トレイルから頭を切り替えるために
街道歩きについていくつか考えてみましょう。
まず、街道をどちら向きに歩くか。
これはどっちでもいいように見えて、
実は結構重要な選択であったりします。
例えば熊野街道であれば、
熊野に向かう方向を往路、
熊野から帰る方向を復路としますと、
それらは同じ道に見えて、
実は異なる道なのかもしれません。
街道案内などはたいていは往路を紹介しています。
往路さえ押さえておけば、
復路は旅人も経験済みなので
案内不要ということなんでしょう。
しかし、目的地に向かう人々の見る景色や味わう旅情と、
帰る人々のそれは違うはずです。
例えば、道標の位置や向き、
刻まれた言葉が往路と復路とでは異なっていたりします。
往路では見えていた道標も
復路では物陰になっていて、
近くに行かないと存在すらわからなかったり、
刻まれてある言葉が
往路の目的地までのことしかなかったりもします。
また、往路は見晴らしの良い高台からの下り道も、
復路にはつらい登り道であったりします。
もっとも旅人の心の奥深くまで推察すると、
お詣りに向かう気持ちは切羽詰まっていたり、
高揚していたり、
お詣りを終えて帰る気持ちは、
祭りの後の寂しさを感じていたり、
あるいは充実感で満たされていたかもしれません。
そう考えると、1本の街道も
往路と復路とでは
旅人にとってはかなり違ったものであったはずです。
景色も気持ちもです。
とまあ、これは目的地を定めて
どこかへお詣りにいくための街道の場合です。
街道には他にも、
往路にも復路にも目的がある場合もあります。
参勤交代で江戸に向かう道と
その逆方向で熊野に詣でる道が
往路復路になっている紀州街道なんかがそうでしょう。
また、主に人々の往来に使われた道
というのもあります。
街道をより楽しく、
そしてより深くいにしえに思いをはせながら歩くためにも、
その辺のことはいつも頭の片隅に
置いておかねばならないなと、
次の旅を画策しながら考えているdoironなのでした。
次回は街道旅の装束について
考えてみます。