様が来て、木陰でユンタク(おしゃべり)している時もサラサラと風が流れた。
 「ここはいいなぁ、風があって涼しいよ、昼寝しに来ようかなぁ。」と爺様が仰るくらい、夏でも木陰に入れば涼しい風を感じることができる。「いつも風が吹いている」は7月からこれまでの私の実感だが、おそらく年中そうであろうと想像できる。

 300坪の畑は「なっぴばる」と名付けている。なっぴばるは西原町にあり、東南へ2~3キロ行くと太平洋となる。南西側は道を隔てて小高い森、その道は北西へ向かって上り坂となっておりその先は丘、東北側も3~40m先は丘、つまり、なっぴばるは南西、西北、北東の三方を丘に囲まれた谷となっている。そこへ東南側、太平洋からの風が流れ込んで、丘の間を通って凝縮され、「いつも風が吹いている」になっていると思う。

 風の谷のなっぴばる、夏の間はサラサラと吹いていた風が、秋になってからはビュービューと吹くようになった。畑小屋の前、雨除けに張ってあるブルーシートがバタバタと大きな音を立てて激しく揺れる。テーブルの上に置いてあった壁板用の薄い木材が吹き飛ばされる。屋根にトタンを貼る作業もトタンが飛ばされそうになるので危険。
 昨日(11日)も風が強かった。畑小屋に使う木材は、防腐処理するためにバーナーで焼いている、いわゆる焼き杉にしているわけだが、風が強いとバーナーの炎が強さも方向も一定しない。で、左手に板を持って風除けにしながらバーナー作業をしていた。その時突風が吹いて、左手の板が飛ばされ、左手薬指をバーナーで焼いてしまった。径1センチに満たない範囲だが、肉まで焼く重度の火傷となった。

  風の谷のなっぴばる、日常の風でそうなるのだから台風になると偉いこっちゃとなる。素人大工の未熟さからくる強度不足もあって、畑小屋が10mも吹き飛ばされた。修復する(台風前の状態に戻す)のに10日間かかった。
 7月の終わり頃に始めた畑小屋作成、その後の台風対策、修復まで本来の畑仕事をほっぽり出して畑小屋にばかり労力と時間と金を費やしている。じつは、9月中にはホウレンソウ、シマニンジン、レタス、シマラッキョウなどを植え、10月にはジャガイモ、ウズラマメなどを植える予定であった。何一つやっていない、どころか、草刈りも、畝作りさえもやっていない。何の目的で畑を借りたのやら分からなくなる。

 腰を痛めながら手作業で草刈りし、腰に負担を掛けながら手作業で耕し、これから種を植え、水や雑草の管理を続け、数ヵ月後には収穫する。何の目的で畑を借りたか?と問われれば、作物を収穫するためである。ただし、無農薬無肥料での野菜作りだ、作物が実るかどうか大いに不安を持っている。実るかどうか不安を持っているものに対し、私は時間とお金と労働を投資しているわけだ。下手な投資家なのかもしれない。
 何の目的で畑を借りたか?・・・究極には自給自足のためとなる。自給自足できるかどうかも自信があるわけでは無い。できるかどうかの実験である。成功するかどうか不安のある実験に対し、風の谷の投資家は時間と労働を投資している。あー、どうなるやら。
          

 記:2012.10.12 島乃ガジ丸