きっちりと物事に取り組んでいたなら、できていたことでも、いわば「手抜き」をしていると、身につかないというか、勉強したといっても、その大半が記憶に残らずじまいという、様相を呈している。
忘れることには、そのかわりに自信があって、嫌なことには、こだわらずにおれる傾向がある。これはいいことであると思っているが、映画をみても、本を読んでも、一度だけだと、情けないほど覚えていない。
大江健三郎さんの読書というのは、キチンと記憶がなければ、読んだとはいえないとあったが、ご母堂から、そう言われていたらしい。大江さんは、読書をそう定義しているのである。
この定義に従えば、小生の場合は、今まで、一冊の本も読まなかったことになる。だが、それでも痕跡ぐらいは残っているかもしれないと思って、自分を慰めるのだが、如何せん人の能力差があることを認めないわけにはいかない。
といいつつ、この忘れるということで、映画など、何度みても発見があり、筋など頭にはいっていても、退屈せずに見られるのは、有難いことでもある。「ショーシャンクの空に」など、何度みても面白くて、WOWOWあたりで、よく見た。
塗り物など、一挙に仕上げ塗りではなく、うす塗りをして、乾かしたあと、何度もその上に塗り重ねて仕上げていく工程があるようだが、これと似ているような気もする。