ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『きみにしか聞こえない』

2007-02-28 23:45:36 | 新作映画
----これって乙一の原作だよね。
これまでがこれまでだけに、
ちょっと心配だニャあ。
「そうだよね。
乙一が映画化されるたびに、
ぼくがクドいほど言っている叙述トリック。
これって映像でやるのは至難の業。
しかも今回は頭の中の携帯だからね。
実際に口に出しては喋らない上に、
心の中の言葉を一人演技で表現しなくてはならない」

----今回のヒロインを演じているのは
『あしたの私のつくり方』の成海璃子だっけ。
「うん。これが意外に
乙一のヒロインとしてハマっていた。
『暗いところで待ち合わせ』の田中麗奈のように、
まだ役者としてのイメージが固まっていないところもよかったのかも」

----確か、これって
携帯を持っていない内気な女高生リョウが拾った
オモチャの携帯にシンヤという男性から着信があり、
それがきっかけで、
ふたりは空想の電話で繋がる。
だが、ついにふたりが会うことになったとき、
思わぬ出来事が起こる…というお話だよね。
あれっ、少し韓流入ってる?
「(笑)。それはどうかな」
----そしてそこに
第3の女性・原田からの携帯も入り、
衝撃の結末に向けて、
話は急激に加速してゆく----。こうだよね。
乙一の<せつない系>を読むと、
えいはいつもボロボロになってたけど、
どう?この映画も泣けた??
「いや。やはり原作ほどではないね。
彼の小説は文字と言う特性を生かして、
それこそ緻密に一つの世界が形作られている。
ただ、これまでの乙一の映画化中では
もっとも成功していたんじゃないかな?」

----それはどういうところで感じたの?
「やはり決め手は、
羊の原毛やタンポポの綿毛のように柔らかな、その空気感だろうね。
構図や色遣いに対する細かい配慮、
さらには風と光にまで神経を尖らせて計算している。
最初に、『おや、これは……』と思ったのは、
リョウが気分が悪くなって横たわる保健室の映像。
保健室って、授業中に自分だけそこにいるという
軽い罪悪感と甘い秘密めいたなものがあって、
外の光が眩く感じるよね。
この映画では
保健室の窓から差し込む眩い日の光が
意図的に強調されている」

----う~ん。分かるような気もするけど、
保健室の窓の外の光が眩く感じるのは、
自分の体調がすぐれないから。
それで外の光が、より健康に見えるんじゃニャいのかな?
「うん。それはそれで正しいと思う。
結局、あの保健室というのは、
それぞれの思いが投影される
象徴的な場所だと思うんだ。
この映画は、その保健室に代表されるように、
それぞれのショットが
<ここしかない>という唯一無二のロケーションで
フィルムに収められている。
そのことがまず感動的だったね。
そうそう乙一自身も『こんなに美しい映画は見たことがない』と大絶賛。
しかも『きっと原作ファンすべてが納得するだろう完成度である』
とまで言い切っている」

----普通、
「原作は原作。映画は映画ですから……」と、
遠回しに異を唱えることが多いのに、
それは珍しいね。
フォーンも観てみたくなったニャ。

        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そう言われると観たくなるニャあ」身を乗り出す



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