ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アバサー汁

2011年03月21日 | 飲食:食べ物(料理)

 アヴァのアバサー

 ある日、知人のGさん、その友人のNさんと三人で飲みに行く。私の家から徒歩10分ほどの場所にあるその飲み屋は、名前をアヴァといい、薬草料理を出してくれる店。アヴァは宮古方言で、「あら、まあ」とかいった意味。アバでは無くアヴァという表記にしたのは店の看板がそうだから。宮古人の発音を聞くと確かに、アバというよりはアヴァなのである。ママさんが宮古の人。その店のことは別項「薬草の飲み屋」に書いてある。
 
 その日そこで、私が頼んだウチナームンはアバサー汁。沖縄の汁物料理では足ティビチ汁、ソーキ汁、中味汁、イナムドゥチ、イカ墨汁、ミーバイ汁などと並んで、有名なマーサムン(美味しい物)。有名と言えば他にイラブ(ウミヘビ)汁があるが、ウミヘビの身はナマリブシのような味。ヘビの皮の鱗が見た目に気持ち悪い分、ナマリブシの方がずっと良い。イラブ汁には足ティビチも入っているが、足ティビチ汁でいいじゃないかと私は思う。でも、健康のために何かとても良いものが含まれているのだろう。食い物は味だけでその価値を判断してはいけないのだと思う。でも、私はあまり好きでは無い。

  さて、アバサー汁。アヴァのアバサー汁には小ぶりのアバサー(ハリセンボン)がまるごと一匹入っている。その顔が食べる人間の顔を睨む。でも、あまり気にならない。どころか、その顔を我々はしゃぶる。何しろアバサーは美味しいのである。
 アバサーについての詳しいことは、ちかいうちに「沖縄の動物アバサー」で紹介する予定であるが、大まかに言えば、アバサーと呼ばれるものは沖縄に4種あり、そのうちの2種がよく見られ、1種は和名ハリセンボンと言い、全長30センチ、もう1種はヒトヅラハリセンボンと言い、全長60センチほどのもの。両者ともサンゴ礁域に生息する。
 
 

 記:ガジ丸 2006.8.6 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


足ティビチ

2011年03月21日 | 飲食:食べ物(材料)

 チマグーでなけりゃ

 今でこそ、コラーゲンで美肌効果云々と、食べ物として多少は認められつつあるテビチであるが、今でもなお、ウチナーンチュでありながら「テビチは気持ち悪い」と言って食べない若い女性、あるいは若い振りをしているオバサンなども多くいる。
 食堂や居酒屋のメニューに「テビチ汁」とある料理は、豚足を昆布や大根などと一緒に煮込んだ汁料理であるが、正確には「ティビチ」と発音され、また、「ティビチ汁」ではなく、「足ティビチ」と呼ばれるものである。「ティビチ」とは肉と野菜を煮込んだ汁料理全般のことを指す。豚の足と野菜を煮込むから「足ティビチ」となる。

  このHPにたびたび登場する従姉は、ウチナーンチュでありながら足ティビチを嫌うオバサンの一人である。彼女はまた、山羊汁も嫌い、ゴーヤーも嫌っている。お陰で、彼女の息子や娘もそれらの料理が食えない。せっかくウチナーンチュとして生まれたのに勿体無いことであるとオジサンは思うのだが、従姉の息子が昔言った。「別にそんなもん食わなくたって十分幸せに生きていける」と。おっしゃる通りです。
 まあ、でも、沖縄の田舎に行って、土地のオバーと知り合いになって、「まあまあ、私の家においで、晩御飯食べていきなさい」と親切にされて、足ティビチを出された時に、それが美味しいと思うか、不味いと思うかでは幸せ度に雲泥の差がある。「土地のオバーに親切にされなくても十分幸せだ」と従姉の息子は言うであろうが。

  このHPにたびたび登場する三段腹E子は逆に、沖縄料理が大好きである。彼女は食べることだけで無く、作ることも好きである。その料理をたびたび私も馳走になる。彼女はもちろん、足ティビチも好きで、作る。彼女の足ティビチは正統派である。豚足の脚だけでは無く、足(つまり豚でいうと蹄)も使う。ウチナーグチではチマグーと言う。
 「はっさ、チマグーが一番美味しいさあ。できたらチマグーだけにしたいくらいよ」とE子は言い、チマグーだけの足ティビチを作ったりもする。それは私も旨いと思う。「チマグーでなけりゃ」と言うE子は、同級生の中ではきっと沖縄料理をよく知って、上手に作れる人トップ10に入るだろう。よく食べ、よく笑い、よくしゃべって、あと20年もすれば、彼女はきっと立派な「沖縄のオバー」となっているに違いない。
 
 

 記:ガジ丸 2006.7.14 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


モーウイ

2011年03月21日 | 飲食:食べ物(材料)

 次の沖縄野菜

 先週土曜日(8日)、脱サラ農夫のTが我が家にやって来た。用件は、その日の夜に予定されている模合(モアイ:理由のある飲み会)に参加できないということで、模合金(飲み会の理由の一つになっている)を私に預けることであったが、農夫らしく彼は、彼の畑で採れたオクラとモーウイを土産に持ってきてくれた。
 オクラが角オクラ、丸オクラ(沖縄在来種とのこと)合わせて20本ばかり、モーウイが大ぶりのを4本。沖縄の夏野菜でまず思い浮かぶのはゴーヤー、ナーベーラー(ヘチマ)などであるが、オクラも夏野菜としてよく知られている。それから、私はすっかり忘れていたが、モーウイ(赤ウリとか白ウリとか和語では言う)も夏野菜なのであった。

  旬のモーウイ、頂いて嬉しいのではあるが、しかし、4本はいかにも多い。毎日食べ続けても全部消費するのに2週間はかかるであろうと予想される。2週間毎日モーウイを食べ続けたら飽きるであろう。ひょっとしたら嫌いになるかもしれない。と思って、半分の2本は別の友人へおすそ分けした。残りの2本をあれこれ調理し、食う。
 スライスして、塩揉みして、ポン酢で食う。スライスして、塩揉みして、シーチキンと和えて食う。このシーチキン和えが存外に美味く、この2品で1本が消えた。残りの1本を、何にするかと考えながら水曜日の夜、皮を剥いていたら、大家さんが来た。畑から収穫してきたと言って、モーウイ2本を持ってきた。ありがたく頂く。
 Tから4本貰った時は多いと思ったのだが、1本を消費して、これはたくさん食えるぞと感じていたのだ。美味しいのである。去年までは塩揉みの仕方が悪いのか、水洗いが不十分だったのか、絞り方が緩かったのか判らないが、さほど美味しいものとは思っていなかった。だが、今年は美味い。私の調理方法が正しくなったのであろう。
 
 
  スライスして、塩揉みして、タコと和えて食う。スライスして、塩揉みして、塩茹でホタテを加え、マヨネーズで和えて食う。このホタテとのマヨネーズ和えは大ヒット。これでTからの2本は消えた。今朝、大家さんからの2本のうち、小さめのもの1本の半分をそぼろ餡かけで食う。これはイマイチであったが、モーウイを塩茹でしてからそぼろ餡と合わせると美味いのではないかと想像される。明日試してみようと思う。
 私の好きなウチナームンは数多くあるが、今年、モーウイがその上位に加わった。この美味しさはきっと全国にも広がるに違いない。ゴーヤー、ナーベーラー、シマラッキョウに続いてブームになる次の沖縄野菜になると、私は予想する。 
 
 
 
  

 記:ガジ丸 2006.7.14 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


沖縄おでん

2011年03月21日 | 飲食:食べ物(料理)

 コラーゲンたっぷり

 季節はずれとなってしまったが、今回紹介するのは沖縄のおでん。(イカ天、ゴボ天などかまぼこの)天ぷら、こんにゃく、ダイコン、コンブ、ジャガイモ、厚揚げなど倭国のおでんと変わらない具材も多く入っているが、沖縄ならではの珍しい具材があり、それがまた、沖縄おでんの味を東京おでんと違うものにしている。

 大学生の頃、帰省した時のある日、従姉の亭主に飲みに連れて行ってもらった。「桜坂に行く」と言う。若い私はとても期待し、胸をワクワクさせた。
  桜坂は戦後すぐから飲食店が集まり、大人の社交場となり歓楽街となった。当然、男の性的欲求を満たしてくれる店も多くあった。当時は(今でもそうかもしれない)まだ、そういう雰囲気を残しており、従姉の亭主がそういった店へ連れて行ってくれるのかと私は思って、胸をワクワクさせていたというわけである。
 ところが、そんな私の期待を一刀両断するかのように、彼が連れて行ってくれた店に若い女の子は一人もいなかった。オバサンもいなかった。どこからどう見てもオバーと呼ぶしかない年齢の女性が二人いるだけであった。「おでん屋さん」であった。

  それまで私は、沖縄のおでんというものを食べたことが無かった。私の母親は沖縄風おでんを作らなかったのだと思う。で、その時が私の沖縄おでん初体験。
 東京暮らしで、東京のおでんを食べ慣れていた私は少し驚いた。おでんの中に豚足が入っていたからだ。豚足から出たゼラチンでおでんの汁もどろっとしている。豚足から出た脂でこってりしている。他にも東京おでんでは見なかったものが入っている。ウインナーソーセージ、それから何とレタスが汁の上に浮かんでいる。
 「味は大丈夫かいな」と不安に思った私であったが、食べるとこれがじつに美味いのであった。特に豚足の味は格別。添えられたレタスも汁の旨みをたっぷり吸って美味しかった。厚揚げ、大根、こんにゃく、天ぷら(さつま揚げのこと)などは東京おでんの方が私の好みであったが、それはそれなりに別の味として美味かった。ウインナーソーセージもまた、焼いた方が私の好みだが、これもそれなりに美味かった。

 その後、沖縄おでんは、友人の家でご馳走になったり、居酒屋などでもたまに食べている。美味しいと思う。であるが、日本酒の好きな私はやはり、少なくとも日本酒を飲むときには沖縄おでんを好まない。あっさりした味のおでんを自作して食っている。
 
 

 記:ガジ丸 2006.7.10 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行


牛汁

2011年03月21日 | 飲食:食べ物(料理)

 亭主を牛耳る

 土曜日(13日)、模合(モアイ。女房にも文句を言われない飲み会)があった。そのメンバーの一人Yは、NHKのドラマ『ちゅらさん』で有名になった八重山小浜島の出身である。祭事などで、沖縄では山羊を潰す(食用にするために殺すこと)が、八重山では牛を潰すということを聞いていたので、その詳しいことについてYに尋ねた。
  行事、主に青年祭などの時に牛を1頭潰して、それを牛汁にして、皆で食べるとのことである。大鍋の中には、あらゆる内臓を含めた牛肉の他、冬瓜、人参などの野菜を加え、味噌で味をつけるとのことである。ちなみに、山羊汁は概ね味付けをしない。山羊汁をどんぶりに入れ、食べる人が好みで塩、しょうが、ヨモギなどを加える。
 ちなみに、八重山では馬汁も食うらしい。馬は牛より安いので、牛を買えない所得の人は馬にしたということである。作り方や加えるものは牛汁と同じ。

  沖縄にも牛汁はある。山羊汁は独特の臭みがあり、嫌う人も多いので山羊料理専門店みたいなのがあるが、牛汁は、どこにでもあるというわけでは無いが、普通の食堂にも置いてある。私の、金曜日の職場の近くに美味い牛汁を出してくれる大衆食堂がある。そこの牛汁、もう10年以上もご無沙汰していて、今もそうなのか不明だが、脂っこくて、量も多い。小さく弱くなった今の私の胃では、ちょっと食えそうも無い。ではあるが、今回はこの記事のために頑張って、挑戦した。・・・美味かった。が、・・・きつかった。

 5月5日、H夫妻と一緒に那覇ハーリー観戦に出かけた。食に対する情熱の高いH夫妻は、ハーリー観戦よりも立ち並ぶ屋台に興味があるようで、ほとんど全ての屋台を見て回った。そこでアグー(豚肉)を食い、ケンタッキーフライドチキンを食い、ビールを2杯(女房のE子は3杯)飲んで、もう十分に1日分のカロリー摂取が済んだ後のこと。
 Hが、「牛汁かヒージャー汁が食いたい」と言うので、その屋台へ入る。すると、E子は、そんな夫の意向をまったく無視して、隣の屋台からアグーの豚汁を買ってきて、「これが美味しいのよ」と言って、自ら食い、夫にも勧めた。豚汁を美味そうに食うE子の三段腹を眺めながら、「共食いしてらあ」と私は心の中で思いつつ、夫にあれこれ指図し、リードしていく様子を見て、「牛耳る」という言葉が頭に浮かんだ。

 「牛耳る」は、広辞苑によると「首領となって、ある人または組織を意のままに操縦する」とある。牛汁が食いたいと言う亭主をE子は牛耳るのである。自分の好む豚汁を食わせて、まさに、「夫を意のままに操縦」しているのであった。
 ちなみに、牛耳るは「牛耳を執る」と正確には言い、
 「(春秋戦国時代の中国で、諸侯の会盟に際して、盟主が牛の耳をとって裂き、その血をすすって誓い合ったという故事から) 同盟の盟主となること。転じて、団体・党派などを実力で支配することをいう。」(広辞苑)とのこと。
 
 

 記:ガジ丸 2006.5.19 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行