IMAXとやらの、すさまじい音響の映画であった。むかし、ときどきフイルムが切れて、「ちょっとまった」という時があったのだが、今日、ほんとに久しぶりに、上映中に、突然画面がとぎれるという、そんなシーンがあった。画面が空白となり、なにかの演出かと思ったものの、ちょっと長すぎる。どうやら、事故のようだ。
観客の一部で、「一番ええとこなのに・・」と何度も繰り返す声が聞こえる。人間のやることだ、ミスは当然、そんなことはあたりまえだ、文句をいう方が馬鹿だ、と思いつつ事態の進行をまつ。
当方としては、珍しいできごとに、むしろ、どう処置するのだろうか、どうなるのだろうかの期待感の方が強い。
案の定、映画館の「エライさんとおもわれる人」が、スクリーンの端にたって、おわびの声を、肉声で告げた。原因がなにかわからないだろうし、彼の心情がおもいやられる。だが、さすが、幹部社員。涼しい声で、お詫びをし、原因についてはふれないけれども、動転してはいない。
まもなく再開できるとなって、少し遡って、再開するとの告知。場面がコンサート最中なので、大音響で再開となる。いささか、生理的にはショックがあるが、もうラスト近くということは察知できるので、そこは我慢、そして、つつがなく、結局、ラストまで上映された。
映画は、力作と思う。ミュージシャンの伝記とみたが、映画自体は、良かったと思う。ミュージックに、これだけの力のあることを教えてくれた。だが、当方は、もう年だろうか、画面の観客のようには、乗り切れない。覚めたままである。それでも刺激はあった。
それはともかく映画が終わって、くだんの「エライさん」は、スクリーンわきで、観客の一人ひとりにお詫びのことばを、かけている。だれも、それを無視しながら、通り過ぎていく。
小生は、例によって、席をよろめきながら、立って、家内にバッチリみられて、何かにつかまるように厳命がくだる。
それでも、エライさんに一言かけたくて、言った。「あなたが悪いわけではない。」なにか文句を言われると思ったのだろか、彼の、意外感が伝わってきた。恐縮する返答が、思い通りの、小生の快感になった。