風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

読売日本交響楽団 第628回定期演奏会 @サントリーホール(6月1日)

2023-06-02 00:07:04 | クラシック音楽




ずっとずっと待ち望んでいたヴィルサラーゼのシューマンのピアノ協奏曲がようやく聴ける!というわけで、平日夜にサントリーホールに行ってきました
オケは、上岡敏之さん指揮の読響。

【シベリウス:交響詩「エン・サガ」 作品9】
決して悪くはなかったのだけれど、音楽の流れが自然じゃなく固く聴こえてしまった…
(後半のニールセンの見事な完成度から推測するに、おそらくこの曲にはあまりリハの時間が割かれていなかったのでは……)
でも上岡さんのこの曲の解釈は、私は好きでした。

【シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54】
すっとずっと聴きたかったヴィルサラーゼのシューマンのピアノ協奏曲。
コロナ禍でテミルカーノフ&サンクトペテルブルグ・フィルとの来日がキャンセルとなってしまったのは残念だったけれど、今回読響で聴くことができて本当に嬉しかった。
最近気持ちが沈み気味で、人生や世界に対して卑屈になりそうにもなっていて、これを生で聴くまでは生きていようと思ってきて、こうして聴けたからもう死んでもいいやと思ってしまうところだったけれど(大袈裟なようだけど結構本気)。
背筋を伸ばして、素直に、ちゃんと生きなきゃな、と感じました。
そうだった、ヴィルサラーゼのピアノを聴くといつもそう感じさせられるのだった。初めて聴いたときから。
優しい厳しさ。温かな気高さ。
ずっと聴きたかった彼女のこの曲の演奏を、今まさに生で聴けている。そのことは当たり前のことではない。
今日私が生きてこの演奏を聴けていることは決して自分の力によるものではなく、神様からの贈り物だと感じました。
もらいっぱなしでは駄目だ、と。
こんな気持ちをもらえて、私もちゃんと世の中に、ヴィルサラーゼにお返しをしなきゃいけない、と。

一楽章の温かな優しさ。
三楽章の”音楽そのもの”の音。そして深さ。
ロシアの音楽学校の校舎の臭い。

本当に、ただただ、pricelessな時間でした。

オケも単なる伴奏にとどまらず、ピアノとの暖かな掛け合いと高め合いがとてもよかった。
上岡さんはヴィルサラーゼにすごく敬意を払っていて、なかなか舞台中央に行こうとされず(この光景は先日のルイージ&ロジェと既視感)。最後はヴィルサラーゼが「はい、行くわよ!」と促してた笑。
ヴィルサラーゼってリサイタルのときは舞台であまり全開の笑顔を見せない人という印象があったけれど、今日はいっぱいの笑顔。
ただ演奏中に少し手首を辛そうにしていて、ポリーニの仕草を思い出しました。なのに手を抜かないで思いっきり弾いてくれて、ありがとうヴィルサラーゼ…。
カーテンコールが繰り返されたけれど、アンコールはなし。でも本編のあの演奏だけで十分です。
最後はヴィルサラーゼがコンマスの長原さんに合図して、オケが立って休憩時間に。

(15分間の休憩)

【ニールセン:交響曲第5番 作品50】
この曲を聴くのは、ブロムシュテット&N響に続いて2回目。
上岡さんブラボー
さすがコペンハーゲンフィルの首席指揮者という説得力ある演奏を聴かせてくださいました。
ひたひたと迫り来る静かな不気味さのようなものはブロムさん&N響の時の方が感じた気がするけれど、今回の一楽章のぞっとする凶暴な迫力。濃厚な美しさ。二楽章ラストの決して汚い音にならずに美しさを保ったまま、あれほどの突き抜け感!!
大満足です。
改めてこの曲は名曲だなぁと感じさせてくれる演奏でした。
上岡さん、熱くて丁寧で自然で、いい指揮者だなあ。
またこのコンビの演奏を聴いてみたいです。
そしてこの「戦争交響曲」の演奏に上岡さんが込めたであろう想い、ポスターの「生き抜くんだ」という言葉と廃墟の街の写真。その上で、モスクワ音楽院教授であるヴィルサラーゼとのあの温かな共演。
音楽ってすごいな、音楽っていいな、と改めて感じました。


今回は、メインにニールセンの交響曲第5番を取り上げます。

私はデンマークのコペンハーゲン・フィルの首席指揮者を務めており、ニールセンの交響曲は全6曲、演奏しました。ドイツでは以前、北西ドイツ・フィルと4番を演奏していましたが、コペンハーゲン・フィルのポストについてからニールセン作品を色々な側面から勉強しました。自筆譜を見て、様々な出版譜を見るなどして全6曲の演奏に臨み、理解が深まりました。今回は、ウィルヘルム・ハンセン版というデンマークの出版社によるものを使用します。ニールセンの5番は、演奏するのはとても難しいですが、読響とであれば良い演奏ができると思い、選びました。

ニールセンの5番は、難解とも言われます。聴きどころや特徴は?

分かりづらい曲と言われることもありますが、デンマークという土地柄や国民性が表れていると思います。気候は寒くて、天気もあまり良くなく、どちらかというと暗い雰囲気の国。一方、デンマークは福祉国家で貧富の差もなく「幸福な国」とされているのに、精神安定剤などを使用する人が割合として多い。そこに個々と社会との煩わしい関係性があると思います。この曲にも、平和な世の中で突然銃の乱射事件が起きてしまうような、人間の危うい一面が表れています。また、ニールセンの屈折した人間性、「誰にも分ってもらえない」というようなコンプレックスのようなものも感じます。第1次世界大戦の影響もあり、小太鼓による軍隊の部分などは戦争を予感させますが、もっと深い人間の複雑さ、世の中での息苦しさなどが描かれた作品です。最近は日本でも痛ましい事件が起こっていて、驚いています。

1曲目のシベリウスの交響詩「エン・サガ」はどんな作品ですか?

シベリウスもスウェーデン語を母語として、言語的に似ているデンマークと近い環境と言えると思います。「エン・サガ」は、古い伝説を基にしていますが、この悲しい伝説を熱く語るのではなく、感情を持たずに無意識で一点を見つめるように語っています。海に囲まれたスカンジナビアが持つ不安な雰囲気が出ています。浜辺に座って、海を見ながら、静かに伝説が語られるよう。ティンパニを使わない打楽器の使い方も特徴的ですし、最後は淡々とクラリネットが語り、物語が終わります。

2曲目には、シューマンのピアノ協奏曲を演奏します。

悩みを抱えて屈折した人生を送ったニールセンと、最後に自殺してしまったシューマンの暗さは、異なります。ニールセンやシベリウスと違う弱さや繊細さがある作品です。私がこの作品を演奏するのは、数十年ぶり。昨年亡くなってしまったラルス・フォークトさんと演奏した思い出があります。今回、ヴィルサラーゼさんとは初めて共演するので楽しみにしています。

当日券あり。明日31日、上岡敏之がニールセン5番などを披露

シベリウス 交響詩 《エン・サガ》 の楽曲解説(千葉フィル)




こちらはうちの近所の紫陽花。
色んな種類の寄せ植えが綺麗だったので。
もうそんな季節なんですねぇ。。。。。

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