風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『負け犬の遠吠え』とか。

2008-03-15 20:01:35 | 

数年前に一大ブームとなった酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』。
最初にことわっておくと、この本、全部は読んでないです。
さっきYahoo!のトップページから著者のインタヴューにリンクが貼られていたので、読んでみました。あと、本の冒頭10ページも。

たしかに文章はうまいですね。
笑えるし。

でも、です。
全部を読んでいないからエラそーなことは言えないけれど、私とこの人の考え、根本的なところで合わないなぁ。
なにが合わないって、『カテゴライズの感じ方』 。

酒井さんは本の冒頭で、
「人間を勝ち負けで二分することが本当は不可能であることは、私も知っているのです。が、そこを無理やりにでも分けてしまうと単純に面白い、というのもまた事実。」
と言っています。
でも、私は人間を無理やりに二分してみても全然面白みを感じられないんですよ。
二分できないところにこそ人間の面白みはあるのだと思うし、そういうことを描いている本を読むほうがずっと楽しい。
酒井さんって、こういうカテゴライズするエッセイが得意なようですね。
これなんかもそうだけど。

またインタヴューの中で、
「『負け』という言葉に拒否反応を起こしちゃう人は、すでに『勝ち=えらい、負け=えらくない』と上下をつけているのでは。私は、未婚の30代女子の”負け”は単にひとつの条件にしかすぎないと考えています。右の道へ行くか左の道へ行くか、という程度のことであって、どちらかの道に進んだからと言って、幸せ不幸せが決まるわけじゃない。そこを勘違いされがちなんです」
と言っています。
一見的をついているようだけど、この意見もやっぱり変だよね。
「『勝ち=えらい、負け=えらくない』という考え方はおかしい」というのは、まったくその通り。負けは別に悪ではありません。
でも、この言葉の持つイメージが、誰がどう聞いても、勝ち=プラス、負け=マイナスであることもまた、事実。
良い悪いの問題じゃなくて、そういう言葉だからです。
「勝ち」「負け」は『競争』のときに使う日本語。
誰も負けようと思って徒競走をする人はないし、負けようと思ってオーディションを受ける人はいないでしょう。
「負け」という言葉に拒否反応を持つのは当然です。

人生はそもそも競争じゃないのですから、この言葉を使うこと自体、おかしい。
でも酒井さんは「世間ではそんな風に考えている人もいる」ということを踏まえてあえてこの言葉を使ったのでしょうから、それについては百歩譲ったとしても、です。

未婚・子なし・30代は「負け」ではないのですよ。
これは大事。
たしかに社会はそう見てるかもしれない。でも、そこでこの作者のように「はい、負け犬ですけどそれが何か?」と開き直っちゃやっぱりダメなんです。開き直っちゃったほうが楽かもしれないけど、ダメ。
だって、それは「負け」だと認めてることになってしまうもの。
ちがうでしょ?負けじゃないでしょ?だったらやっぱり、そこは譲っちゃだめです。
大声をはりあげる必要はないです。
ただ、気張らずに、「人間も幸せも十人十色でしょ?」というスタンスに堂々と立っていなきゃ。
この本を読んで、共感して、気が楽になっているだけじゃ、ダメです。

酒井さんが、30代・未婚・子なしを悪い意味で「負け犬」とカテゴライズしたのではないのはわかります。でもね、社会はそうは見ないです。
「言葉ばかりが一人歩きしてしまった・・・」とインタヴューで言っているけれど、こういう刺激的&挑発的な言葉をタイトルにした時点で、本人もそれを多少は狙っていたはずですよ。メディアに籍を置いている以上、想像できなかったとは言わせません。
アマゾンレビューでも誰かがいっていたけれど、そこに商業主義が匂うんですよねぇ。
そしてこの言葉をはやらせたことで、結果的に「30代・未婚・子なし」がこれまで以上に生きにくい社会を作り上げてしまったと。。。

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