ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ボローニャの夕暮れ』

2010-05-02 22:21:31 | 新作映画
※意外と言っては失礼ですが思わぬ拾いモノ。
ネタバレを避け、あまり詳しく書いていません。ご了承を。



(原題:Il papa di Giovanna)

----おっ。珍しいニャあ。
これってイタリア映画だよね。
「うん。タイトルとビジュアルから連想するのは、
ほっこりするような幸せ家族の映画。
ところがところが…」

----全然違ったというわけだ。
「うん。よくもまあ、こんなお話を考え付いたもの。
フライヤーには
『第二次世界大戦下イタリア、ボローニャ。
ある家族の再生を通して綴られるのは、
ほろ苦くも温かい、人間そのもの』と書いてある。
でも、これは“ほろ苦い”どころの話じゃない。
実を言うと、この驚きを味わうには、
何も知らずに映画に臨んだ方がいいんだけどね」

----でも、ここまで話したんだから、
もう少しくらい喋ってくれなくちゃ。
「それはそうだ。
主人公は、美術教師のミケーレ(シルヴィオ・オルランド)。
彼には繊細で引っ込み思案な娘ジョヴァンナ(アルバ・ロルヴァケル)がいる。
ジョヴァンナは、美しく闊達な母親デリアに憧れと劣等感を抱いている。
ミケーレは、あの手この手でジョヴァンナを励まそうとする。
ところがそれが行きすぎて、
ついには、学年の人気者ダマストリに
『キミが進級できるかどうかは、私の一存にかかっている』と、
彼に好意を寄せている娘に親切にするよう、持ちかける」

----それって、教師にあるまじき行為だ。
「だよね。
そんなこととは知らず、思いがかなったとはしゃぐジョヴァンナ。
一方、現実を見据える目を持っているデリア(フランチェスカ・ネリ)は、
人気のある男子生徒が冴えないジョヴァンナに興味を持つはずがないと、
ミケーレがそそのかしたのではないかと睨む。
そして、その事件は起こった」

----えっ。ニャにが起こったの?
「う~ん。
ここが思案のしどころ。
これを言っちゃうと、結局は全部を言わなくてはいけなくなる。
でも、それじゃ、あまりにネタバレになるから、
今回は止めにしておこう。
ただ、このエピソードから推察してみて。
ある夜、ミケーレは洗面所で
壁とタオルに血のようなシミが付いているのを見つけ、
胸騒ぎを覚える」

----えっ。それって自殺未遂?
ダマストリ(騙す鳥)だけに
ジョヴァンナはふられてしまったとか…。
「(笑)変なこと言わないの。
まあ、いずれにしろ全然違うけどね。
で、この後は、家族の崩壊劇が始まる。
う~ん。やっぱり、この映画は全部言うか言わないか。
ただ、これは言っておいた方がいいかな。
物語は、ムッソリーニのファシスト政権の世相を背景にしている。
市井の人々の暮らしを描きつつも、
それらを、きちんと見せているところが映画を深みのあるものとしている」

----にゃるほどね。監督は誰ニャの?
「ボローニャを拠点に映画を撮り続けているプーピ・アヴァーティ
プレスに寄稿している川口敦子さんの言葉を借りれば
この映画の主人公“ジョヴァンナのパパ”(原題)は
彼の映画が慈しむ純情男の系譜に属するらしい。
美人妻に対して堂々と男らしい態度をとることができない。
妻が彼の友人に思いを寄せていると娘に知らされ、
自ら身を引いたりもする。
その一方、妻デリアは、この夫公認の愛人がファシストと糾弾され
銃殺に合う場面に遭遇しながら、声もあげずに傍観する。
ラストの映画館で、夫と娘に出くわしたときは、
毛皮を身につけ、いかにも裕福そう。
そのとき彼女の唇に浮かぶ笑み。
ここにはゾクッ。
もはや妻の面影はない。
川口さんの言葉を再び引用すれば
『ノワールな瞬間がそそり立つ』
まさに言い得て妙だと思ったね」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「みんな不器用だけど、どこいとおしいのニャ」悲しい

※くどいけど、何も知らないで観てほしい度

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