コラーゲンたっぷり
季節はずれとなってしまったが、今回紹介するのは沖縄のおでん。(イカ天、ゴボ天などかまぼこの)天ぷら、こんにゃく、ダイコン、コンブ、ジャガイモ、厚揚げなど倭国のおでんと変わらない具材も多く入っているが、沖縄ならではの珍しい具材があり、それがまた、沖縄おでんの味を東京おでんと違うものにしている。
大学生の頃、帰省した時のある日、従姉の亭主に飲みに連れて行ってもらった。「桜坂に行く」と言う。若い私はとても期待し、胸をワクワクさせた。
桜坂は戦後すぐから飲食店が集まり、大人の社交場となり歓楽街となった。当然、男の性的欲求を満たしてくれる店も多くあった。当時は(今でもそうかもしれない)まだ、そういう雰囲気を残しており、従姉の亭主がそういった店へ連れて行ってくれるのかと私は思って、胸をワクワクさせていたというわけである。
ところが、そんな私の期待を一刀両断するかのように、彼が連れて行ってくれた店に若い女の子は一人もいなかった。オバサンもいなかった。どこからどう見てもオバーと呼ぶしかない年齢の女性が二人いるだけであった。「おでん屋さん」であった。
それまで私は、沖縄のおでんというものを食べたことが無かった。私の母親は沖縄風おでんを作らなかったのだと思う。で、その時が私の沖縄おでん初体験。
東京暮らしで、東京のおでんを食べ慣れていた私は少し驚いた。おでんの中に豚足が入っていたからだ。豚足から出たゼラチンでおでんの汁もどろっとしている。豚足から出た脂でこってりしている。他にも東京おでんでは見なかったものが入っている。ウインナーソーセージ、それから何とレタスが汁の上に浮かんでいる。
「味は大丈夫かいな」と不安に思った私であったが、食べるとこれがじつに美味いのであった。特に豚足の味は格別。添えられたレタスも汁の旨みをたっぷり吸って美味しかった。厚揚げ、大根、こんにゃく、天ぷら(さつま揚げのこと)などは東京おでんの方が私の好みであったが、それはそれなりに別の味として美味かった。ウインナーソーセージもまた、焼いた方が私の好みだが、これもそれなりに美味かった。
その後、沖縄おでんは、友人の家でご馳走になったり、居酒屋などでもたまに食べている。美味しいと思う。であるが、日本酒の好きな私はやはり、少なくとも日本酒を飲むときには沖縄おでんを好まない。あっさりした味のおでんを自作して食っている。
記:ガジ丸 2006.7.10 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行