ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『男はソレを我慢できない』

2006-06-09 22:49:53 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----どこかで聞いたことがあるようなタイトルだニャ。
「アン・ルイスだったかな。
『女はソレを我慢できない』という歌もあったけど、
映画ファンにはジェーン・マンスフィールド主演の音楽コメディ、
『女はそれを我慢できない』が有名だね。
でもプレスにはこの映画について何も触れてない」

----どっちにしろ、ちょっとそそるタイトルだよね?
主演が竹中直人か、またアツ苦しそう。
「簡単に言えば
『男はつらいよ』の下北沢バージョン。
ただし『007』をパロッた『オースティン・パワーズ』と同じく
ポップでしかも下半身ギャグが多い」

----と言うことは、主人公はどこからか下北沢に戻ってくるんだね。
「うん。
主人公・服部大河(竹中直人)は
“DJタイガー”として7年の放浪の末、
下北沢の実家『饅頭屋うさぎや』へ。
彼の異様な姿を観て驚く、
おいちゃん(ベンガル)、おばちゃん(清水ミチコ)、
そして妹ちえり→チェリー(さくら)。
さっそく彼の周りには“ハゲ仲間”が集まり始める。
この“ハゲ仲間”を演じているのは高橋克実、温水洋一。
さて、マドンナさつきちゃん(鈴木京香)が
離婚して町に戻っていると知ったタイガーは
彼女が切り盛りしている和風喫茶に入り浸り。
ところがそんな下北沢の町に大問題が起こる。
なんとこの町にソープランドができると言うのだ。
さつきに『下北沢を守ってください』と言われ、
タイガーたちは敵地に乗り込むが……」

----分かった。しかし「男はソレを我慢できない」わけだね。
「そういうこと。
時代は2006年夏と言うことになっているけど、
男たちの衣服は60年代後期を偲ばせるサイケな色づかい。
これは『男はつらいよ』が生まれた1969年を意識したのかも。
監督は下北沢を拠点にしている信藤三雄。
プレスの言葉を借りるなら
<映像、音楽、グラフィックアート>のリミックス。
言葉を吹きだしとともに文字として見せたり、
映像をストップモーションで止めて
ギャグアニメのように人の顔を超ドアップにして見せたり、
セリフをエコーでリフレインさせたり、
ここまで遊んでいる映画は、あまり観たことないね」

----でも中島哲也監督とかもやっているよね。
「いや真鹿島監督の映画は物語の骨格がしっかりしていて、
映像との相乗作用で映画を牽引していくからね。
この映画は、そんなタイプの作品ではなく、
ほとんどがおふざけ。
ある意味、まじめにおバカ映画をやろうとした作品だ。
そういう意味では観客を選ぶだろうね。
この<感性>にノレる人もいる反面、
頭から受け付けない人もいるんじゃないかな」

----えいはどうだったの?
「笑った場面もあれば正直寒くなったシーンも。
後半のクライマックスを、
●●●●バトルに持ってきているのは
あまりいただけなかったな、
これをやるとテレビになってしまう」

----●●●●って何よ?
「これは公開されたら明かすかも。
ヒントは出演者が楽しんでしまっていると言うこと。
これやっちゃうと、
いわゆるテレビの芸能人たちによるバラエティと同じ次元になってしまう。
この映画は同じくお笑い芸能人を惜しげもなく出演させた『下落合焼鳥ムービー』と並び、
日本映画史に残る珍作。
それだけに惜しいなあ。」

         (byえいwithフォーン)


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猫ニュー

『2番目のキス』

2006-06-08 22:53:05 | 新作映画
----この映画、評判高いみたいだね。
「うん。それだけにぼくの期待も大きかったんだけど、
観てみて納得。
“映画はこうあってほしい”というのを地でいった感じ。
だれもがハッピーになれるラブストーリー。
ドリュー・バリモアはいまやこの手の映画ではトップ。
メグ・ライアンが持っていた“ロマコメの女王”の称号は
彼女に譲ってもいいんじゃないかな。
しかもバリモアの映画は、
メグ・ライアンと違ってニューヨークにこだわってはいない。
ここがまた親近感が持てるところだね」

----ふうん。どんなお話なの?
「ヒロインのリンジーは
サクセスの階段を駆け上がってきたビジネス・コンサルタント。
そんな彼女が、
ひょんなことから出会った高校教師のベン(ジミー・ファロン)と惹かれあい、
交際をスタートさせる。
ベンはその会話もウィットに富んでいて、思いやりもある。
それまでリンジーが付き合ってきたハイクラスの男とはひと味違う。
ところが、春の訪れとともに状況が一変する」

----どういうこと?
「彼は、熱狂的なボストン・レッドソックスのファン。
亡き伯父から譲り受けたシーズンチケットを大切な宝物にしている彼は
シーズンの開幕と同時に、
すべてが野球中心に回転してしまうんだ」

----なあんだ、その程度のことか?
「いやいや、これがその程度ではすまないんだ。
たとえば、よくテレビなんかで
インタビュアーの前で酔っぱらったように騒ぎまくって
前へ前へと出てくる熱狂的サポーターとかいるだろう。
ベンはあんな感じ。
だから、リンジーからパリへ誘われても
試合の方を優先してしまう。
それでもリンジーとの交際を大切にしようとした矢先に、
彼は歴史的な試合を見逃してしまう。
初めてヤンキースとの試合に行かなかったその日に、
レッドソックスは7対0の劣勢から7対8の大逆転サヨナラ。
リンジーと一緒の夜を過ごしたために
その<歴史>に立ち会えなかったベンは、
もう荒れに荒れてしまう」

----ニャんだか、それって分かるなあ。
結局、この映画は人を好きになった時、
その人と同じものをどこまで好きになれるか?って話だね。
「そうなんだね。
リンジーはもともと仕事人間。
それだけに、恋に流されて
仕事がおろそかになってしまった自分が許せない。
でも、そんなふたりが相手のために
どこまで自分の大切なものを捨てることができるか?……
ということが映画のポイントとなってくる」

----レッドソックスってあまり強いってイメージがニャいなあ。
「それにはこんな逸話がある。
かつてレッドソックスの看板スターだったベーブルースを
当時の球団オーナーが経営難を理由に、
ニューヨーク・ヤンキースに売り渡してしまったことから、
ヤンキースとレッドソックスの立場が逆転。
以後、ヤンキースが常勝チームとなったのに対して、
レッドソックスは86年間もワールド・シリーズの優勝から見放されてしまう。
他にもけが人などバッド・アクシデントが続出。
これを『バンビーノの呪い』と言うらしい」

----でも、確か最近優勝したよね。
「そうなんだね。
脚本家のローウェル・ガンツによると、
当初レッドソックスはレースからドロップアウトすることになっていたらしい。
しかし奇跡の快進撃で脚本も変更。
これが見事にハマっているんだ。
ネタバレになるからあまり詳しくは言えないけど、
実際にはとてもありえない出来事が試合のクライマックスで起こって
たとえようもない至福感が観る者を包み込む。
この“映像マジック”には目頭が熱くなってしまった」

----あらら。監督は誰だっけ?
「これがなんとファレリー兄弟。
下ネタで知られる彼らだけど、
今回はそのあたりは比較的抑えてある。
その代わりというわけでもないだろうけど、
映画ファンへの嬉しい目配せも。
『ロードハウス/孤独の町』って映画知っているかな?
これが、あるカタチで出てきた時は笑ったね。
あ、あと音楽も聴かせてくれる。
なかでも『スウィート・キャロライン』(ニール・ダイアモンド)には興奮したね」

----ふうん。日本人の野球選手は出ていないの?
ヤンキースだったら松井選手とか……。
「あ、マツイね。
彼は重要なところでホームランを打ちます。
ここは聞き逃さないようにね」

----ん???見逃すじゃなくって、聞き逃す?

          (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ドリュー・バリモアの映画は、大きくはずれはしないニャ」ぱっちり

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猫ニュー

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『カクタス・ジャック』

2006-06-07 22:48:43 | 新作映画
「いやあ、これはおススメだね。
やはり映画は観てみないと分からない 」

----確かメキシコ映画だよね。
印刷物を見ると、あまりきれいじゃなさそうだけど。
「そうなんだよね。
このビジュアルだと、
数ある映画の中からコレを選ぶと言う決め手に欠ける。
でも、それでもぼくとしてはこの映画を推したいね。
ひねったストーリー、くすぐるようなユーモア、
過去の映画の引用、大胆なアクション、そして独特の語り口」

----久しぶりだね<語り口>。
「うん。
まずは、ひねりにひねった
そのストーリーから話そう。
主人公のジャックはボスであるカボスの娘とベッドインしているところを
カボスに見られ、凄まじい暴行を受けてしまう。
カボスに交際を認めてもらおうと、改めて彼の部屋へ向かうカボス。
ところがカボスは彼が仕返しにきたと勘違い。
ゴルフパターでジャックに襲いかかろうとして転倒し、気絶してしまう。
助けを呼びにジャックが部屋を出た隙にやってきたのが掃除夫のチーノ。
なんとチーノはカボスを身ぐるみはいで悠々と部屋を出てゆく。
ところが、このカボスを狙っている別の男たちがいた。
彼らはチーノをカボスと間違えて後ろから襲撃。
頭から袋をかぶせ、アジトへ運ぶ……」

----ちょっと、ややこしすぎない。
ほら、よく言っていたじゃない。
いい映画は一言でストーリーが語れるって……。
「痛いところを突いてきたね。
じゃあ、はしょっちゃおう。
この犯人たちのリーダーは実はジーノの息子ボッチャ。
映画は、この後、
頭を隠されてしまったカボスとジーノの処理をめぐり、
ジャックたちとボッチャたちの思い違いと
その思い違いに気づいてからの争奪戦が
ブラックユーモア満載で描かれてゆく。
ユーモア例の一つをあげれば、
ジャックの部屋の隣人が飼っているうるさいオウム。
この隣人は二挺マシンガンで、
このオウムを守り抜こうとする。
理由は『おばあちゃんがくれた大切な鳥!』(笑)。
かと思えば、これは次のアクションにも繋がるんだけど、
ジャック組VS.ボッチャ組の激しいカーチェイスも見モノ。
ニ台の車はスタジアムの通路で追いつ追われつ。
最後にはキリモミしながら
観客席をなぎ倒してクラッシュしてしまう。
映画ネタとしては『タクシードライバー』の
トラヴィスのマネもあったね」

----確かにオモシロそう。
でもそれほどの語り口にも見えないけど……?
「じゃあ、これはどうだろう。
映画の冒頭はジャックがトイレに座ったまま
隣の個室のムドに話しかけているシーン。
その話と言うのは中国人コックやキャディを半殺しにした
ある男、つまりカボスのこと。
ジャックが紙を取るためムドとは逆側の隣の個室を開けると
そこには……下着姿で気を失っているカボス」

----ニャるほど、意外性ってヤツだね。
「それにもちろん映像の遊びもある。
掃除夫ジーノはなぜカボスを殴ったか?
これについては、
仲が良かったふたりの少年時代に遡り、
以後、ニュース映像のフィルムのタッチで
カボスがジーノを裏切った過程が語られていく。
また、ジャックの加勢をするレスラー上がりの大男ルベンのエピソードも秀逸。
彼が車に乗ると、なぜかレスラー時代のマスクマンに。
しかも映像はモノクロになり、
彼はゾンビに襲われる老婆を助けるヒーローに早変わり。
この怪力大男ルベンでもかなわないのが、
こちらはちっこいちっこいトニー。
<噛みつき>の武器を持ち、不気味なベッドシーンまで演じる。
他にも<ロンパリ>と呼ばれて、
その悲しい過去を思い出してキレる男など
ユニークなキャラがいっぱいだ」

----ニャるほど、これはおススメってわけだ。
「でも、メキシコ映画らしく
少々暑苦しいから
誰にでもってワケじゃないよ。
そうそう、エンドクレジットの後のエピソード。
この意味がぼくには分からなかった。
だれか観た人に、教えてほしいな」


                   (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『カーズ』

2006-06-05 23:08:51 | 新作映画
----これってディズニー/ピクサーの最新作でしょ?
『トイ・ストーリー』のジョン・ラセター監督が
6年ぶりに監督を務めた作品なんだって?
「うん。ジョン・ラセターは
父親がシボレー販売店に勤務。そして母親は美術教師。
本人は『僕の血管にはディズニーの血が流れているけど、
車のオイルも流れているんだ』と語っている。
この世界のパイオニアが
自分の体験や思い出を元に描いただけあって、
テクノロジーに関しては申し分なし。
車のボディに周囲の風景を正確に反射させる、
その驚異の映像はもはや神業に近い」

----ちょっと待って。
“テクノロジーに関しては”の限定付きなの?
「その前にこの映画のプロットを……。
ピストン・カップの若き天才レーサー、
ライトニング・マックィーン(McQueen)。
才能に酔いしれ、傲慢な彼には
ただ一人の友だちもいなかった。
さて、スポンサー契約がかかっている決勝レースに臨むべく
カリフォルニアに向かう途中、
マックィーンは
古きルート66沿いの寂れた街に迷い込んでしまう。
この街から脱出しようとして
結果、暴走してしまったマックィーンは、
罪の償いとして自分がめちゃくちゃにした
道路の補修を命じられる。
最初はいやいややっていた彼だが、
町に暮らす個性的なクルマたちとの触れ合いの中、
いままで抱いたことのない
“信頼”という感情に芽生えてゆく。
そしてマックィーンは
高速道路ができたために寂れてしまったこの町に
活気を取り戻させようとする……」

----いいお話じゃニャい?
「ま、ここからは寝言と思って聞いてほしい。
個人的にはディズニー/ピクサーのアニメは
“監督”ジョン・ラセターじゃない方が自分に合う」

----どういう映画?
「『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』
そして「Mr.インクレディブル」
ここに共通しているものって分かる?」

----あっ、モチーフが“親と子”だ。
「そうなんだね。
『モンスターズ・インク』も擬似的な親子関係。
一方、『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』は
それぞれ個性的なキャラクターを作り出しているけど、
なぜか彼らに共感できない」

----それって個人的すぎない。
「だから“寝言”。
キャラはかわいいんだけどね。
フロントガラスに描かれたくるくる動く目……。
これは間違いなく人気沸騰すると思うよ。
そうそう、一つ気になったのが
主人公の名前マックィーン。
これはおそらくスティーヴ・マックィーンを意識しているね。
マックィーンはカーレースのメッカ、インディアナポリスの生まれ。
カーレース映画『栄光のル・マン』や
カーチェイス映画のハシリ『ブリット』などに出演。
彼自身も、それこそシボレーを始め、
多くのクルマを所有していたからね」

----あららピクサーとはまったく関係ない話になっちゃった。
「ヤバいヤバい。
この映画にはマックィーンと同時期の人気俳優
ポール・ニューマンが声優として出演。
彼はデイトナ・レースで優勝した最年長ドライバーというギネス記録を保持。
あとシューマッハなど
実在するレーサーたちも多数カメオ出演しているよ。
そうそう、この映画の前に上映された短編『ONE MAN BAND』はおススメ。
ブラックなユーモアが効いていて、誰もがニヤリとすると思うよ」


          (byえいwithフォーン)

栄光のル・マン PPA-108958栄光のル・マン PPA-108958
※こちらは、もう一人のマックィーンのカーレース映画。

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猫ニュー

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『LOFT ロフト』

2006-06-04 12:24:00 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。
※映画の核に触れる部分もあります。
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----黒沢清監督って久しぶりだね?
タイトルからは『CURE キュア』を連想しちゃうけど…。
「うん。『ドッペルゲンガー』以来3年ぶりの長編。
待望の新作は豊川悦司、中谷美紀主演。
しかも西島秀俊に安達祐実まで出ている」

----安達祐実と言うのは驚きだね。
どんな役なの?
「なんとこれが幽霊?」
----えっ、嘘でしょ?
「はっきり幽霊と言っていいのかどうかは微妙なんだけど、
何度も生まれ変わる。
そもそも今回の映画のモチーフに使われているのはミイラ」

----ミイラ?あのエジプトの?
「いや、舞台は日本だから約1000年前。
ミイラってひからびた印象があるけど、
何年か前に中国で発見された女性のミイラは何百年か前のもの。
ほんの数週間前に死んだように肌に湿り気があったんだって」

----それって普通の死体じゃん?
「それを見た黒沢監督は、
さらしものになっている彼女がかわいそうと思ったらしい。
そして
止まってしまった時間のまま掘り起こされてしまったミイラの悲しみ=女の悲劇を感じ、
それをネタに映画にしようと思ったらしい」

----それを現代の話に結びつけたわけだね?
「うん。ヒロインの春名礼子(中谷美紀)は
スランプに陥った女性作家。
担当編集者・木島(西島秀俊)の勧めで、
東京郊外へ引っ越してくる。
森と沼と草原に囲まれた洋館の向かいには、
人気のない不気味な建物が…。
ある日、彼女は一人の男・吉岡誠(豊川悦司)がその建物に
何かを運んでいるのを見かける。
彼は大学教授。
千年前に沼に落ち、泥の成分によりミイラ化した女性を
そこで極秘に保存していたわけだ。
それ以来、礼子の周りでは、不思議な現象が多発し始める」

----うわあ、オモシロそうだ。
でも聞いていると、ごく普通のホラーに見えるけど?
う~~ん。ホラーだけども
その怖がらせ方はどちらかと言うとサスペンス。
そこに謎解きのミステリーの要素もあるけどね。
そうそう、ホラーとサスペンスについては
黒沢監督の素晴らしい定義があるからここでご紹介。
ホラーとは『ある異様な出来事なり存在なりが、
日常世界に侵入してくるテーマ』、
サスペンスは『隠された過去-----それは最初には明らかにされないが、
現在にじわじわと影響を及ぼし、その謎が最後に暴かれる瞬間に
主人公を破局か、あるいは奇跡的なハッピーエンドに導く』。
これは実に巧い言い回しだ」

----と言うことは、今回はサスペンスだから、
ラストがどうなるかが興味津々だね。
でも、あれっ?これってどこかで聞いたような……。
「気づいた?
湖の側で起こる怪奇事件。不審な隣の住人。
そう、ロバート・ゼメキスの『ホワット・ライズ・ビニース』。
監督自身も参考にしたことを認めている」

-----そうか、黒沢監督にしては直球勝負の作品になってるわけだ?
「いやいや、そんなことはないよ(笑)。
細かく観ていけばいろんな謎は残るし、
映像的にもオモシロいチャレンジをいろいろやっている。
たとえば撮影ではハイビジョンと家庭用のDVカメラ2台を、
ほとんど同ポジションで撮り、それを繋ぐ。
そのため微妙なジャンプカットが生まれている。
そして最大の見どころは2回のキスシーン」

-----??????
「ここでは2回とも50年代のハリウッド映画、
あるいはそれを意識的に模倣したブライアン・デ・パルマのように
音楽が高まり、カメラもふたりに近寄り、
いわゆる<別次元のクライマックス>を生み出す」

-----???????
「う~~ん。
説明しにくいなあ。
人がずっと抱えていたある悩みから解放されたり、
あるいは長年の思いが成就した時って、
気持ちが高揚してどこか違う世界に行ったようになるよね。
その心理的な状況と言うよりか、
<脳内アドレナリン全開の感覚>を映像と音で出していると言えば、
少しは分かってもらえるかな。
一瞬にして別世界が生み出されるんだ。
それまで見えていた風景までも変わったような…」

-----そう言われてもフォーンは猫だから…。
「あっ」

                   (byえいwithフォーン)

※西島秀俊 は『tokyo.sora』に続いてイヤな編集者。
※豊川悦司は「レイクサイド・マーダーケース」に続いて湖(沼)のそばの殺人。

ホワット・ライズ・ビニーズ 特別編(期間限定) FXBHA-20021ホワット・ライズ・ビニーズ 特別編(期間限定) FXBHA-20021
※これがゼメキスのサスペンス・ホラー『ホワット・ライズ・ビニース』

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猫ニュー

『デスノート・前編』

2006-06-03 01:13:23 | 新作映画
----この映画、前後編に分けて公開だって?
珍しくニャい?
「うん。この方式、昔は日本映画にもけっこうあったけど、
最近では見かけなくなったね」

----原作がコミックで11巻だっけ。
長いからかなあ…。
「そう。これは『ダ・ヴィンチ・コード』と同じだね。
謎解きや推理をバッサリと切り捨てている。
おそらく、それを一つひとつやり始めると収拾がつかず、
到底この時間内では収まらないと言うことだろうね。
ただ、『ダ・ヴィンチ・コード』に比べて潔い。
原作のエピソードを割愛しつつ、
そこにまったく新しいエピソードを織り込んでいるんだ」

----えっ、なぜそんなことを?
「テレビ局に機動隊が押し寄せるシーンとか、
<画>が作りにくいものは、まず最初に切られていた。
予算とかの問題もあるんだろうね。
FBI捜査官レイが無念の死を遂げる山手線は地下鉄に変えられ、
福岡で撮影を行っている。
そう言えば、ノートを隠す机の仕掛けもなかった」

----ちょ、ちょっと待ってよ。
この物語を知らない人もいるんだし、
簡単にストーリー説明した方がよくない?
「あっ、そうか。
じゃあ簡単に。
退屈な死神が人間界に落としたノート。
それは、その人の顔を思い浮かべ名前を書き込めば
書かれた人は必ず死ぬと言うノート。
それを手に入れたのは、刑事を父に持つエリート大学生の夜神月(ライト)。
彼は、理想の世界を作ろうと、
次々と犯罪者を始末して行く。
この事件を捜査するべくインターポールは
数々の事件を解決してきた天才『L』を日本の警察庁に送り込む。
原作はこのLがライトを追いつめていくさまが
コミックとは思えない緊張感で描かれてゆく。
しかし、正直言って映画版には殺人計画の緻密さはなく、
またスケール感も乏しかった。
でも、そこはベテラン金子修介監督。
これをそのまま映画化するのは日本映画の枠では難しいことは、
あらかじめ織り込み済みだったと思う。
そこで、まったく新たなエピソードで
映画オリジナルの展開を考えたのだと思う」

----でも設定が大きく変わっているわけじゃないんでしょ?
「うん。原作サイドは『デスノートのルールだけは変えないでください』と
お願いしてあったみたい。
それさえ守れば、むしろあとは原作とは変わってほしい…と」

----いちばん変わったのはどこ?
「新キャラとしてライトのガールフレンド、詩織(香椎由宇)を入れたこと。
それと南空ナオミ(瀬戸朝香)の設定かな」

----そうか、ライトには特定のガールフレンドはいなかったよね?
「ライトは藤原竜也が演じているんだけど、
どうしても彼がやると甘くなってしまう。
詩織の設定は、藤原竜也のキャラを生かす上でも
あっていたとは思うよ」

----カンヌではLの松山ケンイチが評判になったよね」
「彼はカメレオン俳優だね。
『不良少年(ヤンキー)の夢』『NANAーナナー』『男たちの大和 YAMATO』
すべて違う役柄でありながらも、いずれも強いインパクトを与える。
その中でもこれは決定打になるんじゃないかな」

-----前編はどこで終わるの?
「それは言えないよ(笑)。
ただ、『えっ、もう終わったの?』と思ったのは確か。
126分があっという間だから、
オモシロくなかったわけではない。
あっ、あとリューク(死神)の声はちょっとしたサプライズ。
印刷物にはどこにも載っていなくて、
エンドクレジットで初めて分かる仕組みだよ」


                   (byえいwithフォーン)

1999年の夏休み SVWB-50081999年の夏休み SVWB-5008
※金子修介監督と言えばこの作品。もはやカルトです。

毎日が夏休み デラックス版 PIBD-1021毎日が夏休み デラックス版 PIBD-1021
※こちらもなかなかキュート。金子修介監督によるコミックの映画化。

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猫ニュー

『神の左手 悪魔の右手」

2006-06-01 21:19:17 | 新作映画
※「我が左の手は、正しき者を蘇らせる神の左手。
我が右の手は、悪しき者を滅ぼす悪魔の右の手…」


----これは梅図かずおの原作だよね。
監督が金子修介なんだって?
「うん。最初は那須博之がやる予定だったらしい。
ところが急逝してしまったからね。
そこで那須監督の助監督時代からの後輩であり、
深い親交があった金子監督が引き継いだわけだ。
映画の冒頭にも『映画監督 那須博之に捧ぐ」とクレジットされる」

----あっ、だから山本奈津子なんて懐かしい人が出ているんだ。
確か『セーラー服百合族』のヒロインだよね。
「また、スゴいところから入ってきたね(笑)。
彼女は、山辺イズミと山辺ソウ、
ふたりの姉弟の母親役。
“人間の悪意を夢で予知する”不思議な力を持つことから、
苦しみに苛まされながらも悪を滅ぼすために奔走する少年ソウ。
そして彼を優しく見守り弟を助けたいと願う姉イズミ。
今回の映画化では、コミックの中でも人気の高い
『黒い絵本』のエピソードが中心となっているらしい」

----「なっているらしい」って、知らないの?
「読んだのがずいぶん昔だからね(汗)。
脚本の松枝佳紀によると
そこに『影亡者』『錆びたハサミ』などの要素を入れたらしい」

----松枝佳紀って人、初めて聞くなあ。
「もともとは劇団アロッタファジャイナの主催・脚本・演出家。
彼の芝居を下北沢に観にきた那須博之がスカウトしたとか。
那須監督亡き後、止まりかけていた企画を
金子監督に持ち込んだのも彼らしい」

----なるほど。それじゃ脚本のウェイトも大きそうだ。
「原作との詳細な比較は今はできないけど、
なかなか凝った構成になっている。
ソウの見る夢。
それはひとりの女性が殺人鬼に襲われる夢。
ところが映画はそこから
その殺人に酷似した物語の絵本を自ら書く父親と、
それを聞くのを楽しみにしている寝たきりの娘モモの話になってくる。
この父親と言うのが田口トモロヲがやっているんだけど、
まるで『赤ずきんちゃん』のオオカミそっくりの表情。
このエピソードの持つメルヘン的な怖さを見事に体現していたね。
オーバーアクトが許されるこの演技、
彼もやりがいあったんじゃないかな。
そうそうモモを演じるのは『誰も知らない』の清水萌々子」

----ふうん。キャスティングもオモシロいね。
「うん。
那須監督はリメイク版『テキサス・チェーンソー』を引き合いに出して
『Jホラーじゃない、こういうソリッドなホラーをやりたい』と言っていたらしいけど、
その意図は充分生かされているんじゃないかな。
そうそう原作者の楳図かずおも出ているよ」


          (byえいwithフォーン)

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