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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

コバノランタナ

2017年09月10日 | 草木:低木

 従姉夫婦が数年前に別荘を建てた。別荘といっても海辺や山の中といった遊びや休暇のための別荘では無く、場所は市街地で、老夫婦が老後を楽しむための趣味の拠点、あるいは、家庭菜園をやるための畑小屋といったようなもの。

 建てる前に従姉から相談を受けた。当初の要望はまったく畑小屋が目的だったので、私の友人の建築士に頼んで、建築費4、5百万の小屋を設計してもらったのだが、その後、話が紆余曲折して、建築士も別の人に変わって、出来上がったものはリビング、台所、風呂場、茶室、倉庫等が螺旋状に並んだ不思議な形のコンクリート構造物であった。かかった費用も、小屋と呼ぶにはまったく不似合いな値段となった。
 菜食主義者で、インド大好きの建築士が設計した構造物は平屋。リビングと台所は地面より少し上がった高さにあり、そこから螺旋を進むにつれて下りていき、茶室と倉庫は半地下の位置にある。屋根もまたそれに従って下がっていき、一番奥の倉庫の辺りの屋根は地上から1mほどの高さ。その辺りは土を盛り上げてあるので、地面と屋根の段差は50センチほど。庭から少し坂を上って倉庫の屋根に上り、そこからさらに、ゆるく左にカーブしながら坂を上って行くと、一番手前のリビングの屋根に辿り着く。

 屋根には全面、土が盛られており、植栽できるようになっている。建ってから2、3年過ぎた頃、屋根の土面の3割方はまだ植栽されておらず、リビングの屋根の辺りは剥き出しの土のままであった。その下の壁に雨が降った際に撥ねたであろう赤土(屋根に盛られたもの)による汚れが目立つようになった。その対策を頼まれた。
 土跳ねを防ぐには裸土の部分に芝を貼るのが常套手段だが、芝は管理(老夫婦はたぶんやらない)が面倒なので、ムラサキランタナを屋根の縁沿いに植栽することにした。ムラサキランタナは枝が下垂するので、見た目にもきれいになる。そして、時が流れ、今、ムラサキランタナは順調に生育し、花の盛りの頃は道行く人の目を楽しませ、近所の評判も良く、従姉夫婦もご満悦、という結果になっている。
 
 コバノランタナ(小葉のLantana):生垣・刈込・鉢物
 クマツヅラ科の常緑低木 分布は南アメリカ 方言名:なし
 名前の由来について資料は無いが、ランタナの仲間で、ランタナより葉が小さいのでコバノ(小葉の)と付いた、で間違いないであろう。確かに、葉は小さい。別名にコバノシチヘンゲ、ムラサキランタナとあるが、ムラサキランタナは花色から。
 コバノランタナは同じランタナ属だが、ランタナやキバナランタナとは種が違う。高さ30センチほどで、ランタナ属の中では最も小さいとのこと。茎は細く、匍匐する性質があり、適宜剪定を行えば、こじんまりとまとまってくれる。
 花色は紫ランタナという通称の通り紫から赤紫、または桃色。開花期について、4月から11月と書いてある文献もあったが、「周年開花で、特に冬場(沖縄の冬)の11月から3月頃に多くつける」としてあるものもあった。私の感覚では後者の方が正解。その時期、満開になった本種を見ている。樹冠を覆うほどの咲きっぷりで、きれい。
 性質は強く、強剪定にも耐える。樹形が乱れやすいので適宜剪定を行う。縁取りや塀隠しに利用でき、グランドカバーとしても使える。花色は変化しない。
 学名はLantana montevidensis
 ランタナは、Lantana camara

 訂正加筆:2011.5.14

 記:島乃ガジ丸 2004.10.29 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行


コバノミヤマノボタン

2017年09月10日 | 草木:低木

 ヤマトゥンチュ(大和人)のくせに沖縄の植物や焼き物が好きだというT女史は、東京の高円寺で工芸雑貨店を経営しており、今年(2011年)7月の下旬、読谷の「やちむんの里」でやちむん(焼き物:主に食器)を仕入れる目的で来沖した。
 ヤマトゥンチュのくせに沖縄の民俗文化に関心があり、その著作もある東京在のIY氏に紹介されて、T女史の滞在中のお世話をすることになった。「焼き物が好き」については私もまぁまぁ好き、「植物が好き」については私も大いに好きなので、2日間、運転手を兼ねて彼女に付き合ったが、もちろん、その間ちっとも退屈しなかった。
 「やちむんの里」でやちむんを仕入れるのがT女史の、来沖の第一の目的で、観葉植物のナーセリー(苗畑という意味らしい)見学が第二の目的で、ヤンバルの山を散策したいというのが第三の目的。第一、第二は取りあえず置いといて、

 ヤンバルの山散策は往復約3時間で済ませた。真夏の山歩きはきつい。うっかりすると熱中症になる。下手すると、疲れのあまり夜の酒が飲めなくなる。で、適度に疲れた辺りで切り上げたわけ。セマルハコガメに会えなかったのは残念であったが、その代わり、いくつかの珍しい植物に出会えた。T女史も満足したと思われる。
 いくつかの珍しい植物の内、与那覇岳入口で見つけたのがコバノミヤマノボタン。最初からそれであると判ったわけでは無い。ノボタンの類であろうとは想像できたが、見知らぬ植物であった。写真を撮って後日調べて判った。
 文献によるとコバノミヤマノボタン、なかなか珍しい植物のようで、出会えたことはラッキーだったようだ。ちょうど花の時期であったことも重ねてラッキーだった。
 
 コバノミヤマノボタン(小葉深山野牡丹):添景・鉢物
 ノボタン科の常緑低木 沖縄島北部に分布 方言名:なし
 名前の由来は資料が無く正確なところは不明だが、ノボタンに比べて葉が小さいのでコバ(小葉)、山地に生息するのでミヤマ(深山)、ノボタン科なのでノボタン(野牡丹)であろうと、その名前から容易に想像が付く。
 ノボタン科であるが、ノボタン属では無くハシカンボク属に属する。ノボタンは花弁が5枚であるが、ハシカンボクと本種は4枚と違いがある。
 高さは1mほど。花は清楚で美しく、庭の飾りに適しているが、現在では自生の数も少なくなってきており、絶滅危惧種にもなっているらしい。沖縄島の固有種で、北部の山地にのみ生育するとのこと。ヤンバルの山で細々と生きている可憐な美女のようなもの、そこで絶えることが無いよう、そっとしておきましょう。
 花は淡紅色と文献にあり、文献の写真はその通りなのだが、私が見たものは淡紫といった方が近い個体だった。個体によって多少の違いがあるのだろう。ノボタンよりはずっと小さく、ハシカンボクよりはちょっと大きめの花、開花期は6月から7月。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2011.8.5 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行


コバノセンナ

2017年09月10日 | 草木:低木

 センナと名のつく植物は、沖縄の緑化植物として何種類か紹介されている。『沖縄の都市緑化植物図鑑』にはモクセンナ、コバノセンナ、ハナセンナ、ハネセンナ、フタホセンナの5種類ある。これらの全てはマメ科のカッシア(Cassia)属、和名だとカワラケツメイ(河原決明)属に含まれている。文献によってはセンナ属と書いているのもある。
 河原決明とはなかなか面白い名前、「かわはらけつめい」と読むと、何だか強そうな武士のような名前だ、その所以が知りたくなるが、これは後日ということにしよう。カワラケツメイはマメ科の一年草。沖縄にあるかどうか、私は見たこと無い。
 コバノセンナ、ハナセンナ、ハネセンナ、フタホセンナの4種は高さがせいぜい3mに留まる低木で、潅木状になり、刈込みして生垣に用いたりできる。だが、モクセンナはもう少し大きくなり、木立性となる。庭木としては中木に分類されるので別項で紹介する。同じカッシア属には、既に紹介したナンバンサイカチもある。これは大木となる。
 低木のコバノセンナ、ハナセンナ、ハネセンナ、フタホセンナのうち、コバノセンナとハナセンナはよく似ている。葉先が尖っているか丸っこいかで私は判別した。
 
 コバノナセンナ(小葉の旃那):添景・生垣
 マメ科の落葉低木。原産分布は南アメリカ。方言名:なし
 センナが広辞苑にあった。「中近東原産の薬用植物。高さ約1メートル。・・・秋、5弁の黄色花をつける。果実・葉の浸剤しんざいを健胃剤・下剤とする。」とのこと。センナという名前はおそらくSennaという学名から。本種はそれと同属であることからセンナで、葉が他のセンナより小さいことから小葉とつく。旃那はおそらく漢名だと思われる。
 萌芽力が強く、多く分枝し長く伸びる。長く伸びる枝は横に広がる性質があり、適宜剪定を行わないと狭い場所ではうるさく感じるようになる。高さは2m前後。
 センナの類の多くは鮮やかな黄色の美しい花をつける。葉が他のセンナより小さいので“小葉の”センナとのこと。開花期は10月から12月。
 学名はCassia coluteoides Colladon
 
 花
 ちなみに、他のセンナの学名と開花期は以下。
 
 ハナセンナ(花旃那)
 Cassia corymbosa Lam. 開花期は10月から11月。
 ハネセンナ(羽旃那)
 Cassia alata L. 開花期は7月から10月。
 フタホセンナ(二穂旃那)
 Cassia didymobotrya Fresen. 開花期は10月から11月。
 モクセンナ(木旃那)
 Cassia surattensis Burm. F. 開花期は5月から6月、及び10月から11月。
 
 訂正追記:2011.2.1  さらに追記:2018.10.10

 記:島乃ガジ丸 2005.4.17 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行


コデマリ

2017年09月10日 | 草木:低木

 以前、職場の事務員をしていたAさんは、若くて、可愛くて、見た目はすごく真面目そうな人であったが、しかし、チャランポランな性格であった。
 「Aさん、飲み会を計画しているけど、参加するかい?」
 「うん、行く、行く。今週はだめだけど、来週なら空いている。」
 「それじゃあ、来週の土曜日にしようね。」
 「はい、楽しみにしています。」
というやりとりがあって、その土曜日、一週間延期したにも関わらず、皆がそれぞれ都合をつけて集まった飲み屋に、彼女は来なかった。ドタキャンでは無い。彼女からは何の連絡も無かった。彼女の先輩たちは皆、すっぽかされたのであった。
 翌週の月曜日、彼女から何らかの謝り、言い訳の言葉があるのかと思っていたのだが、飲み会のことなんか全く記憶に無いかのように、平然として、何の話も無かった。「オメェが言うから一週間延期したんだぜ!」と腹を立てている私であったが、あまりにも平然としている彼女を見て、問い詰める意欲を失くしてしまった。
 それから数ヵ月後、彼女は会社を辞めて、数週間後には「結婚しました」との報告があった。ならば彼女は、飲み会の頃は恋愛中だったのであろう。職場の飲み会なんかより、恋人と一緒にいることがはるかに楽しく、大切だったのであろう。納得。
 「結婚しました」報告からしばらくして、私の金曜日の職場に彼女がやってきた。金曜日の職場の隣は産婦人科となっている。そこに用事があって、そのついでとのこと。チャランポランも母親になるとのこと。ニコニコして、いかにも幸せそうであった。

 その産婦人科の玄関前にコデマリの木がある。毎年花を咲かせてくれるが、去年まではそれがコデマリだとは思わなかった。倭国を旅して、コデマリの、名前の通り毬状にかたまった花が、枝に一杯付いているのを見知っている私は、ちょぼちょぼとしか花の付いていない産婦人科の植物がコデマリとは気付かなかったのであった。今回じっくり観て判った。毬状とは言い難いが、花の一つ一つはコデマリ。葉の形状もコデマリであった。
 
 コデマリ(小手毬);添景・生垣
 バラ科の落葉低木 原産地は中国 方言名:なし
 枝先に白い小さな花が20個ほどかたまってつき、丸い形状となる。それが小さな手毬のように見えるところからコデマリという名前。
 成長は早いが、高さは2mほどに留まり、庭の添景として使い良い。根際から多数の枝を出し、長く伸びる。枝は細いので上部では弓状に曲がる。曲がったその先に花を上向きにつける。本土では白い手毬が樹冠一面に付き、美しい景観となるが、沖縄ではあまり花付きは良くない。毬状についたものを、私は見たことが無い。開花期は3月から5月。
 「日本へは古い時代に中国から渡ってきて観賞用に栽培された」と文献にある通り、名前はごく有名で、本土では民家の庭や公園で実物もよく見かける。沖縄でも時々見かけるが、花付きがよくないせいか、そう多くは無い。
 
 花

 記:島乃ガジ丸 2006.4.18 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


コダチヤハズカズラ

2017年09月10日 | 草木:低木

 毎週金曜日だけの職場は、何年か前までは私がやるべき仕事も、仕事として十分にあったのだが、今は業務縮小して、私の仕事はほとんど無い。無いが、出勤している。暇なのを幸いにと、趣味であるガジ丸HP作りに、その1日のほとんどの時間を使っている。
 その職場の近くに宜野湾市役所がある。市役所には銀行のATMがあって、以前は金をおろしに月に一回はそこへ行っていた。
 職場は市役所の裏手にあって、市役所へはたいてい裏門から入る。裏門手前の左手の花壇には紫色の朝顔みたいな花をつける木がある。私もよく知っている木、名前をコダチヤハズカズラという。コダチ(木立)でカズラ(葛)というややこしい名。
 ややこしいというのは、たとえば、四角い三角定規とか、赤い白木蓮とか、大きな小箱とかいった矛盾する表現が、コダチとカズラの間にはあるからだ。コダチ(木立)というのは、ケヤキやらクスノキやらといった幹のしっかりしたもの、カズラ(葛)はツル性の、幹のはっきりしないものをいう。したがって、コダチとカズラが名前にあるということは、その植物が、幹のはっきりしない幹のしっかりしたものであるという表現となる。ややこしい。
 ややこしいのではあるが、ウチナーンチュ(沖縄人)らしくテーゲー(大概)で考えるとややこしくはなくなる。元に三角という名の定規があって、それが四角い。元に白木蓮という植物があって、それが赤い。元に小箱という箱があって、それが大きい。・・・などと同じ考えで、元にヤハズカズラというツル性の植物があって、それが木立性になっているもの、と思えば実に簡単なこと。そして、実際に、コダチヤハズカズラはそうなのである。
 矛盾なんてのは、ある一方向から見たらそうなのであって、別の角度から見れば矛盾でなくなる場合もある。平和を祈願して靖国を参拝する気持ちが、別の方向から見れば、戦犯を称えているようにも見える。コダチヤハズカズラの名前から、そんなことまで思いが至った。
 
 コダチヤハズカズラ(木立矢筈蔓):添景・生垣
 キツネノマゴ科の常緑低木 原産分布は熱帯西アフリカ 方言名:無し
 コダチ(木立)とあるからには木立でないものもある。園芸店でよく見かけるツンベルギアがそうであるようにコダチの付かないヤハズカズラはつる性の植物で花色は黄色。
 園芸店ではしかし、このコダチヤハズカズラもツンベルギアという名で売られている。こっちの方はその名の通り木立性。花はアサガオのような形の青、黄、白の三色模様。いっぺんにたくさんの花をつけることは少ないが、年中ちらほらと咲いている。
 高さ1~2mに止まり、分枝力が強く、強剪定に耐えるので、低木生垣に向く。ただ、日陰に置くと花つきが悪くなるので、よく日の当る場所を選ぶ。
 ちょっとややこしいが、コダチヤハズカズラがヤハズカズラ属で、ヤハズカズラはツンベルギア属。兄弟とは言っても、庭での使い方は違うので区別しておく。
 
 白花種
 
 白花種の花

 記:島乃ガジ丸 2005.5.28 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行