風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

NHK交響楽団 第1974回定期公演 Aプロ @NHKホール(1月15日)

2023-01-16 23:26:42 | クラシック音楽




N響の3公演セット券、お得ですよね~。
今回はソヒエフ×2、フルシャ×1で計五千円弱也。安い。

【ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83】
【ドビュッシー/前奏曲集 第1巻 ー 第8曲「亜麻色の髪の乙女」(ソリストアンコール)】

ソヒエフを聴くのは今回が初めてですが、いい指揮者ですね!
N響からとても綺麗な音色を引き出していて、驚きました。まるで魔法のよう。
同じように色彩豊かでもデュトワの華麗さとは異なり、こちらはもう少しくすんだ落ち着いた色合いに感じられました。
指揮者によってこんなにオケの音って変わるのだなぁと、改めて感心しました。
音楽作りも丁寧で、好印象。

ただ、私がブラームスの音楽に求めるもの(ドイツぽい音)は、ほぼ皆無だったような。
帰宅後に知りましたが、ソヒエフって2012年 - 2016年にベルリン・ドイツ響のシェフだったんですね。ドイツのオケなら放っておいても”ドイツの音”が出てソヒエフと良いケミストリーのブラームスになっていたのかもしれないけれど、もともとドイツ味を備えているわけではないN響とだと、そうもいかないのかもしれません。ブラームスに何を求めるか、聴く側の好みの問題ですが。

また今日はピアノが私の苦手な感じだったため、なおさらオケも楽しめなかったのかもです。
ハオチャン・チェンのピアノは一見スケールが大きくブラームスに合っているように最初は感じられたのだけど、独特のタメが気になってしまった…(基本的にピアノのタメが苦手なんです…)。その度に音楽がつっかかって感じられてしまい、最後まで流れに身を任せて聴くことができませんでした。
結果的に、オケもピアノも、ブラームスの魅力であるスケール感があまり感じられず、小さく纏まっている演奏に感じられてしまいましたが、これは個人的好みの問題だと思います。
アンコールのドビュッシーは、悪くなかったように感じました。
またピアニストご本人の人柄は誠実そうで、好印象でした

(20分間の休憩)

【ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60】
「2人の北欧の巨人(著者注:《交響曲第3番「英雄」》と《交響曲第5番「運命」》)に挟まれたギリシアの乙女」。音楽評論家でもあったシューマン(1810~1856)がこう述べたことから、ベートーヴェンの交響曲のなかでは、軽く明るい作品と見なされることが多い。
ところが、たとえば第1楽章の序奏部はどうだろう。変ロ短調で始まる冒頭部分は、ひっきりなしに調性が変わり、暗い不安感が蠢(うごめ)く。しかもその緊張感が限界点に達し、爆発したところで、一転して眩(まばゆ)い主部に入るという仕掛け。つまり、軽さや明るさなどとは無縁の幕開けである。それもそのはずで、この作品が書かれたのは、1806年から1807年にかけて。つまりベートーヴェンの耳の病が徐々に進行し、さらにナポレオン(1769~1821)率いるフランス軍が1805年にウィーンを軍事占領した記憶も生々しい状況のなかだった。にもかかわらず、いやそうであるがゆえに、この上ない緊張感を背後に抱えたベートーヴェンの創作意欲は増し、次々と傑作を世に送り出していった。
このように考えると、《交響曲第4番》を特徴づける一気呵成(かせい)ともいえるエネルギーも納得できる。先ほども書いたように、第1楽章序奏に満ち満ちるとてつもない闇をバネとして、疾走感に溢(あふ)れる主部が続く。おどけた音色のファゴットが超絶技巧のパッセージを要所要所で奏でるのも聴きどころ(第4楽章にもこの手法が現れる)。緩徐楽章にあたる第2楽章は、冒頭で示される符点リズムが楽章全体に張り巡らされ、その上に優しい歌が奏でられるものの、どこか翳(かげ)りを帯びているのが特徴だ。
第3楽章は、特に記されていないもののスケルツォを基本としており、シンコペーションやヘミオラなど、スケルツォの特徴である3拍子をあえて随処で崩すようなリズム感が特徴だ(これぞ、スケルツォの原義である「冗談」を地で行く姿勢とも言えよう)。そして16分音符による急速なメロディが上昇と下行を熱狂的に続ける第4楽章……。
つまりこの交響曲は、けっしてたおやかな優しい作品ではない。闇が厳然と存在するがゆえの光の世界への希求が、この曲のすべてを貫いている。
N響HP

上記は今回のN響による解説ですが、今日の演奏は、この解説のそれに近い印象を受けました。
決して重い演奏だったというわけではなく、とても軽やかに疾走する演奏でしたが、それでも「明るいだけ」になっていなかったのは、先ほども書いたソヒエフがオケから引き出す音色のためかもしれません。
美しくて彩り豊かなベートーヴェン。でも決して明るいだけでなく陰も感じられ、光と影がくるくると入れ替わり、でも全体的には軽やかで品が良い、好みな4番でした。
丁寧な演奏だけど突き抜け感がちゃんとあったのもよかった。欲を言えばもっとあってもいいかなとも感じたけれど…。
ただこのコンビなら、今回のドイツプロよりもCプロのロシアプロ(ラフマニノフ&チャイコフスキー)やBプロのフランスプロ(ラヴェル&ドビュッシー)の方がより合っていそうとも感じました。

演奏後は今日で第一コンマスを引退されるマロさんに、花束が贈呈されました。
ソヒエフはそんなマロさんを飽くまで立てていて、拍手を受けるときも自身は常に一歩下がって(当たり前といえば当たり前ですけど)、好感度大でした。N響との関係はとても良好そう。このような情勢の中で彼を呼んだところにも、両者の関係の良さを感じます。ソヒエフの日本でのマネジメント会社はkajimotoなんですね。
マロさんは、これからは特別コンマスとして残られるとのこと。
長い間、お疲れさまでございました!

ところでウクライナ情勢は間違っても良い状況とは言い難いけれど、もはやゲルギエフやネトレプコでなければロシア人アーティストの来日は可能になっているのだろうか。先日あのザハロワが来日したのには驚きました。前回の公演ではロシア大使館の関係者がゾロゾロ客席にいたというプレトニョフはどうなのだろう。来月のチケットを買ってあるのだけれど。私自身も決して気楽に聴きに行ってるわけではなく、常に複雑な気持ちを抱えているのは事実です。


14日はヤンソンスさんの誕生日だったんですね…。
その人がこの世界から去った命日にではなく、この世界に生まれた誕生日にその人を偲ぶというのも、いいものですね。

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