そういえば、今日は日本は桃の節句なんですねぇ。
いいなぁ、ひな祭り。
雛あられと菱餅と白酒(笑)
こちらは当然ながらただのふつうの一日です。
せっかくなのでオックスフォードの桃の花の写真でも。
陰鬱な空がイギリスらしいでしょ(笑)?
桃の花は色が可愛らしくて大好きです~。
梅、桃、桜。
日本の春が恋しい。。
こっちの桜、もう一ヶ月くらい咲き続けているんですよ!
儚さもカケラもありゃしません。
こんなのは桜じゃないっっっ(><)
桜は可憐に咲いて儚く散ってなんぼ、でしょう。
ところで今ふと、中学生のとき、うちの中学のヤンキーな男の子達が丈を短くしたブレザーの背中に、『咲いて散るのが花ならば 咲かせてみせようこの命』って刺繍で縫いこんでいたのを思い出しました(笑)
ちゃんと刺繍をしてくれる店があって、パンフレットまであるのが笑えた(言葉とか色とか選べるの)。
ていうかこの話、毎年桜を見るたびに思い出してる気がするな私。。。
同じころ、ハイドパークは雨の闇だった。シンクレアは、鍵の壊れた門から公園の散策路に入っていった。後方から追ってくるダーラム侯は、傘もささず、ジャケットもなく、カーディガン一枚の姿で裸足だった。片手のスコッチのボトルを掲げて、ダーラム侯は何か叫んでいた。
先をゆくシンクレアは振り向かなかった。芝生に落ちた雨の粒が一面の銀色に輝いていた。空は暗く、広がる樹影はさらに深い漆黒だが、そうして歩いていく地面はいっせいに発光しているのだった。闇は光るものだと初めて知ったウィーンの幼年時代の記憶が、一足ごとに輝く芝生の上で翻るように感じられた。後ろから追ってくる者さえいなければ、足を止めて眺めていたいところだった。
シンクレアは、たった今、パークレーンに面した豪華なドーチェスター(ホテル)のスイートルームから飛び出してきたのだった。・・・ティーハウスの近くまで来ていた。池はまだ向こうだ。
(高村薫 『リヴィエラを撃て』)
ドーチェスターホテル
ドーチェスターホテル前の道(Park Lane)とハイドパークの柵。
ハイドパーク。
ドーチェスターホテル側の入口付近。
散策路の突き当たりにある池。
左の建物はカフェですが、これは新設なので小説に出てくるものとはちがいます。
小説と一番イメージが違ったのが、ここ。
だって、ドーチェスターホテル前の道、あまりに道幅が広すぎて(片側3車線ですよ!)、いくら夜中でもとても酔っ払いがふらふらと渡れるような道じゃないです~。危険すぎます。
パークの門も、ホテル真ん前にはないから、すこし歩かなきゃですし。
公園内も、ダーラム侯が倒れこんじゃうような”茂み”は全然ない(笑)
たまにあっても、鉄柵の中。。
でも一面の芝生は大変美しいので、これは小説のまんまです。
木々も日本の公園のものとは全然ちがい、やはりどの景色ひとつとっても”イギリス”です。
リスや鳥が沢山いて、同じ都会の公園でも日比谷公園や上野公園などとは和やかさ&美しさが比になりません(日比谷公園みたいな雰囲気もあれはあれで好きだけど)。
あと、リヴィエラ気分を味わいたい方は小説と同じ冬に行かれることをオススメします。ここに限らずロンドンの公園は暖かくなると日光浴をする人達で溢れかえるので、イメージから遠のきます(笑)
それにしても高村女史の文章には、ほんとうにうっとりするなぁ。
思うに、高村さんの小説の魅力の一つは、イーストエンドのような下町っぽさとダーラム侯のようなセレブっぽさが交差しているところですよね。テロリストなのにクラシックを聴いちゃったり。警視庁の刑事がヴァイオリンを弾いちゃったり、ダンテを読んだり、多摩川沿いでワインを飲んじゃったり。スパイがオペラを観たりジョイスの話をしちゃったり(これはまぁ普通かな)。非現実的・・・とわかっちゃいても、読んでいて楽しい。
ですが、最近読み返していたらその非現実的っぽさが今の私には少々ひっかかるようになってしまったのも正直なところ。もっともっと普通の日常の感覚?みたいなのも同時に掘り下げられていると嬉しいのですけれど。
★ドーチェスターホテル(The Dorchester)&ハイドパーク:地下鉄Piccadilly lineのHyde Park Corner駅下車すぐ。