ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

田中一村 亜熱帯の画人

2012年04月27日 | 通信-文学・美術

 私は高校生の頃、美術クラブに1年半ほど在籍していた。その間、油絵は確か3枚、水彩画は十数枚描いている。美術クラブは部員同士の仲が良く、男女の仲も良く、卒業生達も折々に顔を出し、彼らとの仲も良かった。なので、平日に限らず、休みの日にも部室に集まって、ユンタク(おしゃべり)し、それぞれ絵を描いたりなどしていた。
 夏休みには沖縄の風景スケッチを目的として、沖縄島のヤンバル(中北部の通称)や慶良間諸島、久米島などへ合宿をした。春休みも冬休みも部室へ集まった。で、各人、先輩達から教えを請うたり、それぞれが思うがままに美術に取り組んでいた。
 一年半もの間、休みの日も部室に通い、合宿にも参加しておいて、それで、油絵3枚、水彩画十数枚しか描いてこなかったのか?と思われるかもしれないが、一年半の製作活動のほとんどを私は土いじりに励んでいた。轆轤(ろくろ)を回し、碗、壺、皿などを作っていた。絵付けして、焼いて、出来上がった楽焼の作品は、記憶は定かでないがたぶん30を超えたと思う。ただ、一つも残っていない。残す程の出来では無かったようだ。そういえば、油絵も水彩画も残っていない。惜しいとも思っていない。

 そういった過去(作品の出来が悪いという過去では無く、美術クラブにいて美術製作に励んでいたという過去)もあって、私は美術が好きである。旅に出ると各地の美術館を観て回るのを趣味にしている。東京でピカソ展があると知ると、わざわざそのためだけに東京へ行った(その時は金があった)こともある。好きな芸術家も何人かいる。ピカソの他にはゴヤ、マチスなど。日本人では熊谷守一、・・・以外思い出せない。
 いや、もう一人いる、田中一村。ただ、田中一村はその作品の現物を見たことが無い。図書館にある画集を見ただけだ。その画集も偶然手にしたわけでは無い。もう20年以上も前になるか、NHKの『日曜美術館』で紹介されているのを観て興味を持った。その後になると思うが、鹿児島の友人Nも絶賛していたのを覚えている。
 テレビで紹介されているのを観て興味を持ったのは、そういえば熊谷守一もその一人である。熊谷守一展があると知って旅をした覚えがある。記録を調べてみると2004年のことであった。ついでに調べると、ピカソ展は2000年のことだ。

  さて、田中一村、テレビに映るのを見ただけで興味を持ったのには訳がある。彼の絵には亜熱帯の風景が描かれてあったから。「あっ、沖縄だ」と思ったから。沖縄の絵描きのことをあまり知らないので、これは私の不見識なのかもしれないが、亜熱帯の気分をこれほどしっかり表現した絵を私はそれまでに観たことが無かった。
 芭蕉、アダン、ソテツなどといったいかにも亜熱帯の植物たちはきっと、他の絵描きたちも描いているに違いない。しかし、一村のそれらは「だぜ、芭蕉もアダンもソテツもそんな空気だぜ、そんなオーラを発しているぜ」と感じた。テレビに映るのを観ただけでそう感じた。「こりゃあ、いつか実物を見なきゃ」と思った。そう思ってから長い月日が流れて、今年(2012年)になって初めてその作品の実物を鑑賞する。沖縄の県立博物館で田中一村展が開かれている。4月14日、行った。久々の美術観賞となった。
 作品は初期の頃より晩年まで並べられてあったが、やはり、晩年の奄美時代の方に私は強く惹かれた。作品数はそう多くは無かったが、3時間観た。それほど良かった。
          

 記:2012.4.27 島乃ガジ丸


刺身3ソデイカ

2012年04月27日 | 飲食:飲物・嗜好品

 新顔のイカ刺し

 子供の頃、刺身と言えばマグロ、カジキ、イカ、タコの4種がほとんどであった。マグロもカジキもイカもタコも、いろいろ種類があるが、父も母も死んだ今、それぞれどの種類であったかはもう確かめようが無い。子供の脳にそれを覚える情熱も無かった。
 イカはしかし、おそらくクブシミ(コブシメ)であろうと思う。今の世、スーパーへ行ってイカの刺身を買おうと思ったら数種類が手に入る。県外産や国外産のアオリイカ、スルメイカなどもあるが、県産もある。
 県産のイカにはシロイカ、クブシミ、ソデイカがたいてい置いてある。シロイカはイカ墨汁にして美味であるが、じつは、刺身にしても最高と聞いている。私は食べたことが無い。何故無いのかというと、スーパーでシロイカの刺身が手に入らないからだ。シロイカは味の劣化が早く、釣り上げてすぐ(何時間かは不明)でないと刺身では食えないらしいのだ。クブシミもシロイカ同様、釣り上げた後早い時間でないと生では食えないらしい。クブシミについては別項に譲って、今回はソデイカ、ソデイカの刺身。

 沖縄産生イカの刺身というと、現在はほとんどがソデイカとなっている。ソデイカは和名、沖縄ではセーイカと言い、沖縄のほとんどのスーパーでは、その値札にもセーイカ、または漢字(当て字と思われるが)で成イカ、成烏賊などと書かれている。
 セーイカの刺身は美味しいと思う。であるが、若い頃、福岡で食ったスルメイカの刺身に比べれば格段と美味さは落ちる。しかし、それも理由がある。福岡で食ったスルメイカは生け簀で泳いでいたものを刺身にしたもの、切り身が皿の上で動いていた。それほど新鮮なものであれば美味いのも当たり前、セーイカもそのように食えば負けないはず。
 冷凍された(つまり、さほど新鮮では無い)セーイカでも刺身で美味い。解凍されたスルメイカの刺身も食ったことがあるが、その場合はセーイカに軍配を揚げたい。

 冷凍セーイカの刺身を食う時は、それを美味しく頂くにはちょっと工夫が要る。友人のE子は太っている。はっきり言う、太っている。別の言葉で言い換えれば、肥満である。悪口を言いたいわけでは無い。彼女が食いしん坊である、食いしん坊なので料理が上手ということを言いたい。つまり、日頃世話になっているので褒めているのだ。
 さて、冷凍セーイカの刺身を美味しく頂く時の工夫、これは料理上手のE子から教わったこと。E子の発見、発想だと思われる。飲み屋などでは見かけたことは無い。セーイカをごく薄くスライスするというひと工夫である。冷凍セーイカの短冊を、完全に溶けない内に包丁を入れると、薄切りにしやすい。フグ刺しほどに薄く切る、これは美味い。

 ソデイカ(袖烏賊):肉が食用
 ソデイカ科の軟体動物 世界の暖流域に分布 方言名:セーイカ、ナキイチャ
 名前の由来は広辞苑に「腕の保護膜は広く、袖のようになる」とあり、そこから来ているものであろう。方言名のセーイカは漢字で成烏賊とあるのを見たことがあるが、その由来については不明。大いに成長したイカという意味であろうか?もう一つのナキイチャは『沖縄大百科事典』に「慶良間諸島では海岸に漂着したソデイカを、泣くまねをしながら捕獲する習俗がある」とその由来があった。イチャはイカの沖縄発音。
 外套長70センチ内外、体重約3キロにもなる巨大なイカ。肉は厚く柔らかく美味。
      
 記:2012.4.16 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行