古い本だが、経営者に「一日一言」という題で、原稿をもとめて、PHP研究所が出版している本がある。その中に、松下幸之助さんが書いている一文の見出しである。
仕入れ値より、安い値段で売っていれば、商売は成り立たない。雨が降れば傘をさすように、やるべきことをやる。それが、ビジネスの姿勢であるとする。
一代で、築いたその仕事の成果は、実に簡単な原理にある。松下氏の生涯は、ドラマにもなり、その人となりは、よく知られている。その成功は、自然の流れのようにみえる。
やるべきことをやる。簡単に言うが、それができない。努力家であり、工夫があり、そして、健康な価値観がある。氏が創立した松下政経塾から、今、多くの政治家が生れてきている。
政党は違っても、従来の政治家とは、すこし違う。いろいろ批判もされているが、昔のようなふんぞりかえっているようなタイプはいない。明らかに、変化の兆しはある。
野田首相も松下政経塾の出身だが、国全体のことに関心があって、民意については、無関心とまでは言えないが、頓着はしていない姿勢があらわである。毎週の民衆の大運動にも動じる様子がない。代表と会うというパフォーマンスもしたが、血の通った会見ではない。
意見が違うのだという姿勢を隠そうともしない。社会主義ではなく資本主義の現在では、民衆の意志や生活は、雨が降ったら、どんな傘をさせばいいのだろうか。