ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『コントロール』

2007-12-16 17:14:28 | 新作映画
(原題:Control)

-----この映画のこと、あまり知らなかったけど、
イギリスでの評価は高いんだって?
「うん。2007年英国インディペンデント映画賞で
作品賞・監督賞・新人監督賞・新人俳優賞・助演男優賞の最多5部門で受賞しているんだ。
1980年5月18日、全米ツアー出発の朝、
23年という短い人生に自ら終止符を打ったイアン・カーティスが駆け抜けた
短くも波乱の生涯をモノクロの清冽な映像で切り取っている」

-----そのイアン・カーティスというのが、
まず分からないニャあ。
「ニュー・オーダーの前身として伝説のバンド、ジョイ・ディヴィジョン。
そのヴォーカリストらしい」

------らしい----ということは、えいもよく知らないんだニャ。
「うん。最近の音楽事情には疎くって。
ただ、それでも映画でイアン・カーティスが影響を受けるアーティストたちは
ほとんど分かったね。
だってジム・モリソンにデヴィッド・ボウイにセックス・ピストルズ…。
なんとなくその傾向が分かるよね。
このジョイ・ディヴィジョンというのは、
その名をナチスドイツ時代の将校用慰安所から取っているし、
どうやら彼はポスト・パンク時代のヒーローだったみたいだね」

------監督はだれニャの?
「U2、デヴィッド・ボウイ、ビョークらを撮り続けた
ロック・フォトグラファー、アントン・コービン。
彼自身、イアン・カーティスとは2回ほど仕事で会ったことがあるらしく、
周りから相当に期待されていたようだね」

----ふうん。でもその人、映画監督はあまりやってないんでしょ。
どんな感じだった?
「最初、映画がモノクロと聞いたときは、
知らないアーティストの話だし、少しキツいかなと思っていたんだけど
これは杞憂だったね。
イアンが自分自身を抑制できなくなっていく課程が、
観ている人にもその苦しさ、痛みが分かるように実に丁寧に描かれている。
ハリウッドでこれまでいくつも作られた
ロック・スター映画とは一線を画するね」

----その“丁寧に”…というのを、もう少し。
「たとえばこの映画では
同時制のエピソードを並列して描こうとはしない。
それは驚くほど徹底している」

----えっ?意味が分からないニャあ。
「つまりカットバックがほとんど用いられていないんだ。
もちろんフラッシュバックもね。
これは、その時、その時のイアンの生きている<時間>に
キャメラが密着しているということだと思う。
そのため観る方も、極度の緊張感を強いられて
頭の中に余白を作ることができなくなる。
これは、イアン・カーティスという
凝縮した生を描くには最適な手法だったと思う。
その“抑制”が崩れるのは彼が自殺してから。
死んだ彼を見つける妻、それを知らされたメンバー、そして愛人。
この“哀しみのカットバック”の効果のためにも、
この手法は効果的だったね」

----ふうん。べたボメだニャ。
でも内容についてはどうニャの?
「う~ん。亡くなった一人のアーティストの生涯を
その妻の書いた本に基づいて描いているわけだし、
それでイアン・カーティスの人生がどうのこうのというのもおかしい。
ただ、彼が死に至るまでの心理的な流れは、
観る者を納得させること間違いない。
主演の新人サム・ライリーも含めて
とても力のある作品だと思うよ」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくの知らない人、いろいろいるニャ」ぱっちり


※背景となる70年代もよく再現されていた度

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