ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『LOFT ロフト』

2006-06-04 12:24:00 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----黒沢清監督って久しぶりだね?
タイトルからは『CURE キュア』を連想しちゃうけど…。
「うん。『ドッペルゲンガー』以来3年ぶりの長編。
待望の新作は豊川悦司、中谷美紀主演。
しかも西島秀俊に安達祐実まで出ている」

----安達祐実と言うのは驚きだね。
どんな役なの?
「なんとこれが幽霊?」
----えっ、嘘でしょ?
「はっきり幽霊と言っていいのかどうかは微妙なんだけど、
何度も生まれ変わる。
そもそも今回の映画のモチーフに使われているのはミイラ」

----ミイラ?あのエジプトの?
「いや、舞台は日本だから約1000年前。
ミイラってひからびた印象があるけど、
何年か前に中国で発見された女性のミイラは何百年か前のもの。
ほんの数週間前に死んだように肌に湿り気があったんだって」

----それって普通の死体じゃん?
「それを見た黒沢監督は、
さらしものになっている彼女がかわいそうと思ったらしい。
そして
止まってしまった時間のまま掘り起こされてしまったミイラの悲しみ=女の悲劇を感じ、
それをネタに映画にしようと思ったらしい」

----それを現代の話に結びつけたわけだね?
「うん。ヒロインの春名礼子(中谷美紀)は
スランプに陥った女性作家。
担当編集者・木島(西島秀俊)の勧めで、
東京郊外へ引っ越してくる。
森と沼と草原に囲まれた洋館の向かいには、
人気のない不気味な建物が…。
ある日、彼女は一人の男・吉岡誠(豊川悦司)がその建物に
何かを運んでいるのを見かける。
彼は大学教授。
千年前に沼に落ち、泥の成分によりミイラ化した女性を
そこで極秘に保存していたわけだ。
それ以来、礼子の周りでは、不思議な現象が多発し始める」

----うわあ、オモシロそうだ。
でも聞いていると、ごく普通のホラーに見えるけど?
う~~ん。ホラーだけども
その怖がらせ方はどちらかと言うとサスペンス。
そこに謎解きのミステリーの要素もあるけどね。
そうそう、ホラーとサスペンスについては
黒沢監督の素晴らしい定義があるからここでご紹介。
ホラーとは『ある異様な出来事なり存在なりが、
日常世界に侵入してくるテーマ』、
サスペンスは『隠された過去-----それは最初には明らかにされないが、
現在にじわじわと影響を及ぼし、その謎が最後に暴かれる瞬間に
主人公を破局か、あるいは奇跡的なハッピーエンドに導く』。
これは実に巧い言い回しだ」

----と言うことは、今回はサスペンスだから、
ラストがどうなるかが興味津々だね。
でも、あれっ?これってどこかで聞いたような……。
「気づいた?
湖の側で起こる怪奇事件。不審な隣の住人。
そう、ロバート・ゼメキスの『ホワット・ライズ・ビニース』。
監督自身も参考にしたことを認めている」

-----そうか、黒沢監督にしては直球勝負の作品になってるわけだ?
「いやいや、そんなことはないよ(笑)。
細かく観ていけばいろんな謎は残るし、
映像的にもオモシロいチャレンジをいろいろやっている。
たとえば撮影ではハイビジョンと家庭用のDVカメラ2台を、
ほとんど同ポジションで撮り、それを繋ぐ。
そのため微妙なジャンプカットが生まれている。
そして最大の見どころは2回のキスシーン」

-----??????
「ここでは2回とも50年代のハリウッド映画、
あるいはそれを意識的に模倣したブライアン・デ・パルマのように
音楽が高まり、カメラもふたりに近寄り、
いわゆる<別次元のクライマックス>を生み出す」

-----???????
「う~~ん。
説明しにくいなあ。
人がずっと抱えていたある悩みから解放されたり、
あるいは長年の思いが成就した時って、
気持ちが高揚してどこか違う世界に行ったようになるよね。
その心理的な状況と言うよりか、
<脳内アドレナリン全開の感覚>を映像と音で出していると言えば、
少しは分かってもらえるかな。
一瞬にして別世界が生み出されるんだ。
それまで見えていた風景までも変わったような…」

-----そう言われてもフォーンは猫だから…。
「あっ」

                   (byえいwithフォーン)

※西島秀俊 は『tokyo.sora』に続いてイヤな編集者。
※豊川悦司は「レイクサイド・マーダーケース」に続いて湖(沼)のそばの殺人。

ホワット・ライズ・ビニーズ 特別編(期間限定) FXBHA-20021ホワット・ライズ・ビニーズ 特別編(期間限定) FXBHA-20021
※これがゼメキスのサスペンス・ホラー『ホワット・ライズ・ビニース』

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