風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『大河ファンタジー 精霊の守り人』

2020-05-02 10:32:38 | テレビ



最終章では、私が『天と地の守り人』というタイトルにこめた思いも、大切に描いていただいています。地を歩む人々の営々とした営み、必死の思い、葛藤、醜い戦をしても勝ち取ろうとするもの――そういう人の心情などとはまったく関わらず、ただ淡々と、在るように在る大自然の営み……。
いかなることがあろうとも天と地のはざまで生きていく人々に、哀しさと愛おしさを感じていただけたら、幸せです。


上橋菜穂子 「天と地のはざまで ――最終章に寄せて――」


2016~2018年にNHKで放送されたTVドラマ『精霊の守り人』を、ようやく観ることができました。
以前もこのブログで愛を叫んでいたとおり、私は上橋さんによる原作小説がとても好きでして(他の作品はなんともいえないものもあるけれど、この守り人シリーズはとても好き)。
アニメも観ていたのになぜドラマは観ていなかったのか?というと、単純にリアルタイムで観る機会を逃してしまった後は存在を忘れていたから
今回籠城生活でネット配信サービスを色々物色していたら、おおこれはと見つけて、第1シリーズから第3シリーズまでを全編一気見したのでありました。

題名が『精霊の守り人』だからアニメと同じく同名の小説の部分だけがドラマ化されているのだろうなと思っていたら、なんと今回は守り人シリーズ全編の映像化で嬉しい限り。特に嬉しかったのは、原作で好きな『闇の守り人』と『天と地の守り人』が最終章で一つのストーリーになって映像化されていたこと。
ちなみに私は好きな小説の実写版はよほど酷い出来じゃない限り満足できる人間で、たとえ多少イメージと違っても文章で読んでいた風景や建物や食べ物が3次元で観られることは私にはこれ以上ない至福
そして今回は、同類のファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』と比べるとさすがに衣装や道具やセットに少々惜しい感はあるものの(ハリウッドとNHKでは予算が桁違いだからね)、想像より遥かに力をいれて制作されていることに吃驚。制作チームがんばった

そしてなにより、思っていた以上に俳優陣が豪華&役に嵌まってる
第1&2シリーズで聖導師役だった平幹二朗さんが急逝されて、第3シリーズでは鹿賀丈史さんになっているのは寂しかったけれど、鹿賀さんもよかったので違和感はなかったです。でもやっぱり第3シリーズの平さんも観たかったな…。
高島礼子さん、すごい 美人女優さんなのにリアルトロガイだ!女優魂を見た!
最近はセンテンススプリングの方で話題になってしまっている東出昌大さん、お~リアルタンダだ!イメージどおり!
帝役の藤原竜也さんも、さすが。観る前はイメージと違うのでは?とか思っちゃっていたけど、最終章を観終わった今ではあなたが帝。
綾瀬はるかさんは無論、すっごく素敵なバルサ 殺陣も見事 ご自身もインタビューで仰っていたけど、回が進むにつれてどんどんどんどんバルサになっていって(これは他の役者さんにも言えることだけど)、役者さんって凄いなあと改めて感じました。
ヒュウゴ(鈴木亮平さん)もカコヨカッタ!
あとアスラ役の鈴木梨央ちゃん!大人より上手いんじゃないかとさえ思ったよ。

はぁ。。。しかし守り人シリーズはやっぱりいいねえ。
「外れた」人たち、偽りの建国神話、目に見える世界と目に見えないもう一つの世界、大きな自然の流れと小さな人間の営み。
最終章は、まんま太平洋戦争時の日本だよね・・・。これを完全に過去のこととして観られないのが怖い。
ドラマでは特に後半は結構原作とストーリーを変えていて、原作どおりの筋で観たかった気もしたけれど、これはこれで一つの作品として楽しむことができました。
原作は『流れ行く者』までしか読んでいないのだけど、あれから番外編の新刊が出ていたんですね。買わねば。

本好きで司書をしている友人と以前「フィクションとノンフィクションのどちらが好きか?」という話をしたことがあって、彼女は断然ノンフィクション派だそうで、私は断然フィクション派と答えたら物凄く吃驚されました。
えー、確かに「事実は小説より奇なり」とも言うけれど、絶対フィクションの方が楽しいよ。だって現実には存在しない世界にも行けるんだよ!現実には存在しない物が食べられたり、時空を超えたり、現実の世界では起こり得ないことがいっぱい起こるんだよ!
・・・ん?それはフィクションというよりファンタジーか笑。



バルサとタンダの関係が最高に好きなので、今回こういう場面↑を実写で観ることができて最高に幸せでした

胸が痛くなるほど美しい。
最終章のオープニング映像の中で、すっと短槍を掲げるバルサの姿を見たとき、そう思いました。
三年という長い年月をかけて丹念に紡がれてきたこのドラマは、西欧のファンタジーによく見られる「光(正義)と闇(悪)の闘い」とはまったく異なることを描いています。
闇の中にも光が、光の中にも闇があり、人の営みの何もかもを、あっけなく押し流していくこの世の無常と、それでも天と地のはざまで生きていく、人という生き物の美しさを描いているのです。
深い哀しみの闇の中、短槍を掲げてすっくと立つバルサの、あの凛とした姿こそ、私が描いて欲しかった姿で、あのワンシーンには実に多くのものが詰まっています。
長い長いドラマの行く先を見届けていただければ幸せです。
(上橋菜穂子)

※公式サイトもめちゃ力作
精霊の守り人
精霊の守り人II 悲しき破壊神
精霊の守り人 最終章

Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ハナミズキ dogwood | TOP | 『漱石悶々 ~夏目漱石最後の... »

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。