風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

マリインスキー歌劇場管弦楽団 @東京文化会館(12月6日)

2019-12-11 20:04:36 | クラシック音楽




前日に続き、ゲルギエフ&マリインスキー管によるチェイコフスキー・フェスティバル交響曲編2日目に行ってきました。
サントリーホールから会場を移して、2日目と3日目は東京文化会館です。サントリーホールと違い音が飽和せず、つまり地味なんですけど、このオケの音にはこちらも合っているように感じられました(これまでこのオケを聴いたのが全てここだったので聴きなれた音というのもある)。

しかし今日はですね、隣の席の高齢の女性がずーーーーーーっと指をパタパタさせて手揉みされていまして・・・・・。こういうの、すごく気になるのよぉ~~~~~
いやいや私もいつか歳をとるではないか、この人も敢えて指パタパタしているのではなくご体調が悪いのかもしれないし、私だって遠くなく他人事じゃなくなるかもしれないし、と精一杯気にしないように努めたけど・・・・・・・ムリ~~~~~~~
音(鼾とか補聴器とか)を発せられるよりは100倍マシ、と無理矢理自分を納得させました・・・。
というわけで本日はちょっと集中力とぎれ気味の鑑賞となってしまったのでありました・・・。

【チャイコフスキー:交響曲第2番ハ短調Op. 17 「小ロシア」】
前日に比べるとオケの緊張感が少々減ったような気もしないでもなかったですが(私の環境も関係ある可能性大)、連日チャイコフスキーを好みの演奏で聴ける幸福を改めて噛みしめる。
やっぱり海外の楽団って、金管の弱音がしっかりしてる気がする
このオケはバスの地の底から響くような重低音、木管の躍動感、金管の大音量のときの綺麗なだけじゃない輝かしさも素晴らしいですよね。柔らかみの少ない硬めの弦の音もロシアの曲には合っているように思う。
四楽章の盛り上がり、聴いていて最高に楽しかった

ところで今回のゲルギエフ×マリインスキー来日公演についてのネットの感想は多くが絶賛のようですが、「緩急強弱が作為的。今までのゲルギエフはこんな演奏はしなかった」というものもいくつか見かけました。“今までのゲルギエフ”については詳しくないので何とも言えないのですが、今回の演奏については、ああなるほど、とも。聴いているときに何度か「オケのドライブのさせ方がちょっとラトルと似ているなあ」と感じたことがあったので、ああいう部分のことを言っているのかな、と。
私は作為的とは殆ど感じずとても生き生きと自然に歌っているように聴こえましたが(ラトル&LSOのときも)、それはオケがあまりにも鮮やかにコントロールされていたからというだけでなく、今回は曲がチャイコフスキーだったからという理由もあるのかも。私のチャイコフスキーとの出会いはバレエだったので、交響曲もバレエ音楽の感覚で聴いている部分があるのです。マリインスキーはそうでもないですけど、ボリショイなどは踊れるダンサーがいると急に早回しに演奏して舞台を盛り上げたりすることがあるじゃないですか。コーダで笑っちゃうくらいにジャンジャカ鳴らしまくったり。不仲なダンサーのときは指揮者が敢えてゆっくり演奏してイジワルしたりという噂も・・・(ゆっくり踊るのは難しいので)。なので私の場合、チャイコフスキーの音楽は緩急強弱の変化が他の音楽よりもあまり気にならないのかもしれません。
ただそれとは別に、個人的好みというものはあるわけで。

【チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調Op. 35】 
ヴァイオリンソロは、五嶋龍さん。
オケの音&演奏は好みでした。
が。
ファンの方、ごめんなさい。この曲の五嶋さんの演奏、私は全く受けつけられませんでした。。。。。。。
最初は一瞬良い音と思ったのだけれど、主題に入った途端に体に拒絶反応が・・・。
そもそも私の好きなタイプのこの曲の演奏がシャハム×ネルソンス×ボストン響のような明るくストレートな演奏なので、五嶋さんの音のねっとり具合?が私にはダメだった・・・。ヴァイオリンソロのときは音楽の流れが止まり、オケが演奏し始めると音楽が再び動き出すように聴こえてしまいました。
そしてソロのときにオケを放って一人だけ舞台前方へせり出してくるアレは一体・・・・・。これはソロ曲じゃなくて「協奏曲」なのに!
なんだかソロとオケがブツ切りに別々の演奏をしているように感じられてしまい、こんな協奏曲を聴いたのは初めてでありました。
ゲルギエフがそれでいいなら別にい・・・くはない。私がいくない。
ちなみに演奏後は拍手&ブラヴォーの嵐でした。。

【クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス op.6(ヴァイオリン・アンコール)】
おお、これはいいのではないでしょうか。重みと軽みとお洒落感のバランスが絶妙
このアンコールが聴けてよかった。これを聴いていなかったら、五嶋さんのヴァイオリンの魅力が理解できずに終わるところだった。オケの奏者も笑顔で拍手を送っていました

ここで五嶋さんのファンと思しき方々が続々とご帰宅の光景がロビーに。曰く、「交響曲の方は聴かなくていいと思ってたけど、意外と悪くなかったわね」・・・。ヤンソンスさんの最後の来日のときにシャハムのヴァイオリン・アンコールにオケが伴奏をつけてくださったのですが、ソリスト・アンコールにオケが伴奏をつけるなんてものすごい贅沢なのに(それもヤンソンス&バイエルン放送響というものすごい贅沢な伴奏なのに)、「アンコールはオケなしで聴きたかったわねえ」などと言いながら後半のオケ曲を聴かずに帰っていくシャハムファンがぞろぞろといて・・・(あんなに温かな素敵な伴奏だったのに!!シャハムも幸せそうだったのに!!)。別世界の人達の会話を聴いているような気がしたのを今日久しぶりに思い出しました。。。

(休憩20分)

【チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op. 36】
この曲を聴くのはムーティ&シカゴ響に続いて2回目(正確にはアシュケナージ&フィルハーモニアも入れて3回目だけど、咳だらけの客席以外全く記憶にない)。そのときに「アメオケのチャイコフスキーは二度と聴かん」と思ったのだけど、その認識を覆してくれたのが先程書いたミューザ&サントリーホールで聴いたネルソンス×シャハム×ボストン響によるヴァイオリン協奏曲だったのでした。
といってもムーティ&シカゴ響もすごいという意味ではものすごかったんですよ。東京文化会館の壁がぶっとぶくらいの大音量なのに決して濁らない壮麗さで(あれ以上の大音量を東京文化会館で経験したことは未だかつてありません)。でも私は綺麗な音が聴きたかったわけではないのです。今日の演奏のようなごちゃまぜな色合いの祝祭感が聴きたかった。この楽しさ かつ最高に美しい
マリインスキーの洗練されすぎていない音はゲルギエフの指示なのだろうか、元々なのだろうか。バレエで聴いたときもそういう音をしていたので、元々もあるのだと思う。こういう音の魅力ってある。

【メンデルスゾーン:夏の夜の夢 "スケルツォ"(アンコール)】
この時点で21時50分。
さすがにアンコールはないだろうなと思っていたら、やってくださいました
隣の席のあの女性は4番が終わると同時に帰ってくれたので、この曲だけは演奏に集中できる!
ああ、いいねえ。パックや妖精達が飛び回るのが目に見えるよう。ヤンソンス&バイエルンで聴いた『火の鳥』を思い出しました(あのときも舞台上に魔王の庭園を飛び回る火の鳥が見えたの)。youtubeで聴いたことがあるけど、ゲルギエフの『火の鳥』もとてもいいんですよね。禍々しさと色っぽさがあって。8日の大阪公演のアンコールでやったそうで、聴けた方が羨ましい!

今夜はソロカーテンコールはありませんでしたが(もう22時だし)、カテコのゲルギエフはとても嬉しそうでした。
本当に昨年とは雰囲気が全然違うのだが、一体なぜなんだ。

翌日は最終夜に行ってきました。昼(交響曲3番&P協3番&P協1番)のチケットは買っていないので、夜のみです。感想は後日。

※追記:
チャイコフスキーの交響曲は、自筆のスコアにはテンポの指定は殆どないのだそうです。へえ。どころかインテンポを嫌ったのだとか(これはなんかわかる気がする。インテンポを好む作曲家ならああいう曲を作らないように思う)。指揮者の藤岡幸夫さんがゲルギエフの師匠でもあるムーシン教授の授業で聞いた話。

例えばチャイコフスキーの交響曲については、彼の自筆のスコアには本来テンポの指定はほとんどなくて、今印刷されてるテンポ指定の中にはチャイコフスキー本人の指定ではないものが多いこと。またチャイコフスキー本人のものであったとしても、チャイコフスキーは自分が指揮しててリハーサルが上手くいかないときに、よくその時の思いつきで指定してまい、それがそのまま(決して良い指定とは言えないのに)印刷されてしまったものも多いらしい。

またその一方でチャイコフスキーはインテンポの演奏を嫌った(これはブラームスも同じことを言ってる)。つまり、「何にも指定がない=イン・テンポ」ではないということだ。(最もこれは僕もルトスワフスキに言われたことがあるが、作曲家側からしてみればテンポが生き物なのはすごく当たり前のことで、指定がないからテンポが変わらないという考え方自体がおかしいということだ)。

(藤岡幸夫氏のブログより。チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」の話

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